INTERPRETATION

「欧州の旅2」

木内裕也

Written from the mitten

 ベルギーでの学会を終えた後は、フランスの友人を訪ねに向かいました。その後ルーマニアで学会の予定があったので、フランスに荷物を置いて、ルーマニアへの往復をすることにしていました。ブリュッセルからアムステルダム経由でリヨンに向かい、リヨンに到着すると荷物はアムステルダムに取り残されたまま、というトラブルにも会いましたが、2年ぶりのリヨンを数日間楽しむことができました。

 フランスからルーマニアはかなりの距離があります。学会に出席するにはいくつかの方法がありました。1つ目は一番簡単な方法で、リヨンからブカレストまでの往復航空券を購入すること。2つ目はレンタカーを借りて、車で移動する方法。3つ目は鉄道を利用して往復する方法。ヨーロッパはドイツ、スイス、オーストリアなど観光客がよく向かう先の国々には行ったことがあったものの、ブルガリア、スロベニアなどの国には行ったことがありませんでした。せっかくルーマニアまで行くのですから、1つ目の移動手段で単純に往復するのはあまりにもったいない気がしました。しかしアメリカで何時間も車を運転するのは慣れていますから、2つ目の移動手段が次第に魅力的に感じられるようになりました。1日6時間程度だけ運転すれば、1週間弱でルーマニアに到着できます。そこで地図も購入して準備を整えていました。

 しかしよく考えてみると、車を運転している間は眠ることも、観光することも、休憩することもできません。公共交通機関なら移動時間中に睡眠をとることができますが、さすがに運転中にそれは無理です。ヨーロッパの鉄道を利用するときには安いチケットがありますが、今回のようにヨーロッパ中の色々な国を回る場合、必ずしもそのチケットを利用できるわけではありません。それでも高騰中のガソリン代や、レンタカーの経費を考えると、実は鉄道での移動がより安く、疲労もたまらないことがわかりました。そこでフランスに到着してから、急遽移動手段を自動車から鉄道に変更しました。その結果、夜中の移動もできましたし、移動と睡眠を同時に行ったり、車内で色々な人に出会うこともできました。

 移動1日目はフランスからスイスのチューリッヒまで。リヨンの駅を朝の電車で出発しました。途中、ジュネーブで電車の乗換えがありました。ジュネーブは1時間弱しか時間がありませんでしたが、約8年ぶりに向かい、とても懐かしい気がしました。ちょうど大きなサッカー大会を控えている時期でしたから、湖には巨大なサッカーボールが浮かんでいて、街中には様々なサインやポスターが出ていました。これはチューリッヒも同様。サッカー人気の低いアメリカとは違い、やはりヨーロッパでは街中が大会の前からサッカー色に染まっていました。

 チューリッヒでは今回の旅行で最大のミスを犯しました。というのもガイドブックによると私が訪れた時期はあまり旅行客がいないので、事前にホテルの予約を取る必要がないとの事。しかし実際には何かのイベントが行われており、どのホテルも満室。その結果、1時間以上も街中を歩き回って(観光をしながらですが)、やっと空室を見つけることができました。皮肉にも空室のあったホテルはガイドブックに乗っている格安ホテルで、「ガイドに載っているホテルに空室があるはずがない」との思い込みで最初から客室状況を尋ねもしなかったホテルでした。

 チューリッヒはドイツ語圏ですから、フランス語や英語が通じることが多いものの、ドイツ語しか話せない人も多くいます。ホテルの人に教えてもらったバーでは、地元の3人と1時間くらい話をしましたが、英語やフランス語を喋れる人は誰もいませんでした。私はドイツ語を話しませんから、相手側はドイツ語、こちらは英語とフランス語でコミュニケーションでした。結局伝えたいことの1割も伝わりませんでしたが、それでも4人でとても楽しく、にぎやかな1時間を過ごせたのがとても印象的でした。

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記事を書いた人

木内裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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