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漢文訓読

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 来週から始まる授業の準備に、あれこれ資料を読んでいるところです。来週の翻訳理論のテーマの1つに、「アジアにおける翻訳理論」があります。ヨーロッパで生まれ、成長している翻訳学は、アジアでは、日本を始め、まだあまり発展していません。ヨーロッパでは、大学で3、4年かけて学ぶ、学位として認められているコースがありますが、日本で翻訳を学ぶといえば、たいていは専門学校での実務的なコースです。もちろん、日本の大学でも翻訳を教えているところはありますが、単独の科目として、または副専攻として位置づけているところがほとんどのようです。(このあたりは月曜日のいぬさんがご専門なので、機会があれば、日本での翻訳学の動向について教えていただけたら幸いです!)。
 「なぜ、アジアではヨーロッパ的な翻訳理論が発達していないのか?」というのが、今回の課題の質問の1つにあります。その答えを探るために読んでいる資料の中で、日本の「漢文訓読」という独特のスタイルについての紹介がありました。そう、中学や高校で習いましたね、返り点を使って漢文を読む、という手法です。これは、ヨーロッパでは生まれることがなかった、そして、漢字という共通の基盤があるからこそ可能となった、日本独自の画期的な中国語の翻訳手法なのです。習っていたころは、そんな意義に思い当たることもなく、ただ文法や語句を覚えて、テストを迎えるというだけでしたが、そんな素晴らしい発明を体験していたのだ、と気づかされました。
 この質問については、まずはアジアにおける言語・文化としての基盤はヨーロッパのそれとはまったく違う、ということと、その実例を織り交ぜ、「理論」に関心が寄せられてこなかった背景を探っていきたいと思っていますが、それ以外にも、ヨーロッパにおける翻訳学の歴史、および1950年代以降の4つの代表的な翻訳理論、中国の歴史における翻訳に影響を及ぼした事項をまとめないといけません。ああ、間に合うのか。

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みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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