TRANSLATION

第7回 「会社の規則・規程・規定」

エベースト・キャシー

Nuts and bolts of legal translation

定款だけでは企業は細かいことまで管理できかねません。そのため、会社が規則(ルール)を作成します。規則のうち、代表的なのは就業規則です。

労働基準法89条によると:

『常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。』

つまり、10人以上の従業員が働いている会社では就業規則を始め、様々な規則があります。10人以下の小さいな会社でも就業規則や他の規則を文書化にする場合があります。

日本語では企業、場合によってルールは「規則」「規程」「規定」と言います。英語だとほぼすべての場合rulesもしくはregulationsと訳せますが、まず違いを考えてみましょう。インターネットで違いを検索してみたところ、以下の説明を見つけました。しかし、情報源(http://www.e-tohmatsu.com/ek/word/c-word/41-50/42.shtml)へのリンクは壊れているようです。

引用:

1)「規則」とは、法令、定款等で定められた事項に基づき、業務の運営およびその取り扱いについて定めたものをいいます。例えば、取締役会規則、就業規則などがこれに該当します。

2)「規程」とは、一定の目的(例えば、事務の内容、その手続など)のために設けられた複数の規定を体系的にまとめた総体を意味します。経理規程をはじめとする大部分のものは、これに該当し、「規則」と同じレベルに位します。

3)「規定」とは、事務処理の内容や手順などを定めた「規程」や「規則」などの中の個々の条項(条文)のことです。「規程」と「規定」は類似語であり、混同して使用されている事例も存在しますが、両者は、本来別の概念です。

標準対訳辞書(http://www.japaneselawtranslation.go.jp/)によると

規則 = regulations

規程 = rules

規定 = provisions*

*しかし、本辞書は法令専門の辞書ですので、今回はrulesやregulationsと訳してもいいでしょう。

規則・規定・規程の例として:

就業規則 Employment Regulations

取締役会規則 Regulations of the Board of Directors

海外赴任規定 Regulations for Overseas Postings

単身赴任取扱規定 Regulations for the Staff Posted Alone

海外出張規定 Rules for Overseas Business Travel

出張規定 Rules for Business Travel

安全衛生管理規定 Health and Safety Management Regulations

個人情報の保護に関する規程 Regulations for the Protection of Personal Information

経理規程 Accounting Regulations

育児介護休業規程 Child Care and Family Care Leave Regulations

給与規程 Salary Regulations

賞罰委員会規程 Rewards and Penalties Committee Regulations

通勤交通支給規程 Commuting Allowance Payment Regulations

退職金規程 Retirement Allowance Regulations

委員会規程 Committee Regulations

上記のとおり、以下の表現はすべて使用可能です:

● Regulations of

● Regulations for

● XX Regulations

● Rules for

「規則・規程・規定」は誰が書いているのでしょうか?

もちろん、テンプレート、書式、例文が含まれている書籍がたくさんありますが、法令に遵守しなければならないという点を考えると多くの企業は専門家に作成を頼んでいると思われます。その場合、弁護士ではなく、行政書士や社会保険労務士に作成を頼んでいるでしょう。特に就業規則のような所轄労働基準監督署長に届け出なければない規則の場合、企業側は慎重に規則を作成するのでしょう。

スタイル

規則・規定・規程のスタイルですが、契約書に非常に似ていますので、契約書と同じスタイルに訳せばいいでしょう。しかし、ルールですので、もっと命令的な言い方でもいいでしょう。たとえば、shall、mayをmust、will、shouldにする。

* このような文書は法令に従うので、法令が改正させると規則・規定・規程も改正されます。

それでは、今回は就業規則に注目したいと思います。

上に書いてあるとおり、10人以上の従業員が働いている企業の場合、就業規則の作成は法律で義務付けられています。 その内容もある程度労働基準法第89条に決められています:

一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

■下記は、就業規則によくある条/Articles which often appear in Employment Regulations

総則 General Provisions

目的 Objective

適用範囲 Scope of Application

規則の遵守 Compliance with Regulations

採用手続き Recruitment Procedures

選考必要書類 Documents Required for Screening

採用決定者の提出書類 Documents to be Submitted by a new Employee

試用期間 Probation Period

労働条件の明示 Clearly Specify Working Conditions

人事異動・転勤・出向 Personnel Transfers, Transfers, Secondment

休職 Leave

休職期間中の取扱い Handling During Leave

労働時間及び休憩時間 Working Hours and Break Hours

始業、終業、休憩時刻の変更 Alterations to Starting, Finishing and Break Hours

休日 Non Working Days

休日の振替 Substitute Non Working Days

時間外及び休日労働 Overtime and Working on Non Working Days

年次有給休暇 Annual Paid Leave

産前産後の休業 Maternity Leave

妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置

Measures Concerning Health Management During Pregnancy and Post Partum

育児時間 Childcare Hours

育児休業 Childcare Leave

介護休業 Family Care Leave

慶弔休暇 Congratulations and Condolence Leave

服務の基本原則 Basic Principles of Service

遵守事項 Compliance Matters

出勤、退勤 Arriving and Leaving Work

遅刻、欠勤 Lateness and Absenteeism

早退、外出 Leaving Early and Temporary Absence

賃金の構成 Constitution of Wages

基本給 Basic Salary

役職手当 Executive Allowance

家族手当 Family Allowance

通勤手当 Commuting Allowance

割増賃金 Extra Wages

休暇等の賃金 Wages During Leave

欠勤等の扱い Handling Absenteeism

賃金の計算期間及び支払日Salary Calculation Period and Payment Date

賃金の支払いと控除 Salary Payment and Deductions

昇給 Salary Increases

賞与 Bonuses

定年 Retirement Age

退職 Retirement

解雇 Dismissal

解雇予告 Dismissal Warning

解雇制限 Restrictions on Dismissal

表彰 Awards

懲戒の種類 Types of Disciplinary Punishment

懲戒の事由 Grounds for Disciplinary Punishment

※他の用語や表現は第4回「契約書によく使われる用語〜中級編」を参考にてください。

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記事を書いた人

エベースト・キャシー

イギリス出身。シェフィールド大学で日本語と経営学を専攻した後、1998年JETプログラム(国際交流員)で来日。大分県で3年間国際交流員の仕事をしたのち、石垣島へ。2001年フリーランス翻訳業開始。5年間の石垣島生活ののちに大阪滞在、1年間の香港滞在を経て、現在大阪市在住。2009年にオリアン株式会社を設立して、特に契約書など法律関係の文書を得意としています。

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