INTERPRETATION

数えるってなに

HAJI

英語のツボ

ほとんどの方がご存知かと思いますが、英語には可算名詞(countable)と不可算名詞(uncountable)があります。

可算名詞は「数えられる名詞」で、不可算名詞は「数えられない名詞」と教えられます。
例えば前者はapple、後者はwaterといった名詞です。
しかし、私を含め、日本語を母語にする人たちにとっては、英語を習いたての頃はなかなか理解しにくい概念だったではないでしょうか。

日本語はいちいち名詞を「数えられる」ものと「数えられない」ものに分けることがないので、可算名詞と不可算名詞を覚えるときは、結局暗記に頼ってしまうことになるのがオチではないかと思います。
しかしこの問題に関して根本的なことを考えてみると、意外と面白いことが見えてきます。

「数えられる名詞」と「数えられない名詞」で機械的に覚えてしまいがちですが、突き詰めるとこれは「”何かを数える”という行為とはどういうことなのか」という問題に行き当たります。

例えば、下のリンゴの画像を見てください。

いまこの画像の中に、りんごはいくつあるでしょう。
完全に「4つ」と断言することができるでしょうか。

なぜならうち1つのリンゴは欠けていて、その欠けたリンゴを「1つ」とカウントするには不完全であるからです。

ここから分かることは、「ものを数える」ときには、「数える対象が全て同一の条件のもとに、切り離され、区別されている」ということが前提としてあるということです。
つまり、「数える対象が等しく区別されていなければ、数えることができない」ということになります。
このとき、「等しい条件」というのは、今回のように数える対象のサイズかもしれないですし、色合いかもしれません。状況によりけりです。
こう考えると、どうしてappleは数えることができて、waterは数えることができないのか、ということに答えが見出せます。
それは、りんごというのは「全部赤くて(または緑で)、丸い、完全な個体で1つ」という等しく区別しうる条件が、一般的な観念としてあるからです。

一方、waterはどうでしょう。水を全て等しい条件のもとに並べることはできるでしょうか。水と聞いたときに皆さんが思い浮かべるイメージはなんでしょうか。
人によってはコップに半分だけ入った水を想像することがあるかもしれません。
またはプールに入った水かもしれません。山に流れる天然水もありえると思います。
つまり、水は誰もが一般的な観念として持ちうる「等しく区別しうる条件」というのがないので、数えられない名詞として分類されます。

ただ、そんな水でも「数えられる名詞」に変身させることができます。そのためには「等しく区別しうる条件のもとに構成し直す」という作業が必要です。
例えば、大きさの等しいコップ複数個に水をそれぞれ満タンに入れてみましょう。そうすると、水を等しく区別された条件のもとで比較できるので、a glass of water, two glasses of water, three glasses of waterと数えていくことが可能です。

このように可算名詞と不可算名詞というのは、「数えるとは何か」という哲学的・集合論的な問いに繋げることができる深い事柄です。

次の記事では、もう一つ可算名詞・不可算名詞に関する面白い単語をご紹介いたします。

 

*本記事はあくまでも個人の意見であり、科学的な根拠をもとに事実を示しているわけではありません

Written by

記事を書いた人

HAJI

国際教養大学卒業後、COWプロジェクトメンバーとして入社。大学時代を社会学を専攻し、アメリカに留学。ジャズが大好きで、アメリカのジャズ拠点をフィールドワークしたことも。
現在は目標とする先輩の通訳者のようになれることを目指して日々奮闘中。

END