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インターネットと信頼性

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

インターネットによって恩恵を受けているビジネスは色々ありますが、通訳や翻訳もそのうちの1つでしょう。言語のスペシャリストである通訳者や翻訳者も、訳すテーマに関しては素人同然の場合がほとんどです。そんな時、インターネットは非常に強力な道具として情報を提供してくれます。通訳であれば事前勉強の道具として、翻訳であれば適当な訳語の検索や、背景知識のリサーチなどに大きな力を発揮します。2005年9月の調査では、1日平均で7400万人のアメリカ人がEメールを使用するのに対し、5900万人が検索エンジンを使用していると言います。その格差はどんどんと縮まっているとか。瞬時に様々な情報が手に入るインターネットですが、信憑性の低い情報が非常に多いのが短所です。

ボストンでは大学生にアメリカ研究を教えていますが、学生の書くレポートに、非常に多くのインターネットから引用された情報が見受けられます。国勢調査結果や様々な専門論文をオンラインで見つけて引用するのは構いませんが、個人が運営するサイトなどで見つけた情報が引用され、それを中心にレポートが書かれているのを見ると、ある種の危機感を感じます。

もちろん質の高いサイトも数多くありますが、学術論文や文献が、数多くの専門家のチェックを受けた上で出版されるのに対し(peer reviewといいます)、多くの個人のサイトはそのような情報の確認が行われないままに、一般の目に届いてしまいます。その情報を鵜呑みにしてしまうのは危ないと感じます。例えば.govや.orgで終わるサイトの情報は、.comのサイトで見つけられる情報よりも信憑性が高い、といった風に、自分で基準を設けることも可能です。情報過多の時代に、いかに質の高い情報を見つけるかが、大きなテーマだと思います。

そしてもう1つ。インターネット上にある情報を、そのまま書き写してレポートとして提出する例もあります。もちろんその様な学生はすぐにF(不可)の評価がつけられますが、ネット上の情報はその所有権がはっきりしないため、「盗作してもばれないだろう」と言う心理が働くようです。本当は検索エンジンに数単語引用すると、すぐにばれるのですが・・・

逆にオンラインの情報を有効に活用している論文を受け取ると、非常に嬉しくなります。12月も中旬を迎え、沢山のレポートを採点する時期になりました… 今回はどのようなレポートが届くのでしょうか?

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記事を書いた人

Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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