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登山家オムホンギル

工藤浩美

工藤浩美の東へ西へ

オム・ホンギルというエベレスト16峰全座を制覇した韓国人登山家のインタビュー番組を見ました。

内容は彼が挑戦したヒマラヤのローツェ・ジャーナル(8千400m)の登頂の様子でした。「ヒマラヤの男」と呼ばれているホンギル氏にとって、雪崩で2名の隊員を失ったローツェ・ジャーナルは下から眺めるだけで絶望するような山だそうです。

約90度の絶壁を25時間かけてつま先だけで登っていく。
ローブにぶら下がったまま、ズボンを下げて排泄する。
絶壁の雪を削って、ビバーグする。
「なんでこんなことをしているのだろう」と切ない気持ちが押し寄せてくる。

絶望と疲労のあまりに幻覚を見る。
死の影が体の奥深くまで入り込んでくる。
8000メートルの世界は、神の世界。
山に受け入れてもらえないと、人間は絶対に足を踏み入れられない。
酸素も薄く2,3歩進むのに、呼吸するだけで体力を消耗してしまう。

数え切れないぐらいの失敗と挫折を繰り返し、死の淵を何度もさ迷い、凍傷で指を失い、仲間を何人も失い、絶望し、時に生きる目標を失い、何日も泣いて暮らす。二度とヒマラヤなんか見たくないと思ってソウルに戻っても、時間は人間の傷をすべて癒し、また宿命のように山に吸い込まれてしまう。

彼の一言、一言に、深く感動しました。

とてもお茶目な部分もあって、
「若い頃は女の子にモテたでしょう」
という質問に
「男らしい顔だと言われました」
と答えた笑顔が印象的でした。

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記事を書いた人

工藤浩美

白百合女子大学国文科卒業後、総合商社勤務。
その後通訳・翻訳エージェントに2社、合計11年間勤務。通訳コーディネーターとしてこれまでに数百件の通訳現場のサポートを行なう。 2001年7月に株式会社テンナイン・コミュニケーションを設立。趣味はシナリオ執筆。

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