BLOG&NEWS

つなわたりな生活 その2

the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

さて、私の急なオンサイトの仕事発生で、「にわかカギっ子」に変身することとなった息子。
その日の朝になって、彼には私の携帯電話に自分で電話をかけることすら経験させていなかったことに気付き、朝ごはんの後に慌てて練習させるという一幕もあり、外から見えないように、でも無くさないように、チェーン付きの家のカギをランドセルの中にこっそり仕込んだり、学童クラブへの連絡帳に「もしも一緒に帰る子がいなければ、5時帰りを6時帰りに変更して私の携帯電話にご連絡下さい」とお願いを書き込んだりして、慌しく登校させた。こういうことは親も慣れていないと、どうも段取りが悪い。
在宅で仕事をする生活パターンに安住していると、オンサイトのときはその日に限って熱を出すなどという不測の事態が発生しないかと、ビクビクする。在宅なら保育園や学校から「熱が出ました」「ケガをしました」というお迎え要請コールがかかっても、作業の手をちょっと止めて迎えに行くことは可能なので、そんなにパニックにはならない。ただし、病院に行ったり具合の悪い子の様子を見ながらだったりすると作業時間が大幅に削がれ、夫の帰宅を待っての作業再開になるので夜更かし必至、キツくはある。
しかしオンサイトでの仕事は、不測の事態に対応不可。特にうちの息子のように保育園時代はクラスで病欠が多いナンバー1の地位をもう1人の男の子と争っているような子どもでは、とてもじゃないが自信をもってオンサイトの仕事をお受けできない。小学生になってさすがに熱を出す頻度は激減したが、それでも前回述べたようにたまに出る時に限って具合が悪くなる。また、保育園なら延長保育で7時まで預かってくれるが、学童保育は最終で6時まで。冬になれば5時でも真っ暗、低学年の子どもを1人で帰宅させたい状況ではない。そんなこんなで私は今回のようなたった2日間でも、登校させてから無事に帰宅するまで、実はずっと心の中でヒヤヒヤしている。
さて、カギっ子デーのその日、5時近くなると私は仕事中にそわそわし始める。携帯電話をPCの横に置き、横目でチラチラ見ながら、いつ息子から「帰ったよ」の電話がかかってくるかと気になる。そこへ、今回の仕事を一緒にしている仲間の翻訳者さんが、仕事の進行について相談するために席に立ち寄ってくださった。お蔭で頭がまた仕事集中モードに戻って助かった。でなければ、ずーっと上の空で電話を待つことになったかもしれない。
打ち合わせが済んでPCに向き直った時に、マナーモードにした携帯が振動する。一瞬ドキッとする。なぜって、普段は在宅での仕事なので、仕事の電話も自宅の電話にかかる。携帯電話が鳴るのは何か緊急の時という意識があるので、息子からの電話だろうということを瞬間的に失念していた。待ち受けに「自宅」と出ているのを見てようやく、ああ息子だ、と気付く。時間は5時27分だった。ん? いつもより自宅に着くのが少し遅くないか? ま、いいか。とにかく無事に家に入りカギも閉めたと言う。こちらの心配をよそに、「ママ、今からシャワーを浴びたいんだけど、いい?」などと言っている。
少し後になって、本当はその日預かってもらうはずだった、熱を出しちゃったお友だちのママからメールが入る。「○○君、無事に帰ったみたいね。」彼女の家は通学路の途中にあるので様子を見ていてくれたらしい。熱が下がってきたお友だちも心配して、息子が自宅に着く頃を見計らって、「だいじょうぶ?」と電話もしてくれたそうだ。う〜ん、心強い! 持つべきものは、遠くの親戚より近くの友人!
7時半少し前に帰宅すると、玄関にはちゃんとカギが二重にかかっており、息子はほんとにシャワーを浴びてさっぱりした様子で寝巻きに着替え、叱られないのを良いことにテレビを見放題に見てご機嫌だった。ランドセルは廊下の真ん中に放り出してあるし、部屋中何だか異様に散らかっているけど、初めての経験を無事にやり終えたことを褒めてやった。
こうして無事にピンチを切り抜け、あとはほぼ予定通りにことが運んだ。最終日に残業が入ってしまい、7時半までに帰れるはずが8時半近くになり、空手のお稽古場に直行で迎えに行ったことを除けば。
息子が少し自立してくれたこと、具合が悪くならずにいてくれたこと、近くに優しいお友達や助けてくれる方がいること、子育て中であることを理解していただき、早めの帰宅を認めてくださるクライアントさん、すべてに感謝したい。

Written by

記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

END