INTERPRETATION

いつ、何をやるか決めておく

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 私は現在、通訳・英語講師・執筆の三つをメインに仕事をしています。通訳業務と指導は現場に出かけていくことになりますが、家にいるときはパソコンとにらめっこしながらひたすら執筆をしたり、授業準備や通訳業務の勉強にあてたりしています。

 一日24時間という限られた時間の中で、どれだけ生産的に仕事をしていくかは私にとって永遠の課題です。このため、「時間管理術」「効率的な仕事の仕方」といった類の本を読んでは、使えそうな方法を取り入れ続けているところです。

 先日読んだ枝廣淳子氏の本で、集中力を一定に保ったまま息切れせずに翻訳を続けることが、ひいては高い質の訳文につながると出ていました。私自身、家で仕事をする際には、やはり途中でスタミナが切れないよう心がけることが大切だと思っています。

 しかし、家に一日中いるからといって、効率が高いとは限りません。自宅にいればセールスの電話や訪問も頻繁にありますし、周囲の耳障りな音も気になります。机からふと目を上げれば、部屋にほこりがたまっていることに気づき、台所の流しには洗い物が重なっています。夕食の下ごしらえもしなければ、いや、その前に食材の買い出しだ、と気がかりなことがどんどん出てくるわけです。

 これまで私は毎日「やることリスト」を作成し、リストに書きだした順番に沿って作業を進めてきました。しかし、一日のうちで集中力が高まる時間帯と、効率ががたんと落ちる時間帯があることに最近気づき、やり方を変えつつあります。具体的には、早朝の静かな時間に集中力を要する執筆活動をやっています。通訳学校の授業準備では自分で訳文を作る必要もありますので、そうした「頭で考える作業」も静かな時間帯に持ってくることにしたのです。この方法を取り入れたことにより、日中、とりわけ昼食後の眠気が襲う時間帯に文章を苦労してひねり出さずに済むようになりました。

 勉強にせよ、仕事にせよ、集中できる時間帯というのは人それぞれでしょう。自分がいつ、高い集中力を保てるかを把握し、その時に何ができるかをあらかじめ決めておくことが大切だと思います。

 (2009年5月25日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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