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リハビリを終えての社会復帰

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

う〜む、ハンドルネームの存在意義って何だろうと、しみじみ思う今日この頃です。

さて、お盆は妻の実家と私の両親宅でのんびりと過ごしました。たまりに溜まっていた抜書きノートの作成をしてスッキリする予定でしたが、新たに本を読んでしまって、バックログがさらに増えるという泣き笑いの事態にもなりましたが。家族と過ごす時間も取れたし、後期の授業の大目標を立てたり、それに沿ってあれこれ考えたりする時間もあったし、何はともあれ、上々のお盆休みだったと言えるでしょう。これほど徹底的にオフを満喫したのは数年ぶりです。

それにしても、テレビをつければオリンピックか高校野球ばかりで、世の中スポーツ以外のイベントは起きていないのかと思うほどでした。スポーツイベントが悪いというわけでも、私が興味が無いというわけでもないのですが、それ以外の情報を入れたいと思ったときに情報源が限られているというのはつらいですね。

特にロシアのグルジア侵攻が不気味な動きだと感じていたのですが、新聞などの報道でも隔靴掻痒の感があり、情報を求めてネットをウロウロしていたところ、父が自分が購読しているTIMEの最新号(8月25日号)をポンと放ってくれました。グルジア情勢について特集を組んでいたのです。民家の前に停まった戦車の写真のキャプションがThe Empire Strikes Back。いやー、どういう捉え方をされているかがよく分かります。記事を読んでいる間に頭の中に流れるBGMは、「ダースベーダーのテーマ」でしたよ。

その直前にあったSamantha Power氏のCommentaryも興味深かったです。ロシアの侵攻について、Diplomats and intelligence professionals must acknowledge that honor and humiliation often weigh as heavily in the minds of statesmen and citizens as do economic and security interests. (中略)They must avoid the habit of projectiong onto others their own ideas of what is rational. という件があり、なるほどそうだなと思うと同時に、いまさらそんな事を、とも思いました。

イギリスで放送通訳をしていたときに、チェチェン紛争(今調べてみたら、厳密には第二次チェチェン紛争)の報道にリアルタイムでかかわったこともあり、ロシア情勢には個人的に興味を持っています。別段TIMEの報道が公正だとも思っていませんし、どのニュースを選択するかという時点でメディアの中立性などということは制限付きの概念に過ぎないと思っているので、TIMEの記事を鵜呑みにするつもりもないのですが、とにかく何らかの情報が入らないことには始まりません。そうなると、英語が「道具」として使えることは、非常に大きなアドバンテージになってくると思います。

先日読んだ「『達人』の英語学習法」(竹内理 著)に、こんなことが書いてありました。

「発展途上の国においては外国語学習は特権であり、ある程度発達した国では権利となり、先進国では義務になる」といわれることがあるが、日本の中学校や高等学校における英語学習は義務の段階に至っている感が強く、積極性があるとは言えない。(p.13)

確かにそうだと思います。日本で普通の生活を営む上では、例えば英語が出来ないばかりに適切な治療を受けられずに命を落とすなどということはないわけで、そういう意味では、日本に生活しつつ英語を学ぶ「利点」はそれほどないと言えるでしょう。ただ、英語を学ぶ「意義」はあると思うのです。例えば今回のような、国際情勢をキャッチするアンテナが確実に1本増えるということが挙げられます。「それがどうした」という考えも、当然あるとは思うのですが、日本における「普通の生活」は国際社会の平和(というか、安定)に立脚していることを考えると、それはあまりに狭量な言い分だと思うのです。

放送通訳者としては、少しでも英語を磨き、知識を拡充し、常により良い通訳パフォーマンスを目指して努力して行きたいものだなと考えています。引用ばかりで恐縮ですが、やはり先日読んだ「カリスマ教師の心づくり塾」(原田隆史 著)の一節に、ギクリとしました。

心というのは難しいもんで、困難なことを達成した時に強くなるのではなくて、挑戦している過程で強くなるのです。(中略)出来ないことに挑戦するのではなくて、今出来る何かをやり続けることで、心は強くなります(p.162)

困難な目標に挑むことを、「出来なかったときの言い訳」にしないようにしようと思います。自分の「今、出来ること」をやり続けたいものですね。

Written by

記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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