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餅つき大会で人生を思う

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

今日は娘の幼稚園の餅つき大会だ。僕はお父さんのお手伝い係としてお餅をつく。まあ、これはこれで楽しい。

他のクラスのお父さんたちと合流して、ガンガンつく。「よいしょ!よいしょ!」と掛け声をかけたりすると、人間何となく「ノッて」来るものだ。いつの間にやら、一緒の臼でついていたおとうさん方3人に伝染して、もう一つの臼のお父さんがたとは対照的な雰囲気になってきた。

「何だか、『体育会餅つき部』って感じですねえ」「手があいたときには『杵の素振り百回!』とか」「量産体制が整いましたねえ」「何か、ラインが止まってますけど」などと軽口を叩いているうちに、ぐんぐんチームワークが良くなってきて、昨年と比べても異様に速いペースで餅をついていた。

近所の和菓子屋さんが毎年お手伝いと指導に来てくださっているのだが、僕は2年連続の参加だったので昨年よりは余裕があり、いろんなことを聞けて楽しかった。

僕が「出来れば途中まで餅つき機でついたものではなくて、蒸したもち米からつかせてもらえませんかねえ」というと、「いやー、やめといたほうがいいよー」とおっしゃっていたが、結局力を持て余したお父さん連中が押し切る形になった。

「まあ、男の子だもんねえ、やってみたいよね」とおっしゃるので、お父さんの1人が「うーん、もう『男の子』って年じゃないですけど」と言うと「いやあ、私からみたら、皆さん若い若い。私なんか還暦ですからねえ。もう人生下り坂ですよ」とおっしゃった。

いやいやそんな、とお父さんがたが応じるとすかさず、こうおっしゃる。

「でもね、下り坂も良いもんですよ。いろんなことがよーく見える。上り坂の時は、とにかく登ることしか考えてないですけどね。目の前の坂以外は見えないし、とにかく登るだけで。そんなもんです。でも、今はね、視界が開けて来る」

しばらく杵を振り下ろす音だけが、その場に響いた。そうかもしれない。そんなもんなんだろうなあ。杵を振り下ろしながら、水をつけた手で餅をこねながら、お父さん同士が眼で会話をする。最後のひと臼は、特に念入りについたお餅になった。

なるほどなあと思いながら、幼稚園の事務所でつきたてのお餅をいただいて解散。妻は今日はオランダ時代の先生の講演会に出た後、実家にお泊りなので、息子と娘を連れて、かねてから約束していたカラオケに行く。

自由奔放な娘は「これ歌う。あれ歌う」といろんな曲をリクエストするのだが、凝り性の息子はポケモンの「OK!」という曲とアフラックの「招き猫ダック」という曲が何度でも歌いたくて、リモコンを預けると、

「OK!OK!OK!OK!招き猫ダック招き猫ダックOK!招き猫ダックドラえもん音頭ドラえもん音頭OK!OK!招き猫ダックドラえもん音頭招き猫ダック」

というような予約が入れられていたりする。まあ良いだろう。楽しく歌えればそれでいい。3時間弱ワイワイと歌った。僕はピカソの曲と村下孝蔵の「初恋」などが歌えて満足。出来れば「ソネット」もあると良かったんだけどな。いい曲なのに。

帰宅して子供たちとすごろくをやって、夕食を作る。冷蔵庫の中の食材を適当に組み合わせた適当パスタと野菜サラダ。まあ、こんなものだ。

たっぷり食べて、録画してあったクレヨンしんちゃんを見て、娘のリクエストで「はらぺこあおむしくん」の英語版を(別に英才教育をやっているわけではないので、意味は分かっていないのだが)読み聞かせた後、左手に娘、右手に息子を腕枕しながら眠りに落ちる。いや、極楽極楽。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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