INTERPRETATION

あなたに当てはまりませんか?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

今教えている某通訳学校が今週で終わります。6ヶ月前に始まったクラスの生徒さんの評価表を書くこの時期、それぞれの生徒さんがどれくらい伸びてきたのかを振り返るわけですが、面白いことに伸び方は本当に人それぞれです。クラスが始まったときにはあまり出来なかった人が、学期が終わる頃には一番出来るようになっていることもよくあります。逆にずっとスランプが続いている人もいます。

このような差はどうして生まれるのでしょうか?能力の差?努力の差?やる気の差でしょうか?おそらく全てが複合的に作用して大きな差になっていくのだと思います。ただ一見、真面目で勉強もしているようなのに、なかなか伸びない人がいます。そういう人たちにはいくつかのカテゴリーに分けることができると思います。

【最短距離追求型】

通訳にしろ、英語の勉強にしろ、何かコツやテクニックのようなものが存在し、それを誰かに教えてもらってからその勉強方法で勉強しようと考えている人たちです。もちろんある程度のメソッドは存在しますが、誰かに何かを聞いたからといってすぐに通訳や英語ができるようになるわけではありません。だれでも無駄なことをしないで最短距離で最終目的地に行きたいのはわかりますが、語学の場合、それぞれが持っている強みや弱みが違いますし、体で覚える部分が大きいので、自分でやっていかないと絶対ものにはなりません。試行錯誤という一見無駄そうに見えることが案外大事だったりするわけです。そういう人は学期の始めに一通りその人に必要なことを説明しても、学期の終わりにまた同じ質問“わたしはどうしたらいいんでしょうか?”が始まります。その人にとって必要なことが変わるわけではありませんので、また同じ説明を繰り返すことになります。どれが一番効率的かを考えるのに時間をかけるより、その時間を勉強に当てたほうがよっぽど生産的だと思うんですけどね。

【選択勉強型】

このタイプの方は最短距離型とは違い、勉強はします。しかもかなり時間をかけて勉強されますが、あまり伸びません。何故でしょうか?このタイプの人は自分に必要な勉強ではなく、自分の好きな勉強を徹底的にやります。例えばシャドーイングを1時間もやってしまったり、テープをひたすら聞いてみたりします。もちろんやった分は、何らかの形での成果は出ますが、そういった勉強が今その人に一番必要とは限りませんので、全体的な力が伸びるということはありません。今一番自分に必要な勉強は一般的には“その人がこれまで一番してこなかったもの”=“一番やりたくないもの”であることが多いので、最後に回したくなる気持ちはわかりますが、次のレベルに進むためにはまず“一番やりたくないこと”から始めない限りいつまでたっても偏った語学力しか身に付かないのです。

【言い訳直訴型】

このタイプの方は結局やらないという意味では、最初の最短距離追及と同じですが、違いは勉強ができない理由(言い訳?)の説明に終始するという点です。もちろん人それぞれ環境や状況は違うわけです。仕事が忙しいとか、子供の世話が大変とか、両親の介護があるとかいろいろあると思います。そのような状況を確認し、どのような勉強が出来るのかを一緒に考えていくのも講師の仕事の一つだとは思います。ただいろいろな状況があるにせよ、勉強というのは“時間があるからやる”のではなく“時間を作ってやる”ものだと思います。家に帰って時間ができたから今日は勉強しよう!なんていう日は、ほとんどの人にはないですよね?仕事が終わったら、友達との付き合いもあるでしょうし、家族のことでいろいろと時間が取られることもあるでしょう。時間が余っている人なんていないと思うのです。ほとんどの人が結局そういう状況を言い訳にして勉強していないだけで、この日のこの時間は絶対勉強する!というスケジュールを自分に課すだけの気持ちがあるかどうかだけの話だと思います。

最終的には通訳にしろ、英語にしろ、どこまで本気でやるかにつきると思います。タイムマネージメントも大切ですが、どこまで本気かの確認がまず大事だと思います。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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