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素朴な疑問

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 大学の勉強が一段落して時間ができたので、読書。それも、今までずっと英語ばっかり読んでいたので、反動で日本語。
1.¥t希望格差社会
「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
著:山田昌弘
2.¥t下流社会 第2章
なぜ男は女に“負けた”のか
著:三浦展
3.¥t生きさせろ!
難民化する若者たち
著:雨宮処凜
 1はシティの市立図書館、2と3は大学の図書館のそれぞれ日本語コーナーで借りた。特にテーマを決めて借りたわけではないのに、ノンフィクションで新しそうなのを選んだら、たまたまどれも日本の「格差社会」についての本だった。
 今年の初めに日本に帰省した折りに、「派遣村」というのができて、失業者をサポートしている、というニュースを目にした。1999年の法改正による労働派遣の原則自由化、2004年の製造業への派遣解禁によって、派遣で働く人の数が急増したことをこのとき初めて知った。
 それぞれの著者は、1が大学教授で「パラサイト・シングル」という概念の提唱者、2がマーケティング会社経営者で「下流社会」というベストセラーの著者、3が自分自身もフリーターを経験し、正社員になれずにもがく若者側の女性。だれが間違っている、正しいではなく、それぞれの視点で日本の現在の状況を論じている。1は、安定した生活を得ることができず、希望を持つことができない若者たちを社会学の視点で分析して、国の「不良債権」にたとえ、2はマーケティングの視点を使い、下流社会を愛読雑誌やライフスタイルから分析し、3は若者たちが怠けているわけではなく、自分ではなすすべもなくフリーターになっていく過程をせつせつと訴えている。そして、三者とも、企業や社会、国がなんとかして、この変化に対応していかなければならない、という結論に至っている。
 特に3は、実際の派遣社員の過酷な労働条件、さらにこの条件で働いていかなければ最低限の生活をまかなえない実例を紹介している。また、正社員の座を獲得できれば安泰というわけではなく、正社員であり続けるために企業が要求する過酷な労働の実情も描いている。この本を読むまで、「過労死する前にやめればいいのに。今の日本で仕事さえ選ばなければ食べていけるだろうに」と思っていたが、これは間違っている、ということがよく分かった。
 でも、死ぬまで働くか、食べるものがなくて死ぬか、という選択肢しかないなんて、少なくとも日本という経済先進国で絶対におかしい。これって、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と言った(とされる)マリー・アントワネット状態? でも、やっぱり、思う。どこかがおかしい。

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みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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