INTERPRETATION

勝ち抜け!アクセントオリンピック!!

上谷覚志

やりなおし!英語道場

皆さんこんにちは。

フリーランスの通訳の繁忙期は一般的に春と秋と言われていますが、今年は 1月初めから仕事が始まり、去年よりもずっと忙しい気がします。今週は某外資系企業の研修の通訳で缶詰になっているので、このコラムを書く時間が取れず、三人体制で同通をやっている最中に書いています。この会議、世界中からいろいろな人が参加をして行われるため、“アクセントオリンピック“といってもいいくらい、さまざまなアクセントの強い英語が飛び交っています。よく考えると最近はネィティブ英語の通訳よりもノンネィティブの通訳の方がはるかに多いような気がします。

月初めはヨーロッパ系アクセント、今週はインド・シンガポールを含めたアジア系アクセントの通訳でした。こう考えると英語は本当に global languageであり、communication toolだなと感心させられます。中には本当に強烈なアクセントとイントネーションで、どう頑張って聞いても英語には聞こえない場合もあります。そういった場合は、往々にして母国語の影響を受けているので、ある一定の法則があります。ある通訳さんは、英語に聞こえないインド人と中国人スピーカーのスピーチを分析し、音声変換表のようなものを作ってアクセントに対応していらっしゃいました。

それにしても強烈なアクセントの英語でも、臆することなく会議に参加し、まくし立てる外国人スピーカーのたくましさをみると日本人はもっと自分の英語に自信を持って厚かましくなってもいいのでは・・・と思ってしまいます。“どうやったら英語が話せるようになるか”通訳に行くたびに聞かれます。英語を話す力をつけるということでいうと、究極的にはやはり“たくさん話す”ということになってしまいますが、となると、自分の周りには英語を話す人がいないから”たくさん話す“のは無理という答えが返ってきそうですね。そういう場合でもできることはあります。

(1)? シャドーイング:最近、書店でもシャドーイングの本が出ていますので、詳しくはそちらを参考にしていただきたいのですが、簡単に言うと英語のスピーチやダイアローグを聞きながら、少し遅れて聞いた英語を口に出してみるという訓練方法です。この方法は話す力を付けるというよりもアクセントやイントネーションの矯正や音に対する集中力強化を目的としています。ポイントとしては、普段の自分の英語を忘れて、スピーカーになりきり、かなりオーバーに英語を声に出してみることです。音を聞いて、それを普段の自分の英語で口に出していたら、リテンション(内容を記憶する)の練習になってしまいますので、恥ずかしいくらい大きく口を開けて、オーバーに真似をすることが大切です。

(2) 音読:話そうと思ってもなかなか言葉が出ないという人や普段話す機会がないという方にお勧めなのが音読。一時期、日本語の古典を声に出してみようという本が売れましたが、言葉を習得する上で音読は非常に効果的です。上記のシャドーイングでアクセントやイントネーションの練習をした後で、その感覚が頭に残っている間に音読するとさらに効果があります。日本人の英語は一本調子になる傾向が強いので、読むときには全部の単語にアクセントを置かずに、最低どの単語を言えばメッセージが伝わるかを考え、その重要単語を特に強く読むようにしてください。音読しながら重要単語を見極めるのが難しい方は、最初は自分で文書のどこに強弱をつけるのかマーカーで印をつけてから始めるといいでしょう。それから自分で読んだものを録音し聞いてみる、できればネィティブに聞いてもらうことも大切です。もしネィティブがいない場合は、最近はヤフーの無料サービス(Yahooステップアップ>英語学習>英語を聴こう http://stepup.yahoo.co.jp/english/listening/)で英文をコピー・ペーストするだけで音声が再生できますので、それを活用するといいでしょう。

(3) メール:(1)(2)はどちらかというと音声面での強化でしたが、すぐに表現が思いつかないという人にはメールがお勧めです。例えば、昨日の会議内容を上司に伝えようとしたけど、自分の言いたかったことをざっくりとしか伝えられなかったとか、最近見た映画のストーリーを伝えようとしたけど、途中で諦めてしまったというように、日本語でなら言えることを同じように伝えられないという経験のある方にはメールがお勧めです。理想は英語のメールを送る相手がいることですが、いない場合は、日記にしてしまうことも可能です。私の知り合いは最近、英語のブログを始め、外国人の人からコメントが返ってきたと喜んでいましたが、こういう形でも表現力を磨くことができます。わざわざブログを始めるのは・・・というのであれば、自分の興味のあるブログに英語で思い切ってメッセージを書いてみてはどうでしょうか?ブログを書いている人はコメントをもらうと悪い気はしませんし、そこから友達としてのコミュニケーションが始まるかもしれませんよね。

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今回は“話す”ということについて書いてみましたが、最近では驚くほどたくさんのサービスがネットで提供されており、無料のものもかなりあります。昔のように周りに英語を話す人がいないから・・・という言い訳が通用しない時代になったと思います。まず興味のあるトピックから始めてみてください。もっと伝えたいという気持ちまで持っていければ、英語を話せるようになることはそれほど難しいことではないと思います。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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