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一流のサービスって?

背番号8

通訳・翻訳者リレーブログ

前回ドイツ人来日の際、日本側の担当の方が「日本風のシュニッツェルを食べに連れて行く!」と約束したもののお目当てのとんかつ屋が閉店してしまっていたことを間際になって発見し、お店選びに焦っていたところ同チームの方が目黒の老舗のお店を強く強く一押し。しかも暖簾分けしているそうですが「絶対本店じゃなくちゃダメ」ときっぱり。とんかつ、たまにすごーく食べたくなるけど正直お店ごとの違いまでわかっていなかった私が「何が違うんですか?」と聞くとしばし考えられた後、「うーん、全てにおいて一流ってところかなあ」と一言。これで気にならないわけがない。一流のとんかつ屋さんって、どんなの??

翌週早速偵察に。ものすごく高かったらどうしよう!(=値段も一流?)とどきどきしつつ(外にはメニューが出ていない)暖簾をくぐると「いらっしゃい!」と中から威勢の良い声が。2階はテーブル席らしいのですが1階は清潔感溢れる白木のカウンターがぐるりとあって中で白い割烹着を着たおじさん達がてきぱきと衣を付けたり揚げたトンカツを切ったりしている光景が。何がすごいったらまずはカウンターがぴっかぴか。お皿なしで直接カウンターに載せて食べても余裕でOKなくらい(置かないですけど)。そして隅々まで磨き上げられた広々としたオープンキッチンで働いている方々の作業着も前掛けも油染みひとつなくぱりっと真っ白なのです。揚げ物のお店だというのに!そしてキッチン側のフロアもカウンターと同じ白木製。何故か奥には昭和の香りのする黒電話。座るとすかさずお茶とおしぼりとメニューが出て(そんなに種類は多くなく、ヒレ・ロース・串カツがメイン)選ぶとさっと夕刊が2紙私の前に置かれました。へー珍しいと思いつつざっと読み終わる頃に揚げたてのとんかつが。食べている時もじろじろ見られている感じは全くしないのですが、キャベツやご飯やお茶のおかわりのタイミングの絶妙なこと。食べ終わる直前には目の前の楊枝ケースをさっと開けてくれてもう一度暖かいおしぼりが出ます。えーと厳密に言うと楊枝立てにフタ代わりにかぶせていたビールのグラスを取ってくれるのです(←この辺一流なんだけど庶民的)。味の方はもうあちこちで書かれていることなので今さら私が細かく説明することもないですが、衣が独特ながらあっさりとしています。ぺろり完食。よく外国人の接待に使われるということですが(英語のメニューもありました)納得。日本の古き良きホスピタリティ溢れるお店といったところでしょうか。「かゆいところに手が届く」どころか「かゆくなる前にかく」的なサービスをさりげなくこなすって、凄くないですか?

サービスの凄さと言えば名だたるバンコクのオリエンタルホテルも忘れられません。朝食を食べに階下に下りるとすっとベルボーイが近寄って来て鍵を預ってくれます。食事が終わって戻ろうとすると番号も言っていないのに顔を見ただけで部屋の鍵を渡してくれ(何百室、何百人が対象なので毎朝人間神経衰弱大会状態か?)、もちろんエレベーターのその階のボタンも押してあります。しかしこれは序の口。友人と2人で泊まったのですが、何か問合せのためレセプションに電話すると"How can I help you, Ms.○○?"ときちんと名前で呼んでくれます。はい皆さん冷静に考えて下さい。この部屋には2人泊まっています。両方とも日本人女性(同年代)です。何故電話をしている私が背番号8だとわかる?!くやしいので(?)フェイントをかけて連れに電話をしてもらうとちゃんとその時は彼女の名前で呼ぶのであった。なんで?なんで?

通訳もある意味サービス業なのでこういう見事な技を見せられるとほお、と感嘆します。ここまで「かゆくなる前に察知してかいておきましたから」的サービスは無理でも”何だかわからないけど快適”と相手に気付かれずに細やかな気配り・パフォーマンスができたらなあと思います….が咄嗟に出てこない単語をクライアントに調べて頂くようではまだまですね。精進します。

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記事を書いた人

背番号8

イギリスに長期留学後、インハウス通訳者として数社に勤務。現在は、フリーランス通翻訳者として活躍中。若手通訳有望株の一人!

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