BLOG&NEWS

皆さんからの御質問

サイトデフォルト

通訳・翻訳者リレーブログ

今週は、色々なところでよく質問されることに、ちょっとお答えしようと思います。

●音楽業界の通訳・翻訳者になるには、どうすれば良いのでしょうか?
A: 皆さん、レコード会社やプロモーターや雑誌社などに数年間勤めた後に、独立し、それまで仕事してきた人達にお世話になりつつ、どこにも所属せずに、フリーランサーとしてやっています。
因みに私は、音楽雑誌編集部で約7年間働いた後に、今の仕事を始めています。そうしてその雑誌社に入れたのは、幸運と、その幸運を引き寄せる為の、少しばかりの努力とアクションの結果です。

●どういった勉強をすれば良いのでしょうか?
A: 編集部員として働き始めた当初は、英語の音楽雑誌やファッション誌など、インタビュー記事の載っているものを購入しては、インタビューの仕方や、(英語の)特殊な言い回し・専門用語を、ひたすら研究しました。
現在はこれといった“勉強”はしていませんが、毎回毎回のインタビューや原稿書きの中で、反省したり穴に入りたくなったり…と、そういうことから得ることは無限にあり、“これで良し”と思う瞬間など、まだ一度も無い…というのが現状です。

●日頃心掛けていることがあれば教えてください。
A: 心掛けていると言うほどのことではありませんが、本をたくさん読み、色々なところにアンテナを張り巡らせ、その世界の素敵なプロ達と会い、そうして色々な音楽を聴くこと。
そういうことが無性に楽しく感じられる限りは、この仕事を続けられると思っています。

●音楽業界の通訳・翻訳者の毎日は、どんな感じですか?
A: アルバム歌詞対訳作業は、1枚につき3—4日。それが理想。急ぎの場合は、2日で仕上げなければならない場合もあり。プロモーション来日通訳の場合は、1日から数日間の拘束。雑誌社からのインタビュー依頼の場合は、インタビュー1本につき30分から1時間ほど。レコード会社からの依頼で、複数の媒体用に書き分ける場合は、(その本数にもよりけりですが)だいたい1—1時間半ほど。その起こし・原稿書きは、30分物=約6000-8000字=1日。それが理想。だいたい45分が限界。ライナー・ノーツであれば、1日1本が理想的ペース。

●音楽業界の通訳・翻訳者の必需品・七つ道具とは?
A: パソコン、固定電話(電話インタビュー用)、携帯電話(外出時の業務連絡、メール転送用)、テープレコーダー・ICレコーダー等(インタビュー録音機)、テレホン・ピックアップ(電話インタビュー録音道具)、テレビ・DVD(字幕入れ用)、ステレオ、iPOD、電子辞書、速記ノート&ペン、落書き帳(何か思いついたらすぐに書き込めるよう)、ノーカーボン請求書(これを出さないとギャラが入って来ない!)、名刺、Thank youカード。
そうして何よりも、体力・気力・集中力・持続力。あとは“愛”!(笑)

●苦手なアーティスト相手の仕事依頼が入った場合は?
A: ヒップホップとラップとクラシック以外は、基本的に来るもの拒まず、去るもの追わず、時間の許す限り“何でも来い!”…の態勢。とにかく音楽とミュージシャンが大好きなので、どんなことがあっても、けっして苦しゅーない。

●音楽を仕事にして、楽しいですか? 嫌になることはないですか?
A: オフとオンの切り替えが難しい…不可能に近いので、気がついたら疲れていることもありますが、でもとにかく好きなので、瞬間瞬間、楽しくてたまりません。幸運なことに。
英語を使うようになって40数年、音楽を聴き始めて30数年、この仕事を始めて20数年。言葉+英語+音楽。これ以上に好きなこと、長続きしたことには、未だ出会えず…ですし…。

●ファンだったのに、仕事をして嫌いになったミュージシャンはいますか?
A: これ、よく聞かれること。でも、いません。魅力的な人達ばかりです。物凄い酔っ払いもいましたが(それも私の大好きなアーティストで)、根はとても素敵な人間で、この時も最終的には上手く仕事できましたし。

●よいインタビューをする方法や、よい原稿を書く秘訣とは?
A: 事前の下調べ。そうしてそのアーティストに対する想い。それがすべて。そのアーティストやアルバムの魅力を、ひとりでも多くの方々に伝えるには、自分はどうすれば良いか。それを考えながらやれば、必ずよいインタビューができ、よい原稿が書けます。
よい原稿とは、読み易い原稿のこと。つまり、分かり易い言葉、短くシンプルな文章、メリハリのある内容。具体的に言えば、例えば10行のところを5行、5行のところを2行にまとめる作業。難しい単語・余計な言葉羅列の長く理屈っぽい文章ほど、読み難いものはない。これ、当時の編集長に言われ続け、常々頭に入れていることなのですが…。

●歌詞対訳で心掛けていることは?
A: 学校でやってきた“英語のお勉強”にとらわれ過ぎないこと。基本はもちろん大切。しかし、“正しい訳”に拘り過ぎ、単語ひとつひとつを丁寧に訳していったら、逆に味のない対訳になってしまいます。右の物を左に移していくだけでは、よい対訳とは言えません。
では、最も大切なのは? それは、曲を聴きながら、そのアーティストの特徴を掴むこと、そのアーティストがその歌詞の中で、何をどういう風に伝えようとしているのか、それを感じ取ること。
そのアーティストにより、使うべき単語も異なります。例えば“I”でも、“あたし”“私”“ボク”“僕”“ぼく”、“you”でも、“あなた”“貴方”“貴女”“アンタ”“おまえ”などなど、訳し方は色々。そのアーティストに一番合った言い方を、考えなければなりません。

●今まで取材したミュージシャンの中で、最も印象に残っている人は?
A: ラットのウォーレン・デ・マルティーニ(生まれて初めてインタビューした相手であり、当時最も好きだったギタリスト)、マイケル・シェンカー(ギターの神様。独占大特集の為に、1週間ほど“追っかけ”をやったことも何度かあり)、ヨーロッパ(〃)、ハロウィン(〃)、ジューダス・プリースト(メタルゴッド。15歳の頃からの大ファン。紳士的で魅力溢れる人達。とても素敵に年を重ねています)。

●面白い取材裏話などあれば教えてください。
A: あり過ぎるので、これはまた今度の機会にでも…。

●個人的に好きなミュージシャンは?
A: ジューダス・プリースト、アイアン・メイデン、ラット、モトリー・クルー、スキッド・ロウ、テスラ、ヴァン・ヘイレン、エアロスミス、チープ・トリック、サラ・ブライトマン、エンヤ、ABB

Aなどなど。

●音楽を好きになるきっかけになった、アーティストやアルバムは?
A: 生まれて初めて買ったアルバムは、パートリッジ・ファミリー、それからカーペンターズ。小学校3-4年時(←年がバレそうだ〜)。現在好きで仕事の中心にもなっているHR/HMを聴くきっかけは、中学校3年の頃に聴いたホワイトスネイク、それからマイケル・シェンカー。

●その仕事をしていると、ミュージシャンと親しくなれますか? 因みに誰と親しいですか?
A: これも何度聞かれたことか(苦笑)。この“親しい”の意味が良くは分からないので、何ともお答えできないのですが……。でも、双方の間に隔たりがあり過ぎても、逆にあまりにも近しい関係にあっても、よい仕事・よいインタビューは出来ないのでは…。

●音楽業界で仕事をしていて、一番幸せ感じる瞬間は?
A: 一流のプロ達…クリエイティヴな人達と出会えること。一番幸せ感じる瞬間です。それはミュージシャンに限らず、例えば一流のカメラマン・写真家だったり、メイクアップ・アーティストだったり、デザイナーだったり、編集者だったり、レコード会社ディレクターだったり…。その分野の第一線で活躍している人達は、それだけに色気があって魅力的。並はずれた才能や感性を持っていますし、人一倍努力もしていますし、ぶれない姿勢と強い信念と真摯な態度で、仕事に取り組んでいますし、運を引き寄せる力も持っています。
そんな彼等と仕事をするのは、とても勉強にもなりますし、ワクワクします。感謝の気持ちで一杯です。

Written by

記事を書いた人

サイトデフォルト

高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

END