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第131回 星のようなひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

ふとしたことがきっかけで、素晴らしい人に偶然出会うことがあります。

晴れ晴れしない日々の中で、自分の世界を照らしてくれるような人に出会ったときに思い出す詩があります。

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Ebb Tide
Sara Teasdale

When the long day goes by
And I do not see your face,
The old wild, restless sorrow
Steals from its hiding place.

My day is barren and broken,
Bereft of light and song,
A sea beach bleak and windy
That moans the whole day long.

To the empty beach at ebb tide,
Bare with its rocks and scars,
Come back like the sea with singing,
And light of a million stars.

*****

引き潮
サラ・ティーズデイル

長い一日が過ぎ
君に会えないと
なじみの行き場のない激しい悲しみを
その隠れ家から引っ張り出してくる

わたしの一日は 空っぽでぼろぼろ
光りも歌もなく
ものさびしい浜辺には風が吹く
風は一日中唸っている

引き潮で空っぽの砂浜に
岩や波が残した痕が剥き出しになる
波音のように戻ってくるのは
幾千万の星々 その光

*****

寂しい浜辺の風景。そのネガティブワードの連続に、暗い気持ちになりかけたところで、最後の最後に、幾千万の星の光が降り注ぐ劇的な展開!

The old wild, restless sorrow
Steals from its hiding place.
なじみの行き場のない激しい悲しみを
その隠れ家から引っ張り出してくる

夕方に浜辺を歩いていると、寂しい一日の終わりに拍車をかけるように、悲しみがひたひたと迫ってきます。その悲しみとは、restless sorrow「行き場のない悲しみ」。

いろいろとうまくいかないことがあって悶々とした気持ちを抱えていると、以前にも感じたような苦い気持ちが押し寄せてきます。どうしたらいいかわからなくなってしまう、その悲しみは、restless sorrow「行き場のない悲しみ」で、心の奥に隠しておいたはずなのに、寂しい気持ちに誘われるように、滲み出て来てしまうものです。

To the empty beach at ebb tide,
Bare with its rocks and scars,
引き潮で空っぽの砂浜に
岩や波が残した痕が剥き出しになる

毎日が無味乾燥に思えたとき、心の空白を埋められずにいるとき、まるで潮が引いて行ったあとの砂浜のように、ごつごつした岩のような剥き出しの心が露わになります。決して平坦で滑らかでない感情。そこには多くのscars「傷痕」があって、寂しさを抱えたときには一層ズキズキと痛むものです。

Come back like the sea with singing,
And light of a million stars.
波音のように戻ってくるのは
幾千万の星々 その光

そんな時に、自分の心にかつて響いていたような言葉をもつ人が現れたりします。砂浜にとっての波音のように、心に響く言葉が戻ってくる感覚。他の人にはどんなに説明しても分かってもらえないことが、その人には何も説明しなくてもすぐに理解してもらえる感覚。

こうした感覚は、light of a million stars「幾千万の星々の光」のように心を照らしてくれます。

分かり合える人と出会えることで、星の光が降り注ぐように、気持ちが明るくなる。そう明示的に詩に描かれているわけではないのですが、何故か自分としては、そんな風に読めてしまうんです。引き潮で露わになった自分のゴツゴツした岩のような心。波音が響くように心に響きあう言葉を交わせる人。そんな素晴らしい人に出会えた時の感慨。そんなことを考えてしまうんです。

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今回の訳のポイント

この詩は、引き潮で露わになった浜を、穴がぽっかりと空いてしまった心になぞらえて読むことができます。何かを失ってしまったという絶望でもなく、ふとした瞬間に剥き出しになってしまう心の傷痕。

離別や死別など人生で経験するものであるので、ある意味、それはold「なじみの」ものですが、無くなってしまったものは取り戻せないので、restless sorrow「行き場のない悲しみ」が募ってしまいます。

このrestlessという言葉は、悩みを抱えて生きるわたしたちの心を形容する最高の言葉であると思います。「落ち着ける先がない」という意味では、波はまさにrestless「寄せては返す」もので、一定でありません。心も、常に揺れて落ち着くことが無いですし、それを理解してくれる人がいなければ、その思いはrestless「行き場のない」ものになってしまいます。

潮が引いた後の砂浜のように心にぽっかりと穴が空いたときに、ふと自分を理解してくれるひとが現れたら、それが一人であっても幾千万の星々に思えるものなのです。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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