INTERPRETATION

むかしむかしあるところに・・・

上谷覚志

やりなおし!英語道場

といっても日本昔話が今週のテーマではありませんし、むかしむかしといっても15年くらい前の話です。今回は自分の英語遍歴の一部をご紹介しようと思います。通訳になる方のほとんどが昔から英語の成績がよかったり、幼い頃海外に行ったりとなるべくしてなった方が多い中、私はちょっと変り種だと思います。自分の昔話をすることで皆さんに自分でも頑張れば通訳になれるのではという希望を持っていただければと思い、あえてお話することにしました。本邦初公開です。

日本の大学で経済学を専攻し卒業し、アメリカの大学に一年間留学して帰ってくるまでは本当に普通の日本人英語でした。大学入試で英語が必要だったので、受験英語はそこそこできましたが、リスニングやスピーキングは受験に必要ない世代だったので、そういう練習もしたことがありませんでした。幸か不幸か周りに英語が話せる人が全くいなかったので、どこか受験英語ができればリスニングやスピーキングはちょこっとやったらすぐにできるようになると根拠のない信念を持っていたような気がします。

この何の根拠もない信念と海外で暮らしてみたいという漠然とした願望のため、大学卒業後アメリカに一年間編入することを決め、周りが就活に明け暮れているのを見ながら、私は一年間の生活費と学費を貯めるため、フリーターのような生活に明け暮れていました。

周りに自分のような生徒がいなかったので、ゼミの教授から何度も呼び出されて“君は一体人生をどう考えとるのかね???”と異星人を見るような目でとくとくと諭されました。確かに周りの友達は全員大手企業からの内定をもらっていたので、“新卒というメリットを捨てて、アメリカなんぞに行って何をするんだ。大学院に進学するのならまだしも一体何のために???”と心配というよりも気は確かかと言いたげな感じでした。再三呼び出されるので、たまたまカバンに入っていたインテリア雑誌のことを思い出し、“実はインテリアデザイナーの勉強がしたいんです”ととんでもない出まかせを言ってしまいました!英語の勉強がしたいなんていうと“そんな下らないことのために、君は就職しないのかね!”とまた話が長引くと思ったからでしたが、“インテリアデザイナー”という一言は経済学の教授にはかなりインパクトが強かったようで、おそらく教授の中で”本当にこの生徒は”異星人だ“と確信したらしく、それ以降教授の部屋に呼ばれ詰問されることはなくなりました。

そうこうして、ぎりぎりの単位取得で卒業、その夏に渡米。念願のアメリカ生活が始まると意気揚々と乗り込んだアメリカでしたが、最初の空港でアメリカの洗礼をうけることになりました。とにかく英語がわからないということに愕然としました。日本で小さな英会話学校に3ヶ月だけ通った時に聞いた英語とは全く違って聞こえました。到着便が遅れ、その夜はホテルを自分で手配しないといけなくなり、電話をかけるための札を小銭に替えることができず困っていたときに、たまたま空港にいた現地の日本人の人に助けられ、空港近くのモーテルまで連れて行ってもらい一晩を過ごしました。ベットの中で“教授にインテリアデザイナーになるという大嘘ついて、勢いで来てしまったけど、素直に就職した方がよかったのかも・・・”といきなり弱気になってしまいました。

これで“Live happily ever after” (おしまいおしまい)としたいところですが、苦難はこれを皮切りに怒涛のように押し寄せてきました。英語がわからない、言いたいことが言えないまま会話が進んでいく、当然授業も六割くらいわかったかどうかという状態がしばらく続きました。読み書きも人よりも何倍も時間がかかり大変でしたが、それ以上にやはりリスニングとスピーキングが本当に大きな課題でした。これまで練習したことがないわけですから、至極当然なことだったわけですが・・・。

アメリカに行って始めて、自分の発音やイントネーションがめちゃくちゃであるということを日本人の友達に指摘をされ、ショックを受けました。発音の勉強なんてしたこともありませんでしたし、日本語と英語の母音や子音にこれほど差異があるいうこともアメリカに行って始めて知ることとなりました。当時の自分の英語はかなりの日本人英語だったのです。それが一つの原因で自分の英語が通じないし、相手の言っていることがわからないんだということも徐々にわかってきました。

ではどうやって発音の勉強をしたのかを来週お話していきます。

Written by

記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

END