INTERPRETATION

「“に・し・き・ご・い”」言えますか?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

こんにちは。最近、人に会うと「急に寒くなってきましたね。」という話で会話が始まることが多くなりました。以前カナダのオタワに住んでいたことがあるのですが、今から考えるとすごい所で、夏はカラッとして本当に過ごしやすいのですが、冬の寒さは半端ではありません。確かオタワは世界で一番寒い首都(モスクワよりも寒い)だと誰かが言っていました。当時、毎朝の日課が朝のニュースを見て、出かける前に天気予報をチェックすることだったのですが、「今日の日中の最高気温は−13度です」とニュースキャスターが言うと、真冬の時期なら「・・・ということで、今日は暖かい日になりそうです・・・。」と続きます。最初、オタワに住み始めた頃は“えっ!−13度???めちゃ寒いわ!そんなんやったら、外に出られへんやん(←頭の中は関西人なので)”とぶつぶつ言っていたのですが、しばらくすると、そういう気候にも慣れてしまい、カナダ人と同じように“−13度か・・・じゃ今日はあったかいやん!!”と感じるようになるから人間不思議なものです。ちなみに真夜中だと気温が−40度くらいまで下がることがあり、酔っ払いやお年寄りが街の道端で凍死したというニュースが普通に流れていました。ということで、人間が感じる“寒さ”は〜度とは関係なく、普段の気温からどれくらい寒くなったかで判断しているみたいですね。東京で知り合った寒さに強いはずのカナダ人のほとんどが“東京は寒い!!”と文句言っているのですから・・・。

さて今日は、発音について書いてみたいと思います。発音といっても今回は日本語の発音です。来週からAccent on Communicationの新学期が始まるため、今年に入ってから教材作成を始めました。音声教材は全て日本語も英語も素材選びから録音まで自分たちで行っているのですが、なるべく“明日から仕事で使える実践的なもの”“ビジネスシーンで話題に上りそうなもの”“普段通訳の場でよく話しに出るもの”という基準で素材選びをしています。普通の通訳学校のように国際関係などの教材ではなく、ビジネスや経済や会計等がどうしても多くなります。

いったん素材が決まると次に録音です。先日、日本語の録音を行ったのですが、今回は自分も録音に参加し、吹き込みを行いました。普段”話す“ことを生業にしていて、生徒さんには家で録音して自分で聞いてみた方がいいと言っておきながら、通訳の仕事を始めてから自分の声を吹き込み聞く機会がほとんどありませんでした。最近では、通訳の二次使用の依頼(←通訳を録音し、それを例えばネットで流したり、社内資料に使用したりといった形で、本来の場以外で録画した通訳を使用すること)も増えています。例えば、某大手IT企業の社長の録画スピーチに対して行った同通を録音し、それをイントラネットに流すという仕事や、某証券会社の顧客向けセミナーでの逐次通訳を録画し、ネット配信するという仕事もありましたので、そういう時に自分の声を録音したものを聞くことはありました。

通訳の録音だと自分で言葉を選びながら話しているのであまり気付きませんでしたが、教材録音のように、自分の言葉ではない言葉を録音するとどうも勝手が違い、新鮮な発見がありました。

通訳の勉強をしていた頃、先生に“日本語の滑舌がよくない”と何度か言われたことがありました。確かに録音をしてみると“i”の音、“い”“き”“し”“ち”“に”“ひ”・・・という”i”の音は自分が発音すると弱すぎて、例えば錦鯉nI – shI- kI ? go – Iという風に”i”という音が複数あると極端に発音が不明瞭になることがわかりました。PronunciationというよりもどちらかというとEnunciationの問題だと思いますが、そういうことを再発見できたことは意外な収穫でした。

PCと録音機器とを接続して録音を行うのですが、音声をPCに取り込むと自分の発話の波形がスクリーンに表示されます。面白いことに何度同じ箇所を取り直しても同じ波形になります。ということは、自分の話し方のパターン(癖)は思っている以上にしっかりと固定されていて、少し変えたつもりでも、人から聞くといつも同じパターン(癖)で話しているように聞こえているのですね。

アナウンサーの人や司会専門でやっている方とお仕事をする機会が結構あるのですが、その度に同じ“話す”仕事をしながら、自分の“話す”スキルはあまりにも低いと感じていました。昨年からずっとボイスレッスンやアナウンサー講座のような話し方を変えるコースを取ってみるのも面白いかもしれないと思っていましたが、今回の事でさらにやってみようという気持ちになりました。また実行したら体験レポートしますので、ご期待下さい!

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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