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新しい世界に対する好奇心、柔軟な姿勢

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通訳・翻訳者リレーブログ

先日、とても素敵な経験をしました。
深く考えさせられ、反省させられた、とてもありがたい経験です。

実はある友人から、ちょっとした相談話をされたのです。
このところ話題になっている、ある世界のあるものに関する、仕事の話です。
私はその世界のプロではないので、詳しいことは把握していないのですが、でもそれは、すぐ其処に在る未来世界。ワクワクしてくるような話でした。

その友人の姿勢が、私にはとても眩しく映りました。

眩しい——。
そう、この“新しい世界”“新しいもの”に対する、好奇心。期待の大きさ。
それはどういうことができるものなのか。どういう可能性を秘めているのか。
そうして自分はその中で、そのもの相手に、何ができるか。
プロとして、愛することをやり続ける為に、自分はどうすべきか。

前を見据えていて、物凄く前向きで…。
その人はきっと、これまでもそういう姿勢や想いで、新しいものと接してきたのでしょう。戸惑い悩みつつも、胸膨らませ、新しい道を模索し、新しい世界を開拓しながら、その世界の中の自分の居場所を、確実に築いてきたのだと思います。

翻ってこの私は、これまでどうだったのでしょう…。

新しい世界、新しいもの。モダン・テクノロジーに対する姿勢。うーん。
立ち止まり、固まり、顔を背け、下を向いたまま。まるで後ろ向き、とても消極的。あーー。

思えば……

カメラ。
フィルム・カメラは、小学校低学年時に、両親に買って貰ったのが、記念すべき1台目。しかし、いつどういう時に貰ったのか、自分でせがんだのか、突然の贈り物だったのか、まるで記憶になく。撮ることを、それなりに楽しんでいたことだけは、覚えてはいるのですが…。
とっても消極的。

その後、デジカメ時代に突入。
最初にその存在を知った時、真っ先に思ったのは、“そんなもの、味気ない写真しか撮れないに決まってる!”…ということ。自分で所有したいとは、まるで思わず。

実際に手にしたのは、それから数年の後。
“日本の風景を撮って、メールで送って、私たちに見せて”…というアメリカ人の友だちが、クリスマス・プレゼントとして、デジカメを贈ってくれたのです。オリンパス製の初心者向けモデル。いまから10年ほど前のこと。
つまり、とっても受け身。
あの友だちからあの時、あのデジカメを贈られていなかったら、今頃どういう旅の仕方、していたのでしょう…。

メールといえば、パソコン。
いえいえ、その前にタイプライターですね。初めて触れたのは中学時代。タイプの授業を選択して。“将来使えるかも知れないから”…という漠然とした理由から。タイプライター自体は、物心ついた頃には、家にすでにあったような…。懐かしのオリベッティー。

その数年後、原稿書きの仕事をするようになるわけですが、最初の数年間は、原稿用紙&鉛筆&消しゴム…の世界。
その後、“タイプライターみたいだけど、日本語も打てる、ワードプロセッサーという凄い機械が出たらしい”…というウワサを小耳に挟むようになります。
でも、まるでソソられず。“原稿用紙の方が、いい文章が書けるに決まってる!”…と、これまたまるで根拠のない理由により。
音楽業界自体、すべての会社が導入するまでは、他の業界と比べて、時間がかかったような記憶があります。未だに“紙”に拘っているライターが、何人もいますし、その彼等の気持ちや言い分も、今でもとてもよく理解できたりします。

で、結局、東芝ルポを購入したのは、編集部を去った直後。仕事相手たちに急き立てられ、嫌々と…。
再び、とっても受け身。
で、ああだこうだ言いながらも、なぜ購入したのか…。それは、フリーになった最初の1年弱、ニュース番組の字幕翻訳入れの仕事をしていたから。巨大なワープロ片手に、汗掻き人掻き分け電車を乗り継ぎ、各テレビ局を巡っていた日々のこと、懐かしく思い出します。ああ、それにしても重かった!

程なくして、パソコン…インターネット時代の到来です。
この時もまた、最初は、“もうこれ以上あちこちに繋がりたくはない”“これ以上忙しくなりたくはない”…などと、有無を言わせぬ拒絶反応ぶり。
でも結局、“このまま原始生活を送り続けていると、仕事にも支障が出てきそうだ”…との危機感により、仕方なく購入。ただし記念すべきその1台目、IBM THINKPADを家に迎えるまで、構想約3年。“そんなに迷っていると、その内に電子レンジつきパソコンとか、冷蔵庫機能つきパソコンなんかが出てくるかもね、あっはっはっ!”…と友だちに揶揄されたほど。

実際に繋がり、真っ先に覗いたのは、ジョニー・デップのホームページ。そうして彼の“声つきインタビュー”を聞いた瞬間、気を失いました。
いつでも世界と繋がれる、魔法の玉手箱。
いまでは仕事にプライベートにと、コイツのいない生活など考えられないほど、とても親密な関係にあります。嗚呼。

でも……
ブログ? このコーナーだけです、書いているのは。
ツイッター? ご…ご冗談を。何かをプロモートする企業や、それから例えば、ファンのいるような職種の人達には、とてもよい情報発信手段。受け手側のファンとしても、好きな人が何をし、どんなことを想っているのか、瞬時に分かり、時には対話もでき、繋がれる(…という気になる)わけですから、こんな幸せなことはないでしょう。
でもそれ以外の一般ピープルは、どうなのでしょう。自分の想いや行動を随時公開するなんて、考えただけでも疲れるし…。

さてさて……
音楽の世界も、ここ四半世紀の間に激変。
物心ついた頃は、レコード盤。Vinylというヤツです。みんなこれで音楽を楽しんでいました。
それがコンパクト・ディスクになりました。はい、略してCD。でもこれ、音は確かにきれいですが、でもツル〜ンとしていて、味や深みに欠ける。“あのザラザラ感が恋しい”“パッケージ・アートワークの凝り方が良かった”と思う瞬間が未だにあり。実際、レコード盤を集めては楽しんでいる、アーティストや業界関係者の多いこと。

その後、iPodの出現。これに飛びつくのは、この私でも、おー早かった。
だってこのサイズこの軽さで、これだけの音質、これだけの曲数が堪能できるのですから! 音楽中毒患者としては、もうたまらない。ぺこたん・イン・ワンダーランド〜。
かさ張るCD何枚もバッグに詰め込み、巨大なCDウオークマンで聴いていた、地獄のような日々とは、さっさ

おさらば…したのでした。
はい、音楽がデータ化(嫌な言葉!)されてからは、音楽を気軽に持ち運び、何処ででも聴けるようになったわけです。これはもう革命的。

そう言えば、ある人気ギタリストが、インタビューで言っていましたっけ:
“現代社会3大ブリリアント発明は、電子レンジ、エレキギター、iPod!”〜(^−^)

音楽の世界と並行して、急速に変化しつつあるのが、出版界。
“書物が売れなくなった”“みんな本を読まなくなった”と言われてから久しく。雑誌などに原稿を書いている私としては、こちらの状況も、気が気でなりません。そうして、“どうすればまた売れるようになるのか”…と、もがき苦しみ、模索している間に、KindleやらiPadやらと、文字の電子化の時代到来です。
いやはや。

そうして真っ先に感じたのは、“これで出版界、どうなるんだ??”という強い焦り。それから、“そんなもんで本を見たって、味気ないに決まってる!”“でっかいハードカヴァー持ち歩くのに、慣れている西洋人ならまだしも”“私はずっと紙に拘るぞ!”…という、言ってみれば、開き直り。
メチャクチャ後ろ向きな姿勢。
その新しい可能性など、頭を掠めもせず。
そういえば、私がやっていた音楽雑誌の電子化の話も、ちらほら出ていますが、“なんじゃ、それ?”“誰がそんなもん読むんだ?”…と、頭はフリーズしたまま、保留の状態だったりします。

そんなこんなの時に、先述の友人からの仕事話であります。

そうして思いました。
“この新しい世界、新しい流れの中で、自分は何ができるか、どうすればいいか”…という方向で、物事を捉えるべきだ…と。その“可能性”に目を向けられるような、好奇心や探究心に溢れた、前向きな人間であるべき。色々なことに興味を持ち、色々なことにトライする柔軟性をもつべきだ…と。

未知なるものに接した時に感じる、焦りや抵抗感もまた、否定することはない。それは先へと進む為の、原動力にもなるわけですから…。

と同時に、新しいものや情報に、惑わされ自分を失いたくはない。自分のやりたいこと、自分の立ち位置、自分という存在そのものを、常に見据えていたい。
結局は、人間ひとりひとりの心構え、頭の使いよう、工夫次第なのでしょう。

世界がどんなに変わろうと、アナログ感覚は失わずに…。そうすればこのデジタル時代とも、上手くつき合ってゆけるはず。
デジタル&アナログ。そのバランス感覚。共存。

実際、パソコンが普及しても、原稿用紙&鉛筆は存在していますし、iPodがどんなに愛用されようと、LPは姿を消していないわけですから。ですからiPadが普及しても、紙媒体も逞しく生き残り、書物がなくなる日は来ないでしょう。間違いなく。
個人的な願いも込めて。

でも、とにかく、繰り返しになりますが……
できないことや負の面よりも、まずはできることに、目を向けたい。新しいもの、その可能性に、ワクワクするくらいの人間でありたい。
自分のできないことよりも、自分のできることを考えてみたい。まずは飛び込んでみないと。それでダメだと感じたら、ダメでいい。その時はその時。やってみない内から、ダメだと決めつけるような人間には、なりたくはない。

いま居る場所よりも、この先にある場所の方が、素敵に決まっている。留まるよりは前へ進む方が、閉じ籠っているよりは、飛び出す方が、ずっと楽しいはずですから…。

ガラパゴス諸島のリクイグアナには、なりたくはない!
(←←彼等に対して、とても失礼な言い方ですが…)

いまやっている、好きでたまらないことを、一生続けていきたい。だから尚更のこと、変わりゆくこの世界の中で、自分に何ができるか、問い続けていくこと。それを大切にしていきたい。

すべては自分次第、取り組む姿勢、気持ちの持ちよう。

反省の念も込めて——。
今回、先述の友人とのやり取りを通して、色々と考えさせられました。

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記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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