INTERPRETATION

Vol.10 高村亜里さん「お気に召すまま」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
高村亜里さん Ari Takamura
日本女子大学家政学部家政経済学科卒業後、広告代理店入社。イタリア留学を経て通訳翻訳活動を開始。現在は、映像翻訳を中心に、フリーランスイタリア語通訳者として幅広い分野で活躍中。

なぜイタリア語だったんですか?
必ず聞かれるんですが、実は特にきっかけもないんですよ。学校の成績は、常に10段階の5あたりをさまよっていたので、勉強が好きなわけでもありませんでしたし。「話す」ことは昔から得意で、言葉自体には何かしら興味があったのかもしれません。
ベルバラ世代でして、大学では第二外国語でフランス語を専攻したものの、すぐに挫折しました(笑)。就職後、何かお稽古事でもしたいなと思って始めたのが、イタリア語だったんです。父がイタリアで仕事をしていたこともあり、我が家で「外国」といえばイタリアだったんです。

どのようにを勉強を?
イタリア語会話学校に通いました。父の影響で、数字や簡単な言葉は理解できたので、無謀にも上のクラスからスタートしたんです。未だに基礎文法用語が理解できていないのはそのせいでしょうか(笑)? 大学卒業後就職した広告代理店では、語学を使うこともなく、イタリア語はあくまでも趣味として続けていました。もともと勉強が好きではないため、複雑な文法が出てくる度に学校から遠のいてしまって、半年行っては半年休んでの繰り返しでした。いい生徒ではありませんね。

イタリア留学を決意したのは?
あまりにいい加減に勉強していたため、何種類もある過去形の使い分けが分からなくなってしまったんですよ。「これはさすがにダメだ。イタリアに行って体で理解するしかない!」と、留学することにしました。日常会話は何とかなったんですが、もっと話せるようになりたかったんです。イタリアでは、今まで生きてきた中で一番勉強しました。この時点では、まさか自分が通訳になるとは思ってもみませんでしたが。

帰国後、すぐに通訳のお仕事を始められたのですか?
何らかの形でイタリア語に関わる仕事ができればとは思っていたところ、CS放送の映像翻訳のお仕事を頂いたんです。ちょうど試験放送の頃で、プロを雇うお金はないけれど誰かいないかと探していた時だったようで、ラッキーでした。その後も映像翻訳を続けようかと思ったんですが、仕事量も少ないと聞いていたので、翻訳をやってみようかなとエージェントに登録に行きました。なぜか通訳の仕事を紹介され、その後もどんどんお仕事を頂くようになって、今日まできてしまいました。

映像翻訳の面白さは?
通訳と似ていると思うんです。特に、言葉をキャッチする意味において。スピーカーの癖やトーンを聞いて、どういう表現を使うとしっくりくるか考える時が一番わくわくする瞬間です。ぴったりはまったときは最高です。下訳、ナレーション、字幕、オーバーボイス、それぞれ文字数に応じて表現を変えないといけないこともあります。「短い言葉で、いかに表現するか」を学ぶことができるので、通訳トレーニングにもなります。

印象に残ったお仕事は?
『ニューシネマパラダイス』15周年記念DVD発売にあたり、翻訳を担当させて頂きました。イタリア語を勉強し始めた頃、日本で新しいイタリア映画を見られる機会はほとんどなく、『ニューシネマパラダイス』はリアルタイムで見ることができた数少ないイタリア映画の一つでした。まさかそのDVD制作に、自分が関わらせて頂けるとは思っていなかったので、とても感慨深かったです。

高村さんの強みは?
日本語には自信があります。小さい頃から親に厳しく日本語を注意されてきたんですよ。昔は嫌で仕方なかったんですが、今となってはありがたいです。
耳はいい方だと思います。そのお陰で、地方に行くとイントネーションがうつってしまうのですが……。例えば街頭インタビューでは、相当訛りの強い言葉を話す人がいます。何度か聞けば何を言っているか判断できるので、同僚が困っている時に呼ばれることがあります(笑)。

一週間のスケジュールは?
夏はイタリアもバカンスなので、通訳の仕事はほとんどありません。代わりに映像翻訳の仕事が結構入っています。時間がある時はスポーツクラブに行って、運動するようにしています。

映像翻訳を目指している方へのメッセージをお願いします。
ヒアリング力が重要です。必ずしも台本があるとは限りませんからね。外国語を細部のニュアンスまで理解する高い能力はもちろん必要ですが、日本語の表現能力も重要です。母国語をなおざりにするようではプロとしての資質を問われると思うので、状況にあった日本語を用いるよう、常に心がけています。なんてちょっとえらそうなんですが(笑)。イタリア語で映像翻訳を勉強できる場所は皆無だと思うので、どなたか師匠を見つけて、その人につくしかないかもしれませんね。下訳からのスタートですが、夢を諦めずにがんばってください!

高村さんの7つ道具。

【編集後記】

リズム感あふれる高村さんのトークにただただ圧倒されっぱなしの1時間でした! イタリア語の通訳者さんは、皆さん本当に前向きで明るくて、お仕事を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。たくさんのエネルギーをありがとうございました!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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