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偶然か必然か

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通訳・翻訳者リレーブログ

皆さん、何か目に見えない“力”や、言葉では説明できない“直観”により、素敵な縁に恵まれ、ある方向へと導かれたこと、ありませんか?

私の人生は、そういうことの連続です。

最近では、先週のこの欄でも触れた『死神の精度』。
先日フラッと入った本屋で、“ちょっとそこのアンタ、ボクを連れて帰って!”…と声を掛けられた一冊。
エンターテンメント性の高いプロットに、簡潔で軽快な文体。
「吹雪に死神」「恋愛で死神」「旅路を死神」等、タイトルもシャレている。
そうして主人公は、“ミュージック”をこよなく愛する死神ときた!
と言うわけで、遅れ馳せながら、とりつかれたように、この伊坂幸太郎氏の作品を集めています。

そう、とりつかれたように、夢中になれる何か。
そんな突然の、素敵な出会い…。

思えば、ハードロックとの出会いも、そんな感じでした。
昔々、中学時代。ポップばかり聴いていた私が、ボーッと聴いていたラジオから、突然流れてきた曲に、金縛りに遭ったような衝撃を受けまして。“おぉ〜、やっと出会えた!”…と雄叫び上げたくなりました。
それがホワイトスネイク。曲は“Fool For Your Loving”。
歌うは、偉大なるバンド“ディープ・パープル”の元ヴォーカリスト、デヴィッド・カヴァーデイル氏。のちに仕事で会う幸運にも恵まれます。

南米から帰国後の、編入先探しの時も、そう。
色々な高校を見学して廻ったものの、どこも“何となく”違和感を覚え、受験する気さえ起こりませんでした。が、4-5校目で、突然、“私が通わなければならないのは、ここだ!”と、何故か強く思い、そうしてその通りになりました。
同校では、ハードロックが大好きな“集団”と、ハードロックに理解のある先生との出会いがあり、私の“音楽熱”は益々ヒートアップすることに。

不思議な偶然、不思議な出会い。

そうして就職。
愛読する音楽雑誌の名物編集長へ、突然の電話。あれは何だったのだろう…。
理由は良くは分からないのですが、“とにかく電話しなきゃ”と思ったのを、今でもよく覚えています。
あんな向こう見ずで大胆なこと、よく出来たものだと、いま振り返ると、とても不思議でなりません。
とにかくその時、偶然にも編集長は会社にいて、偶然にも翌日ヒマでやることがなかったので、ヒマ潰しに“電話してきたイチ読者”に、会ってくださったのです。
偶然は重なるもので、その約2年後、私が就職する年に、編集部員がひとり抜けた為、“正社員にならないか”と誘われるわけです。そうして、狭き門と言われる音楽雑誌編集部へ…。

だいたい、
カナダに住み、英語を話すことが出来、ついでに音楽が大好きだったから、誘ってくれたわけで。そうでなかったら、いまこうしてこの世界には、いなかったと思います。
代わりに、私には、どんな人生が用意されていたのでしょう。
考えると、不思議です。

カナダと言えば、
敬愛する風景写真家・吉村和敏氏の作品との出会い。あれもまた、とても不思議な瞬間でした。
ある日、新聞をボーッと眺めていたら、新刊紹介コーナーのある“売り文句”が、いきなり目に“ズーム・イン”したのです。そう、その部分が本当に、“突然飛び込んで来た!”…という感覚でした。
その時のフレーズ: “夢のようなカナダのクリスマス風景”。
カナダ?? 彼の地を第二の故郷と思っている私は、そのフレーズ、そうしてその広告に、言葉では表現できない“何か”を強く感じ、“何か”に導かれるように、その作品を入手。
それが写真集『SILENT NIGHT』。
それから彼の作品を集めているのですが、そのどれもが、溜息が出るほどに、抒情的で美しいものばかり。他の写真集とは、“何か”が違うんです。伝わってくる“何か”が…。
多くのものを感じ、歌詞対訳など、仕事をする上で、インスピレーションにもなっています。
感謝の気持ちで一杯です。

こころに響く芸術は、人生に潤いを与えてくれます。

そう、音楽でも映画でも、小説でも写真集でも、こころのど真ん中に“ズドーン”とジャスト・ミートする作品などと、そうそう巡り合えるものではありません。
ありそうで、ない。
だからこそ、大切にしたい。

“いま楽しく、やりたいことが出来ているのは、それだけ才能に恵まれ、努力してきたから”…と、人に言われることがありますが、それはちょっと違う気がします。
才能や努力などは、ちっぽけなもの。それよりも、もっと次元の違う何か、そう、目に見えない力、偶然の出会い、素敵な縁…。そういうものの繋がり、重なり合い。点と点が、一本の線となってゆき、色々な場所へと導かれ、そうして“いま”があるのだと、そんな風に思えてなりません。

ほんと、不思議。

もっとも、それもこれも、すべては“偶然”などではなく、“必然”なのだと、よく言われたりもしますが…。

何はともあれ、
今回『死神の精度』に触れ、あれこれ思い巡らせてしまいました。
そうそう、読後、レコード店の試聴コーナーへ行くたび、私はキョロキョロ、辺りが気になって仕方ありません。
だって死神は、あそこが大好きで、“仕事”の合間に、よく立ち寄るらしいですよ〜!
ここだけの話…ですけどねっ。

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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