INTERPRETATION

Vol. 81 ブランクを経て再び同時通訳に

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】関口裕子さん

高校を卒業するまでの13年間をアメリカで過ごし、日本語と英語を日常的に使用する環境で育つ。日本の大学を卒業後、外資系の金融会社で働く。退職してサイマルアカデミーを卒業し、フリーランスの通訳者となる。キャリア途中、10年程休み、再びフリーランスの通訳者として活躍中。

 

工藤:今日はフリーランス通訳者の関口裕子さんがハイキャリアインタビューを受けていただきました。関口さんとの最初の出会いはずいぶん昔に遡ります。本日はよろしくお願いいたします。

 

関口:本当に月日の流れるのは早いですね。

工藤:昔のことですがまるで昨日のように覚えています。関口さんは当時からとても明るくて、前向きでいろんな仕事にチャレンジされていましたね。改めて通訳者を目指すきっかけをお伺いしたいのですが、関口さんは幼少期から長期間アメリカで過ごされていたとお聞きしました。

 

関口:はい。父の海外転勤で合計3回アメリカに行きました。最初は私がまだ2歳の時です。その後高校卒業するまでの13年間、生活の拠点はアメリカでした。

 

工藤:物心ついたときから自然と英語をお話になっていたということですね。家庭の中では英語、日本語どちらでしたか?

 

関口:両親の教育方針もあり家庭の中では英語は使用禁止でした。学校では英語、家庭内では日本語という風に使い分けていました。また小学生に進学したと同時に、毎週土曜日に現地の日本語学校に通っていました。実は日本での学校教育はほとんど受けていないのですが、短期間ではありますが途中帰国したタイミングで、日本の学校に通ったこともあります。日本の友達もたくさんできて楽しく通っていました。

 

工藤:日本の大学に進学されていますよね?この時既に将来は通訳者を目指そうと考えていたのですか?

 

関口:いえ、まだ大学生の時は何をやりたいかはっきりした目標はありませんでした。大学に入学してすぐ、日本語テストを受けたのですが、もう少し日本語のレベルアップをした方がいいという結果だったんです。当時は日本語より英語が得意でした。日本語力を強化するコースを受講し、同時に日本人の友達も増え、自然と日本語力もレベルアップしていきました。

 

工藤:大学生から日本語を強化するのはとても大変だったと想像します。その他に帰国後ご苦労されたことはありますか?

 

関口:苦労というほどではないのですが、最初はアメリカの方が日本に比べてなじみやすく、生活のしやすさは感じていました。しかし私のアイデンティティーは日本人なので、今となっては日本の方が合っていると感じています。長い期間海外で過ごした経験と、日本人としての経験を合わせて今の私が成り立っています。

 

工藤:通訳者を目指そうと思われたのは、大学卒業された後ですか?

 

関口:社会人になって少ししてからです。まず新卒で外資系金融会社に入社しました。英語ができるということで、通訳者として駆り出されることが、稀ですが、ありました。その時外国人の英語はすべて理解できるし、日本語も理解できるのに、思うように適切な言葉に置き換えるのが大変でした。きちんと通訳ができればいいのにと思い、会社を退職し本格的にサイマルアカデミーに通うことにしました。

 

工藤:最初から仕事を辞めて通訳学校に通われたんですね。会社員をしながら通訳学校に通って、徐々に通訳の仕事をスタートされる方が多いのですが、行動力があるというか、大胆ですね。

 

関口:私の性格だと思いますが、何事も中途半端になるのが嫌なのです。社会人として自分自身が成長できて、やりがいを感じられる仕事を見つけたいと考えるようになりました。結果的に自分の英語力を生かして、プロフェッショナルな技術を身に着けようと決心しました。確かに会社に通いながら通訳者を目指すこともできたかも知れませんが、仕事と通訳学校を両立し完璧に宿題もこなすのはスケジュール的に厳しかったかも知れません。今考えれば大胆な決断だったと思いますが、結果的にはいい選択でした。

 

工藤:最初はどんな仕事をされたのでしょうか?

 

関口:業種はいろいろですが、最初は小規模の会議が多く、だんだんとリピートでお声をかけていただけるようになり、様々な会議が増えました。中には緊張するのもありました。通訳学校での勉強はかなりハードでしたが、クラスの仲間同士お互いに励ましあい、サポートし合ったからこそ続けることができました。途中辞めていく人も多かったのですが、私は素晴らしい先生との出会い、そして始めたことは最後までやり抜きたい性格なので、何とか卒業することができました。授業では緊張感を持って勉強し、授業以外でもニュース番組のシャドーイングや、英字新聞を音読しました。

 

工藤:学校を卒業してすぐにフリーランスになるのも、勇気のいることだと思います。学校卒業後はどのようにスキルアップされたのでしょうか?

 

関口:振り返ってみると、プレッシャーを感じながら翌日の仕事の準備をすることが良かったのかなと思っています。限られた時間の中で準備をすることはかなり勉強になりました。ぎりぎりまで自分にプレッシャーをかけて、最後までやろうという気持ちで一つ一つの仕事に臨んでいました。もちろんうまくいかないこともありました。今でも「今日はうまくいかなかった」と感じる日がありますが、少し時間をおくとまた通訳をやりたくなるから不思議ですね。

 

工藤:関口さんは、優雅な見かけとは違って、ガッツがある方だと思います。最初にお会いした時の印象は、自分の思っている気持ちをストレートに話し、明るく目がキラキラしていました。その後ご家庭の事情で10年ほどのブランクがあり、また通訳の仕事に復帰されました。ブランクの間はどのように過ごされていたんですか?

 

関口:完全に通訳の仕事から離れていましたが、英語にはいつも触れていました。CNNを見たり、英字新聞を読んだり、時々アメリカに行って昔住んでいた時の仲間と会っていました。

 

工藤:その期間に通訳者に戻りたいという気持ちはありましたか?

 

関口:いつかは復帰したいという気持ちがありました。

 

工藤:実は時々関口さんのことを思い出して、戻ってきてほしいと思っていました。他にも5年、10年のブランクを経て通訳者に復帰される方もいらっしゃいます。長い間テンナインのことを忘れずに、復帰のタイミングでまた声をかけていただくことに強い繋がりを感じて感謝しています。長いブランク後また通訳の仕事を始められた訳ですが、どんなお気持ちでしたか?

 

関口:ありがとうございます。久しぶりに現場に出てみると、ずいぶん通訳環境は変わっていました。まず会議では英語を喋れる人や理解できる人が増えていました。ですので、通訳者もより高いクオリティを求められていると思います。一度受けた仕事は全力で取り組んでいます。また最初からフリーランスとして復帰したのではなく、はじめは企業内通訳者の仕事に就きましたので、勉強するだけの時間的余裕もありました。心の中では自分に「精一杯挑戦しよう」と言い聞かせていました。身体が昔の感覚を覚えている部分もあったのですが、忘れてしまっていることもありましたので、通訳の機会が増えると同時に、徐々に昔の感覚が戻ってきた感じです。

 

工藤:最初に復帰されたいとご相談を受けた時に、関口さんがすごく不安を感じてらっしゃるのが伝わりました。私は「通訳の仕事は自転車と同じで、絶対に身体が覚えているからそんなに心配しないで。復帰すれば必ず感覚が戻ってきますよ」とお答えしたのを覚えています。

関口:工藤さんのアドバイスはまさに全部その通りでした。

 

工藤:ブランクを経て通訳者に復帰されたこと、そして企業内通訳者からフリーランスになられたこと、2つとも大きな決断だったと思います。今はフリーランスになられてよかったですか?

 

関口:去年までお世話になっていた社内通訳の環境はとても働きやすく、居心地が良かったので、実はフリーランスになることは全く考えていませんでした。たまたま工藤さんとランチした時に「もうそろそろフリーランスで独立してはどうですか?最初に会った時もフリーランスでしたよね」って言われました。そのお言葉を聞いて「なるほど」と思い、それから割とすぐに決断しました。確かにフリーランスは仕事が安定していません。すごく忙しい週もあれば、暇な週もあるなどスケジュール面は不安でした。しかしそこを乗り越えると徐々に仕事も安定し、安心して仕事に取り組むことができるようなりました。社内通訳とは違う楽しさや充実感がありますね。

 

工藤:関口さんは社内通訳のポジションを探される時も、安定や条件が軸ではなく、経験が積めるポジションを軸に探されていました。だからこそフリーランスになる決心もすぐにできたのかも知れません。フリーランスの仕事は1つの仕事で評価をいただき、それが2つ、4つと広がっていくので、安定するまでに一定の時間がかかります。リピートが増え、何度か経験して慣れていく仕事もあり、安定していきます。ところでプライベートで気を付けていることはありますか?

 

関口:まずは一発勝負のお仕事なので、体調管理は意識しています。食事もしっかり食べていますし、時間を見つけて定期的にジムでトレーニングしています。体を動かしている時は何も考えず、汗をかいてリフレッシュできるので次の仕事に向けて気持ちの切り替えができます。また友達に会って楽しい時間を過ごしたり、自然の中で過ごしたり、海が好きなので砂浜を散歩するのが好きです。色々な人とコミュニケーションをとることも知識になり、通訳をする上で役立っています。アメリカに住んでいた時の友達とは今でもZOOMで繋がっているんですよ。

 

工藤:素晴らしいですね。今までいろんな分野のお仕事をお願いしていますが、これからチャレンジしたい分野はありますか?

 

関口:まだ一つの分野には絞っていません。おかげさまで色々な分野のお仕事にお声をかけていただいているので、一つ一つクリアして自分の得意分野を見つけていきたいと思います。今やっている分野をもう少し深く掘り下げて、もっと好奇心が湧けばその分野をもっとやっていきたいですし、新たな分野も少しづつチャレンジしてみたいですね。やっぱり通訳という仕事が好きなんだと思います。集中して仕事をした後の解放感が特に好きです。

 

工藤:パートナーと組む時に気を付けていることはありますか?

 

関口:パートナーさんと組むときは、チームで相乗効果を発揮したいと考えています。メモの取り方や、交代時間の確認、途中で通訳が必要ない場合の対応などは事前に確認するようにしています。チームメンバー同士がリラックスしてできるような環境は作りたいと考えています。今まで組んだ方はどの方も素晴らしく、組みにくいと感じたことはありません。いつも協力しながらチームでクライアントに満足していただけるアウトプットを出したいと思っています。

 

工藤:関口さんはコミュニケーションの取り方が本当にお上手です。将来的に通訳学校の講師のお仕事など向いているのではと思いますが、いかがでしょうか?

 

関口:実は短期間ですが、通訳学校で担任の先生の代理で数回教えた経験があります。しかし私が通訳を教えるなんて今は全く考えられません。まずフリーランスとして自分の力を伸ばしたいと思います。

 

工藤:最後に通訳者を目指したいという方に是非アドバイスをお願いします。なかなかきっかけが掴めずに悩んでいる人も多いかと思います。

 

関口:もし思い悩んでいるのなら、後悔しないためにも一歩前に進んで実行してください。これは通訳だけではなく色々なことに共通していると思いますが、時間をかけて悩んで、結局やらなかったとしたら必ずいつか後悔する時が来ると思います。それから、短期ですぐに結果を求めるのではなく、長期目線で挑戦してください。勉強や経験はこれで終わりということはないと思います。必ず蓄積していきますので是非頑張ってください。

 

工藤:本日はどうもありがとうございました。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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