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第147回 本好きなひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

本がいかに素晴らしいかということを、本に興味がない人に理解してもらうのは、算数嫌いの子供に算数好きになってもらおうとするのと同じくらい難しいのではないかと思います。

本を読むことはどんなに素晴らしい体験か。それを説明するには、原稿用紙が何枚あっても足りないのですが、わずか8行にまとめてくれている詩があります。

本好きならば、頷きすぎて頭が首から落っこちてしまうと思うので、気をつけてください!

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There is no Frigate like a Book
Emily Dickinson

There is no Frigate like a Book
To take us Lands away
Nor any Coursers like a Page
Of prancing Poetry –
This Traverse may the poorest take
Without oppress of Toll –
How frugal is the Chariot
That bears the Human Soul –

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軍艦も本ほどではない
エミリー・ディキンソン

軍艦も本ほどではない
陸地からはるか遠くへ連れて行ってくれる
どんな駿馬もページをめくるほどでない
詩以上に心弾む歩みはない
どんなに貧しい者も乗り出せる旅路だ
運賃を気にする必要もない
この馬車はいたって簡素だけれど
ひとの魂を伝えてくれる

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どうですか!本がいかに素晴らしいものかというのが、完璧に説明されていますよね。本とはスケールが全く異なるものと比べているのですが、圧倒的納得感!

There is no Frigate like a Book
To take us Lands away
軍艦も本ほどではない
陸地からはるか遠くへ連れて行ってくれる

軍艦は、確かに、人を乗せて大海原を越えて、遠くまで連れて行ってくれます。しかし、本を読めば、地の底から銀河の果てまで、信じられない土地へと旅立つことができます。

400年前、人類で初めて月を望遠鏡で見たガリレオ・ガリレイ。彼が日々感じた興奮は、彼自身が書き残した本がなければ分かりません。1609年7月に初めて望遠鏡を作ってから、数ヶ月の間に自ら改良を重ねて、月や銀河、木星の衛星を見るに至った経緯は、翌年1610年の3月には自ら本としてまとめ出版してくれたからこそ、知りえるのです。

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Nor any Coursers like a Page
Of prancing Poetry –
どんな駿馬もページをめくるほどでない
詩以上に心弾む歩みはない

私自身、本を読むのは早いほうなのですが、本の読み進め方にはいろいろなパターンがあるなと思います。知りたい答えを求めてどんどんページをめくることもあれば、ひとつひとつの言葉を嚙みしめようとじっくり進むこともあり、また、記憶に刷り込むように読み直したい箇所へ何度も戻ることもあります。

この詩では、馬という移動手段に本を喩えていますが、読書という旅路もひと通りではありません。一直線に目的地へ移動するタクシー型の読書もあれば、目的地以外にも停まるバス型の読書もあり、そして、プロセスを味わうかのように寄り道しながらの徒歩型の読書もあるのだなと感じます。

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This Traverse may the poorest take
Without oppress of Toll –
どんなに貧しい者も乗り出せる旅路だ
運賃を気にする必要もない

本という世界は、文字という限界があると言われることもあります。実体験には到底及ばないと。しかし、考えてみると、長いようで短い人生の中で、人が体験できる物事の量には限りがあります。

書物は人類が築き上げた知恵の宝庫で、ありとあらゆる知識が詰まっているのです。世界や宇宙の多くのことを体験し知ろうとすると、お金はいくらあっても足りませんが、本であればそれが可能になるのです。

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How frugal is the Chariot
That bears the Human Soul –
この馬車はいたって簡素だけれど
ひとの魂を伝えてくれる

1000年前、紫式部が、清少納言が、人を愛する気持ちや、嫉妬や妬みや、生活の片隅に光る瞬間を書いたように、書物には人の魂が宿っているのです。

文字が書かれたり印字されたりしているに過ぎないし、巻物だったり冊子だったりでしかないのですが、それを通じて、人類の叡智を自分のものとすることができる。そんな素晴らしい宝物。それが本なのです!

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今回の訳のポイント

この詩は、読書というテーマだけで考えても、心が震えるのですが、もっとも心を揺さぶられるのは、最後のパートではないかと思います。

How frugal is the Chariot
That bears the Human Soul –
この馬車はいたって簡素だけれど
ひとの魂を伝えてくれる

書物は、ただの紙の束に過ぎませんが、何千年もの人類の営みが刻み込まれています。bear という単語は、コロケーションによっては「大切なものを運ぶ」「感情を抱く」という意味になりますが、まさに、人の知恵や思いを運ぶメディアとしての書物にふさわしい言葉ですよね。

わたしたちは、表情や仕草、そして言葉で思いを伝えるわけですが、心の底にある深い思いを、魂を、伝えるために言葉を磨いていたいなと思います。1000年後の誰かの心に響く言葉を。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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