INTERPRETATION

Vol.2 ソフィー・シモンさん 「 話したい、という気持ちから 」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

ソフィー・シモンさん
Sophie Simon
University of Economics and Management(フランス)博士課程2年時に来日、エンジニアリング会社にて半年間のインターンシップを経験。アルジェリア事業部に所属、翻訳業務に携わる。同企業からのオファーを受け、博士課程修了後再来日、社内翻訳通訳者として勤務。22003年3月より、フリーランス翻訳者として活動を始める。現在、英仏/仏英/日英/日仏翻訳者として、幅広い分野で活躍中。

語学に興味を持ったきっかけは?
フランスの学校では、外国語として英語、ドイツ語、スペイン語の中から2言語選択することになっています。私自身、バカロレアの専門が外国語だったので、プラスもう1言語勉強する必要がありました。ドイツ語は難しそうだから日本語にしてみるかなと、軽い気持ちで日本語を選択しました。実際始めてみたら、そのおもしろさにどんどん惹かれていったのですが。
日本人大学生が我が家にホームスティしていた時期があり、生の日本語に触れる機会があったのはラッキーでした。彼女とは現在も交流が続いているんですよ。

どのようにして日本語を勉強しましたか?
修士、博士課程では日本事情に関する研究を行い、ホームスティしていた日本人には日本語で手紙を書いたり、自分で漢字を勉強したり……。今でも勉強は続けていますが、日本語学習に終わりはありませんね!

日本でインターンシップを経験されたと伺いましたが。
横浜の企業に派遣されたんですが、ある日突然「ソフィー、翻訳もやってみるか?」と言われたんです。何だか面白そうだなと思って、やってみます! と即答しました。技術文書、プレゼン資料等の翻訳をメインに担当し、その後正社員にならないかと言われた時は、本当に嬉しかったです。一旦フランスに戻り、卒業してから再び日本に来ました。

それまでは、翻訳者になろうとは思っていませんでしたか?
通訳者になりたかったんです。フランスではラテン語も勉強するので、ラテン語・フランス語・スペイン語で何かできればいいなと思っていました。とにかく人と話すことが好きなので、絶対私は通訳者に向いている! と思っていたんですよ。当時は政治にも興味があったので、大学卒業後に通訳学校に行こうと思っていたところ、どんどん時間が無くなっていったというか……(笑)。インターン当時、特に翻訳者になりたいとは思っていなかったんですが、やってみたら面白くて、そのまま来たという感じですね。

フリーになろうと思ったきっかけは?
仕事自体は非常に面白かったんですが、外国人の女性として日本企業で働くのは大変だと感じることがありました。色んな事を経験したい! と思っていても、なかなかチャンスが与えられないこともありました。まだ若かったので、エネルギーが有り余っていたんです。もっと自由に仕事がしたいとも考えていました。翻訳を突き詰めていきたいという気持ちもあったので、思い切ってフリーランスになってみるかなと思ったんです。うまくいかなければ、また別の企業で働くこともできるし、一か八かやってみよう! と。今振り返ってみると、当時自分にどのくらいスキルがあるか、仕事がどのくらいあるのかなど、全てが未知数でしたが。

実際フリーになってみて、いかがですか?
まだ1年と少しですが、とても充実しています。仕事がある時だけコンピュータをオンにすればいいし、何より時間を自由に使えることが嬉しいです。金曜の夜は依頼が殺到するので、週末働くことも多いのですが。一番多い仕事は、日英ですが、英仏、仏英、日仏のお仕事もたくさん頂いています。言語を習得した順番が、フランス語→英語→日本語ですので、仏英・英仏翻訳は一番安心してできます。

楽しかったお仕事は?
どの仕事も楽しんでやらせて頂いていますが、特にテレビ関係は好きです。先日、海外の有名スポーツ選手が出演するCMシナリオ翻訳のお仕事を頂いたんです。コピーライティング的な要素も必要とされ、翻訳しながら顧客の購買意欲アップにつながるような文章を考えていくのはエキサイティングですね。

もともと語学の才能があるのでは?
才能というより、「好き」という気持ちだと思います。10才で英語の勉強を始め、その翌年参加したサマーキャンプで多くのイギリス人に会いました。全くといっていい程英語が話せなかったにも関わらず、身振り手振りでがんばって話したことを覚えています。とにかく、コミュニケーションが取りたかった! 話すことはもともと好きですが、文化や国を越えて、いろんな人と話してみたいと思ったんです。才能じゃないんです。「話したい」という気持ちが大切なんだと思います。

ご趣味は?
以前はショッピングが趣味でしたが、今は子供が小さいのでなかなかゆっくり買い物もできません。
映画や読書が好きです。日本人作家では、村上春樹、吉本ばなな、谷崎潤一郎をよく読みます。まだフランス語でしか読んだことがないので、今度是非日本語に挑戦してみたいと思っています。

しばらくは日本でお仕事をされる予定ですか?
よく主人と話すんです。彼はインド人で、私はフランス人、住まいは日本。何だかおもしろいねって(笑)。アメリカは何となく気がすすまないし、ヨーロッパにはまだ戻りたくない、オーストラリアは遠い……。やっぱり日本がいいね、ということで落ち着くのですが。しばらくは日本で子育てするつもりでいます。

今後もずっと翻訳を?
もっと翻訳スキルを伸ばしていきたいと思っています。まだまだ時間はたくさんありますものね。今は夢でしかありませんが、日本人作家の本をフランス語に翻訳できれば最高に幸せです。60才ぐらいになったら実現可能でしょうか(笑)?

【編集後記】

今回は、ソフィーさん宅でのインタビューとなりました。かわいいマニちゃんとジャン・レノ似のソフィーさんのお父様に囲まれ、とっても楽しいひとときでした。いつもマニちゃんにはフランス語と英語で話しているそうで、「名坂さん、日本語で話してあげてください!」とソフィーさん。だっこした瞬間に泣かせてしまい、10秒で会話は終了してしまいました……。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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