INTERPRETATION

私が学校を始めたワケ

上谷覚志

やりなおし!英語道場

本来なら前回の続きで、授業の中で気づいたことを今回も書こうと思っていたのですが、今回はなぜ自分で学校を立ち上げたのかを書くことにします。

今年五月から自分で講座を提供するようになり、現在2期目。あと3週で今期も終了になります。普段の通訳に加え、別の通訳学校でも週2回教え、普通ならこれでも十分大変なのに、Accent on Communicationを立ち上げ平日1日と土曜に自分の講座を提供するというかなり強引なことを始めてしまいました。

始めてみると教材作成や生徒募集や体験講座や営業や税務法務関係の処理に終われ、あっという間に12月を迎えるという感じです。もちろん自分1人で全て行ったわけではなくいろいろな人に助けられてここまできました。“教材作成”“生徒募集”“体験講座”“営業”と書くと一瞬ですが、“こんなことまで決めないといけないの?“といったことがどんどん出てきます。自分としてはもっと簡単にことが進んでくれると思っていたのですが、実際はそうもいきません。自分で始めておきながら、通訳だけやって、教材もコースも用意されている環境で教えるだけであればもっと楽なのに何でこんな面倒なこと始めてしまったんだろうと思うことも正直ありましたし、思ったように進まないときは落ち込むこともありました。

Accent on Communicationを立ち上げようと思ったそもそもの理由は“本当に力の付く学校がない”ということからでした。商業主義の英会話学校の“外国人講師と話すことが英語をマスターする唯一の方法で、読み書きは不要!”という謳い文句に疑問を感じていました。旅行やショッピングでの英語ならまだしも、ビジネスで使うとなると読み書きは必須ですし、決まり文句を覚えるだけで事足りるというわけでもありません。

英会話学校は関西弁で言うところの“ほんまもん”じゃないんですよね。大手の英会話学校の外国人講師と話をしても、レッスンプランも作らないし同じレッスンを繰り返すだけでファミレスの店員みたいだし、今流行りのマンツーマンの学校になると講師は準備もしないで“spontaneous”な授業を“flexibly”に提供することを売りにしていて、それって本当に授業なのかな?・・・って。授業って講師がきっちり準備をして“今日は〜をポイントにしよう”というところを決めて準備しておかないと、spontaneous and flexibleな授業なんてありえないと思うのです。

自分自身いろいろな形で英語を勉強してきましたが、結局1番効果的だったのが通訳訓練だったので、日本の通訳学校に一年間通ったときにいずれこういう学校で教えられたらいいだろうなと思っていました。それから翌年にオーストラリアの通訳コースに入り、2年後に帰国し、2年ほどしてひょんなことから通訳学校で講師をすることになり、それからすぐに教材作成とカリキュラム作成を任され、一人で全てを作る経験をさせてもらいました。通訳訓練自体は今でも有効な英語学習方法だと思っていますが、通訳学校に通っていたころから、今のレベルで国際会議で行われたスピーチを教材にして訓練することが果たしていいのかという疑問を持っていました。次の日から使えるような教材を最初から最後まで使用したらもっと実力がつくのに・・・という気持ちがどんどん強くなってきました。

それと通訳学校に入学するためには、かなりの英語力がないと入学できないというのも問題だと思っていました。サイトラのように自然な語順で英語を理解することは語学レベルとは関係なく使えるものだし、逆に早い段階からそういう理解の仕方をマスターすることは実は非常に大切だと思うのです。そういったことを実践している学校がもしあれば自分で学校を立ち上げようとは思わなかったでしょう。

以前、某テレビショッピング番組で美白の女王と言われている中島香里さんが“自分で納得する化粧品がないから自分で作ったんです!”とおっしゃっていましたが、自分がAccent on Communicationを立ち上げた理由は、これだけ英語を勉強したい人がたくさんいて、学校もたくさんあるのに、いい学校ありませんかって聞かれて〜がいいですよと勧められるところがないし、自分が教えたいと思うような学校もないので、それなら作ることにしたのです。もちろん今が完成形というわけではありませんし、やればやるほどやりたいことがいろいろ出てきて、面白いですね。

まだまだ規模も小さいのですが、生徒の方たちが休まず真面目に取り組まれているので、自分も頑張っていいものを提供しなくてはといういい刺激をもらっています。2期目に入り、1期目からいらっしゃる方はかなり力が付いてきて、もう社内通訳ならこなせるような方もでてきました。中にはすでに社内通訳をされている方も出てきてこれからが楽しみです。

これからは通訳を目指す方だけではなく、ビジネスで英語を使いたいという方にも来て頂き、通訳訓練をもっと多くの人に活用していただきたいと思っています。

あと3回で今期の授業が終わりますが、体験講座も来月(12月)から始まり、講座も1月から始まります。また来期もいろいろな方にお目にかかるのを楽しみにしています。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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