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通訳の卵たち

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

数週間前にこのブログで書いたのは、約10人の大学生と国際シンポジウムの同通をした話。今回もそれに似たお話。でも今度は実際の通訳ではなく、通訳講座のお話です。また夏には渡米してしまう私ですが、それまでの数ヶ月間(つまり大学の前期)、母校である大学の通訳入門講座を担当することになりました。本日、その1日目を終えてきたところです。これまで専門分野であるアメリカ研究を教えたことはありますが、通訳の授業を担当するのは初めてで、「いったい、学生は集まるのだろうか?」と不安な気持ちを抱えて学校へ向かいました。しかも数日前には教室に誰もいない、という夢まで見て……

しかしふたを開けてみれば、66人しか入らない教室に110人を超す学生が大集結。講義の授業であれば、いつも少しくらい人数が多くても許すのですが、通訳講座では機材の関係上、既定人数以上に履修を許可することは出来ません。だからと言って、じゃんけんをさせるのもアカデミックな雰囲気には反する、ということで、とりあえず全員を対象に、授業の中身、宿題、目的などを説明することにしました。大学の授業とはいえ、通訳者になるための本格的な訓練を行うクラス。もちろん一般の通訳学校よりもコミュニケーション能力の向上など、「通訳」だけの技術以外に多くの時間を割きますが、単語を覚えたり、予習をしたり、かなり厳しい授業です。毎週の単語テスト、2回の論文提出、期末試験などの話をするうちに、1人、2人と後ろのドアから人が抜けて行きました。最終的に残ったのは約80名。80名であれば、学期中に履修中止をする学生もいますから、十分に対応可能です。

またある意味ではやや意気消沈させてしまう内容にも耐えた学生は、それなりのやる気もある学生。同じ単位数を取得したいだけなら、もう少し勉強量の少ない授業もあるはずです。そこで敢えて通訳講座にチャレンジしてくれるわけですから、来週からはその気持ちに応える、質の高い授業を提供しなければなりません。そしてempowermentとmotivatingをキーワードに、学生のやる気を促進するような授業を目指します。

それにしても数年前に自分が通訳入門の授業を取った時が思い起こされます。本当は2年生以上の履修が認められている授業でしたが、1年生で聴講しました。それ以来毎学期、複数のクラスを取り、いつの間にか自分が教える立場に。もしかすると、今日目の前にいた学生から、将来一緒にブースに入る仲間が生まれるかも知れません。また学生にとって私は「hubbub from the hub先生」であり、「先生」と呼ばれる対象になったことについて、その責務の重大さを再認識する1日でした。

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Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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