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しずかな灯

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

今月から毎週月曜日を担当いたします「かの」と申します。通訳デビューしてから早15年。最近は放送通訳をメインに仕事をしております。家族は夫と就学前の子どもが二人。通訳現場へ向かう電車の中で猛スピードで日本語・英字新聞を読み、帰りの電車の中で仕事の復習。ノートの余白に夕食メニューのアイデアを書き込み、保育園へお迎え、夕食、お風呂。寝かしつけでは母親の私のほうが先にバタンキュー。朝2時起きも体力不足で挫折。冬至の到来を控えて日の出も遅くなり、私もお日様と一緒に目覚める・・・そんな毎日です。

通訳翻訳者に限らず、子どもを育てながら働いている家はどこもこんな感じだと思います。独身時代と違って、仕事の準備時間は限られているし、家族のために食事の栄養バランスも考えなくちゃいけないし、仕事以外の「課題」で脳ミソは常にフル回転。でもその一方で子どものキラキラした瞳を見てほぉ〜っと癒されたり、読み聞かせの絵本でグッと胸に迫るものがあったりと、子育て中ならでの醍醐味があるのも事実。あとは自分の体力をいかに温存しながら良い仕事をするか、なのです。

そんな日々を送る中、先日BBCワールドの看板女性キャスター、ミシェル・フセインさんのトークイベント通訳をしてきました。ミシェルさんはパキスタン系英国人でケンブリッジ大学卒。BBCにはプロデューサーとして入社したものの、ふとしたきっかけでキャスターになったそうです。現在1歳のお子さんがいるとのこと。トークでは子育てと仕事のバランスなど、とても参考になるコメントがありました。中でも「仕事は全力投球するけれど、家に帰れば自分の時間は全然ない」「でも子どもが大きくなったとき、『ああしておけば良かった』と後悔したくない」などの発言は、私も心の中で「そう、そうなのよ!」と思いながら通訳しました。

我が家も子どもたちが家にいるときは私自身、メールのチェックすらままならない状態です。

「おか〜さん、トイレ〜」(←下の子は2歳。目下トイレトレーニング中)

「おか〜さん、お着替え〜」(同じく下の子。まだ自分では着られない)

「ね〜、おか〜さん、積み木でおうち作ったの。見て見てぇ〜」(上の子4歳。創造力フル稼働中)

それ、トイレ!それ、シャツ!「お〜、上手にお家ができたねえ」と手と口を動かして反応しつつ、頭の中では「明日の訪問先の集合時間、何時だっけ?」「資料プリントアウトしなきゃ」「先日の請求書、郵送しないと」と半分はお仕事モード。フリーランスゆえ、なかなかオンとオフが切り替えられず、時に子どもの問いかけにおざなりに答えてしまうこともあって罪悪感に駆られることもあります。

最近は手帳ノウハウや起業、夢の実現の仕方などに関する本がたくさん出版されています。そうした本ももちろん勇気をくれるけれど、自分の感性を揺さぶるような小説を読んだり、色々な人との出会いを大切にしたりすることも大事だと思います。そして、与えられた今の自分の状況で何ができるか、大きな目標と小さな目標を抱いて日々を送っていければと私は思っています。独身時代のような大きい炎は燃やせないけれど、しずかな灯をたやさないようにしていきたいです。

ミシェルさんは「突発的なニュースによる急な出張はできなくなったけれど、その分、良いインタビュアーとしてin-depth interviewもできるようになりたい」と語っていました。その小柄な体からまさにしずかな灯が燃えていたように思います。私もより良い通訳者をめざして、できる限り努力していきたいです。また、以前からの夢、つまり「書く作業」ももっと深めていきたいと考えています。その一環として今回ブログを書く機会に恵まれてとても嬉しいです。皆さんに役立つような、また、thought-provokingな内容を提供していくつもりですので、コメントもぜひぜひよろしくお願いいたします!

Written by

記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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