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楽しい博物館

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

昨日の土曜日は、息子が折り紙教室に行くとかで、私と娘は留守番。一緒に図書館に行ったり、一緒にニコニコ買い物をしてカレーを作ったりしました。

今日は妻が資格試験(実は、彼女は資格試験フリーク)を受けに行くとのことで、どうしようかいろいろ考えたのですが、王子まで一緒に子供たちを連れて行くことにしました。昼食をみんなで食べてから3人で向かったのは、飛鳥山公園の中にある、「紙の博物館」です。

展示も非常に分かりやすく、実に面白いものでした。学生さんたちも連れてきたいなあ。実際、女性の先生に引率された日大の学生さんが来ていて、「あ、先を越された!」と思いました。牛乳パックからハガキを作るという体験も、無料で出来ました。

牛乳パックを作りながら、担当のおじさんにいろいろ聞いた話も面白かった。要点だけ列挙します。

・洋紙は弱い。木の芯の部分を使う。繊維の長さが短い。繊維見えないほど短い
・和紙は強い。木の皮の部分を使う。繊維の長さが長い。1センチぐらいある。(長い方が強い。)
・針葉樹は繊維が長めで、広葉樹は短め

展示を見ていると、非木材パルプ(Non-Wood Pulpというのだそうです)、すなわち木材以外を原料とするパルプという展示パネルが目を引きました。というのも、行きつけのコーヒーショップ(だったかな?)で、「このペーパーナプキンは『ケナフ』という草から作っています」と書いてあるナプキンを目にしていたからです。

非木材パルプの材料は、ケナフのほかにも亜麻、綿花、ワラ、サトウキビなどがあります。世界規模で見ると、パルプ全体に占める割合は1割ほどなのですが、日本では1%とのこと。なぜでしょう?首をかしげながらメモを取っていると、ボランティアの方が近寄ってきて、「まあ、私らは木材パルプを使ってたので、どうしても木材パルプ寄りの説明になりますが」とおっしゃりつつ、いろいろ説明してくださいました。

非木材パルプの弱点を列挙します。

・年1回しか収穫できない
・農家の人が、もっと別の換金作物を作りたがる
・草なので、保存が難しい
・かさばる(量の割りにパルプが出来ない)

なるほど。良い事ずくめというわけには、行かないものなんですねえ。環境問題は、本当に一筋縄ではいかないようです。また、ワラには「シリカ」が入っていて、お話の細部は忘れてしまったのですが、シリカが入ると薬品処理した際に粘性が上がってしまって処理がしづらいとの事。

また、基本的に「繊維」さえあれば紙は作れるのだそうで、NHKで白菜から紙を作る実験が放映されたこともあったそうです。

昨年鳥取の米子に行ったとき、製紙工場からの煙が独特の臭いだったので、それはどういう成分か聞いてみたのですが、パルプを作るときに水酸化ナトリウムともう一種類の薬品を混ぜるのですが、それが製造工程のどこかでどうにかなって(すみません、文系なもので難しい化学反応を説明されると全てこうなってしまいます)、硫黄化合物か何かになるのだとか。

製紙会社の社長が米子にある皆生温泉に泊まったとき、工場の排煙の臭いをかいで「どこの工場の煙だ?」と言ったという笑い話もあるんだそうです。

そうそう、パルプの原料である木材、7割が輸入なのだそうですが、どの国からの輸入が一番多いと思います?何となくカナダあたりかなと思ったのですが、実際にはカナダは付加価値をつけることや、地元での雇用創出を求めており、あまり多くは輸出していないのだそうです。1位は個人的には意外なことに、オーストラリアでした。ユーカリなどが多いんでしょうか。

子供たちに折り紙を下さったり、息子には紙飛行機まで下さったり、いろいろ親切にしていただきました。

これは展示からですが、紙は中国の「蔡倫」という人が発明したと私は習いました。ところが実際にはそれよりも古い「紙」も遺跡から続々と出土しており、今では蔡倫は製紙技術を「集大成した」人物であると見なされているのだそうです。

同じく展示からですが、「透かし」について面白い話を読みました。卒業証書などにあるような普通の透かしは「白透かし」と言って、図案がある部分だけ紙が薄くなっています。ところが、お札などに使われている透かしは「白黒透かし」と言って、一部が薄く、一部が厚くなっており、その分鮮明に図案を表示できるのだそうです。

しかしこの白黒透かし、「透き入れ紙製造取締法」によって、民間では使用できない取り決めになっているのだそうです。透かしに2種類あるのも驚きなら、そんな取締法があるのにもビックリでした。いやあ、実に面白かったです。

子供たちもお土産のハガキも作れたし、博物館の外にある公園でたっぷり遊べたし、上々の日曜日でした。

別件ですが、通訳翻訳課程の学生さんたちとの面談も進んでいます。数名を残すばかりとなりましたが、今のところ「大変だけれどやりがいがある。慣れてきた。楽なだけより良い」という意見がほぼ全員から出てきて、ホッとしています。しかし、これに安心することなく、もっともっと改善して、より良い課程を目指したいですね。とりあえず「いぬ」としては、シッポふりふりというところです。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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