ENGLISH LEARNING

第174回 夏の雨のような人に出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

夏の雨。

暑さが続いたとき、その熱を冷ますかのように降る雨。

同じように、仕事やプライベートで忙しく、熱を帯びた毎日の中で、心と頭を冷ましてくれるような人。

そんな人に出会ったときに思い出す詩があります。

*****

Rain In Summer
Henry Wadsworth Longfellow

How beautiful is the rain!
After the dust and heat,
In the broad and fiery street,
In the narrow lane,
How beautiful is the rain!

How it clatters along the roofs,
Like the tramp of hoofs
How it gushes and struggles out
From the throat of the overflowing spout!

Across the window-pane
It pours and pours;
And swift and wide,
With a muddy tide,
Like a river down the gutter roars
The rain, the welcome rain!

*****

夏の雨
ヘンリー・ワーズワース・ロングフェロー

雨って、なんて素敵なんだろう!
砂ぼこり舞い上がる 熱暑の後
燃え上がるような大通りも
狭い路地も
雨って、なんて素敵なんだろう!

屋根の上でバラバラと響く雨
馬が駆けていくように
勢いよく溢れ出す
吹き出し口を求めていたかのように

窓ガラスに横殴りに
降りしきる雨
あっという間に広がって
泥混じりの流れになって
雨はじゃーじゃー流れてゆく
雨 待望の雨!

*****

どうですか。夏の雨のように熱を冷ましてくれる人のこと、思い浮かびませんか。

How beautiful is the rain!
After the dust and heat,
In the broad and fiery street,
In the narrow lane,
How beautiful is the rain!
雨って、なんて素敵なんだろう!
砂ぼこり舞い上がる 熱暑の後
燃え上がるような大通りも
狭い路地も
雨って、なんて素敵なんだろう!

暮らしや日々が、埃っぽく感じるとき。生活の風通しが悪くて、忙しなさの割に手ごたえがなく、潤いに欠けるとき。そんなときに訪れる雨のような人。

暑い日の灼ける路地のように、頭も体も心もフル回転で熱を帯びていて、早く冷まさないとどうにかなってしまいそうなとき、雨のように熱を冷ましてくれる人。

あれこれ考えすぎていたときに、「うん、いいんじゃない?」と、あっさりゴーサインを出してくれたり、どうやってお願いしようか考えていたときに、「いいよー」と、あっさり引き受けてくれたり。

わたしたちは、ときに、簡単なことを難しく考えすぎて、本来シンプルだったことを複雑にしすぎてしまうことがあります。そうやって、頭も心もガサガサに乾いてしまったとき、雨のように現れる人。

*****

How it clatters along the roofs,
Like the tramp of hoofs
屋根の上でバラバラと響く雨
馬が駆けていくように

しっとりと世界を濡らす雨も良いですが、馬が駆けるようにバラバラと訪れる雨も良いですよね。熱を冷ますなら、一気に。

時を重ねて少しずつ癒してくれる人もいれば、シンプルな言葉で目の前の問題の答えを、スパッと気づかせてくれる人もいます。

Like a river down the gutter roars
The rain, the welcome rain!
雨はじゃーじゃー流れてゆく
雨 待望の雨!

自分自身を納得させるために、いろいろと理由を積み重ねようと、頭がオーバーヒートしそうなときに、「いいと思う!」というひと言で、バシャーっと雨を降らせくれる。頭に散り積もった埃を洗い流してくれる。

雨のような人が、もし身近にいて熱を冷ましてくれたら、頭と心の夏も乗り越えられそうな気がしてきます。

*****

今回の訳のポイント

この詩、実はもっと長い詩なんですが、その冒頭が雨の情景を描いていて、夏の雨も良いものに思えてきます。何よりも、素敵なのは冒頭の一行。

How beautiful is the rain!
雨って、なんて素敵なんだろう!

雨が、美しく素敵なものと普段はなかなか思えないですが、これだけ堂々と宣言するのがいいですよね。

Beautiful という単語を「美しい」と訳さずに、その雰囲気を伝えるなら「素敵」となりますが、この一文を見て思ったんです。the rain「雨」のところに、身の回りの事物を入れたら、どんなに世界が美しく見えるだろうと。

「●●って、なんて素敵なんだろう」って言ってみるだけで、自分を取り巻く世界が美しく見えるかもしれない。そう考えるだけで、みるみるうちに心が潤うのを感じませんか。

 

【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END