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イパネマの娘

とと

通訳・翻訳者リレーブログ

♪美しく 優雅な 若い乙女
波を思わせる 甘美なスウィング
海辺の道

イパネマの陽 黄金の肌
言葉では表せぬ 見事な歩きぶり
目にも妙なる 美しいもの

この孤独は何のせい
なぜ こうも悲しい
この世の美は 自分だけのものではなく
ただ通りすぎて行くだけ・・・            (岩本令 訳)

ビートルズの『イエスタデイ』に次いで、世界で二番目に多くカバーされたというボサノヴァの名曲『イパネマの娘』でジョアン・ジルベルトが歌うポルトガル語部分の日本語訳です(なんて偉そうに書いてますが、ポルトガル語はまったくダメです。ゴメンナサイ・・・)。季節は夏なのに、ちょっぴり切なくて、いいですよね。

ご存じの方も多いと思いますが、この曲には当時のジョアン夫人、アストラッド・ジルベルトが歌う英語の歌詞もあって、ひとりの男性が通りすぎる美しい娘に想いを伝えたくて胸を焦がすという、もう少し具体的な内容になっています。でもやっぱり、ポルトガル語(日本語訳)の歌詞の方が断然いいですね。普遍的で、哲学的な匂いがします。

この曲が収録されたアルバム『ゲッツ/ジルベルト』のレコーディングは、波乱の連続だったようです。1960年代初頭、ブラジルの新しい音楽としてボサノヴァがアメリカに紹介されると、進歩的なジャズミュージシャンたちの間で人気を博しました。その一人がサックス奏者のスタン・ゲッツです。ブラジルからは、ギターとボーカルのジョアン・ジルベルト、この曲の作曲者でピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビンらがレコーディングに参加しました。でも、囁くように歌いたかったジョアンは、ゲッツが吹くサックスの音が大きすぎることに不満を募らせていました。

「このアメ公に、おまえはバカだって言ってくれよ」と、ジョアンがポルトガル語でジョビンに命令すると、ジョビンは「スタン。ジョアンはあなたとレコーディングすることが夢だったと言っています」と英語で伝えたそうです。何ともすばらしい機転の利かせようです。こんな険悪な雰囲気の中で、名曲『イパネマの娘』は録音されました。結局、ジョアンとゲッツはそれぞれ自分のスタイルを貫き、ジョビンは二人の間で板挟みになりながらも、抑制の利いた見事なピアノを披露しています。文字通りのinterpreterとして、ジョビンはすばらしい仕事をしたわけです。

こんなに頑張ったのに、ジョビンはゲスト扱い・・・

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記事を書いた人

とと

大学卒業後、数年のサラリーマン生活を経て、フリーランス翻訳者に。技術系から出版物と、幅広い分野で高い評価を得ている。趣味は音楽。ただいま子育て奮闘中。

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