INTERPRETATION

ベルトコンベアに例えると

上谷覚志

やりなおし!英語道場

第二回目の今回は、通訳訓練法のひとつである、サイトトランスレーション(サイトラ)について皆さんがイメージしやすいように例えを示しながら説明したいと思います。

今皆さんがベルトコンベアAから反対側に流れているベルトコンベアBに形と重さの違う段ボール箱を移し変えていく作業をしているとしましょう。最初の段ボール箱のグループ1には3つの箱に123という番号がふられ並んで流れてきました。

箱の移し変えルールは最初の箱を移し変えてから、次に一番最後の箱を移し変えて、残りの箱はその場の指示に従って移し変える順番を適時変えていくこととしましょう。この場合全体の3つが見えた時点で132という順番でコンベ アBに移し変えることができました。

次に別の箱のグループの先頭の箱1と2が見えてきましたが、まだどれだけの箱がこのグループにあるのかがわかりません。最後の箱が来るまで待っていると最初の箱がどんどん先に行ってしまうので、とりあえず最後の箱が来るまで箱を横によけて置いておきます。

例えば最終的な箱の数が20箱あった場合、ベルトコンベヤの横のスペースにも限界があるので、最後の箱を待ちすぎて、最終的には処理不能となり、緊急停止ボタンを押すということになるのです。このベルトコンベアの例えではベルトコンベアAとBがそれぞれ英語と日本語そして箱が情報の単位と考えてください。

最初に123の箱の例では短い単純な英語の文章、例えば、I’ve been learning Englishというような文章で、ぱっとみて意味がすっとわかるような場合です。

20箱のケースは、I’ve been learning English whose syntax structure is so different from Japanese that many people are easily discouraged fromcontinuing their study, which can also be a true motivation to some frenetic language geeks who believe they must climb a mountain simply because it is there. のように文章がどんどん続いていくようなケースに当たります。

理解するときにどうしても英文和訳をすることに慣れてしまっている人はどうしても最後の箱が来るまで待ってしまい、最後の箱(=情報)が届いて時点(このケースではbecause it is there.)まで待って、急いで後ろから情報をたどっていっても間に合わず、焦っている間に、次の箱(=情報)のグループが流れてきてしまい、英語は早いからわからないということになるわけです。

もちろん物理的に話すスピードが早くて、着いていけないケースもありますが、多くの場合 は最後の箱が来るまで箱を横に除け過ぎ(待ちすぎ)て、箱(情報)処理が間に合わないから英語が理解できなくなるのです。ではどうすればいいのでしょうか?もし箱が流れて来るままに、コンベアAからBに移し変える単純作業であれば、このような事態に陥ることはないはずです。この単純作業がサイトラで、出された情報の順番に逆らうことなく、順番につなげていく(理解していく)のです。つまりサイトラを行うことで、英語ではどういう順番で情報が出されるのかということを理解するし、情報を処理することになるのです。サイトラを通して、英語のロジックを理解すれば、英語を話すときにもこのルールを使えば、どのようなことでも表現できるようになります。

日本語もそうですが、最初から文章全体を決めて話すわけではないのですよね。話しながら、情報を追加したり、訂正したりしながらコミュニケーションをしていくわけで、英語の場合もそれは全く同じです。このルールを理解しないと情報を柔軟に伝えることができず、決まり文句以外の内容を表現したり、理解できないという壁にぶつかってしまいます。

サイトラはまず英→日から始めて、英語のロジックをある程度理解し、語彙レベルや基本的な文法や構文力が身についてくると、次に日→英のサイトラをやっていきましょう。日英サイトラをやることでスピーキングに必要な柔軟な構文力が身につきます。柔軟な構文力とは「(決まり文句を使わずに)どの単語で始めても英語にできる力」を指します。いい直しを減らすというのは通訳者にとっては必須のスキルですが、ビジネスで英語を使いこなしたい人にとっても、極めて重要なスキルになります。なぜなら何度も何度もいい直しをすると聞いている人から、発言内容そのものの信頼性に疑問をもたれてしまうからです。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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