実践!法律文書翻訳講座 第十六回 where~、~soever



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第14回15回は、hereof、thereof などの here~、there~ の形の表現をみてきました。今回はそれに続いて whereby などの where~、そして whatsoever などの ~soever の形の表現を含む文章をみていきます。



1) It is understood and agreed that for the purposes of this Agreement the Parties shall share hereunder, unless otherwise herein stated, the proceeds from the sale or any and all other disposition of the Work and the rights and licenses therein and with respect thereto, including but not limited to the following:

2) Each party is willing to receive from the other party for evaluation purposes only for possible licensing of confidential scientific and technical information and data regarding TECHNOLOGY, which may include patent applications (such information and data taken together with any information derived therefrom or from any samples of the TECHNOLOGY provided, hereinafter referred to as “INFORMATION”).


1) 本契約の目的において、本契約書に別段の規定がない限り、両当事者が、以下のものを含めこれらに限定されず、本作品の売却またはその他全ての処分ならびに、本作品に対するかつこれに関する権利およびライセンスによる収益金を、本契約にもとづき共有することが了解され、合意される。

2) 個々の当事者は、予定されるライセンス付与に向けた評価の目的においてのみ、他方当事者から、本件テクノロジーに関する機密の科学的および技術的情報およびデータを受領する意思があり、これらには、特許出願が含まれる場合がある(かかる情報およびデータを、これらからまたは提供される本件テクノロジーのサンプルから生成される情報と併せて、以下、「本件情報」という)。

例文1)の hereunderherein はそれぞれ、under this Agreement、in this Agreement に置き換えられます。thereinthereto は、in the Work、to the Work に置き換えられます。

例文2)は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターのWeb上に公開されている契約書の RECITALS 部分からそのまま抜粋したものですが
動詞 receive の目的語は confidential scientific and technical information and data なので、その前の of は不要だと思われます。

therefrom は、from such information and data に置き換えられます。これは文脈上の意味から解釈しなければなりません。hereinafter はお馴染みの「以下(この文章より先)」という意味です。

◆ where~

where~ は、here~ や there~ に似て、前置詞 (from, in, of など)+ which(前出の何かをうける関係代名詞)です。
よく目にするのは契約書の文末における定型的な表現 IN WITNESS WHEREOF ですね。この whereof は関係詞で、そこまでの契約書の内容全てを指しています。


1)The applicant shall disclose the place wherefrom any claimed biological material was obtained and, where appropriate, shall demonstrate compliance with the access and export regulations applicable in the country from which that material was obtained.

2)In the absence of Community rules on non-dangerous waste, checks on transfers of such waste shall be conducted on the basis of a special procedure whereby transfers to the point of destination may be checked at the time of processing.



2) 非危険廃棄物に関するコミュニティ規則がない場合、かかる廃棄物の輸送に関する検査は、特別な手順にもとづき実行されるが、この手順によって目的地までの輸送が処理の時点で検査される場合がある。

上の例文1)で wherefrom は、その直前の place をうけています。from which に置き換えられますね。

例文2)での whereby も、by which に置き換えることができ、直前の special procedure をうけています。

◆ ~soever

whatsoever、howsoever などの言葉も、法律文書でよく使われる表現です。それぞれ whatever、however の強調形で、それがなくても文章全体の意味は大して変わりません。

whatsoever は通常の文章でも no/ not あるいは any を伴って強調の意味で使用されます。

訳す場合は自然で読みやすい日本語になるかどうかをポイントに、1)のように制限用法的に訳す場合、2)のように、where~ の前にカンマ「,」はありませんが非制限用法的に訳しおろす場合と、使い分けて良いでしょう。


What was he talking about? I have no idea whatsoever.


彼が何の話をしていたかって? まったく分からないね。

whatsoever に比べて、howsoever や whosoever は余り目にしないかもしれません。
長い文章の中に ~ever があると、やや堅苦しい文章に見えるのですが、何を強調しているかは分かりやすいので、訳文が堅苦しくなりすぎないように注意して、強調の意味を出していきましょう。


1)  The User shall protect the secrecy of the IDs/Passwords assigned to the User at all times and shall ensure that the same is not revealed or disclosed in any manner whatsoever to any person or persons whosoever.

2)  The termination of this Agreement howsoever arising shall not affect such of the provisions hereof as are expressed to operate or have effect thereafter.


1) ユーザーは、ユーザーに割当てられたIDまたはパスワードの秘密を常に守るものとし、かつ、いかなる形においても、いかなる人に対しても、これらが決して漏洩または開示されないようにするものとする。

2) 本契約の解除は、それがどのような形で発生しようとも、解除の後に作用するまたは有効であると明記された本契約の条項に対しては、一切の影響を与えない。

例文1)の whatsoever は直前のmanner を、whosoever は直前のperson or persons を強調しています。any だけで「いかなる~も」という訳にすることが多いので、whatsoever と whosoever の強調の意味をどう出そうか……と悩むかもしれません。そういう場合は無理することはありません。ここでは、ensure の意味を出すために「決して~ない」という表現も使っているので、訳文全体としては十分に強調の意味が出ています。

例文2)の howsoever は、直前の何かではなく、arising の方を強調しています。however の強調形ですから、no matter how it (such termination) arises と、置き換えて訳してみるとうまくいきます。

here~、there~、where~ も、~soever も、普通の英文ではあまり使用されない表現で、文章を古めかしく/堅苦しく見せるため、「訳し難いかな」と錯覚させる作用があるかもしれません。しかし、何を指して/うけているのかを落ち着いて見極めれば難しくはないので、訳文がひきずられて堅苦しくならないように、自然な文章になるように注意して訳しましょう。



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神戸大学文学部卒業後、株式会社高島屋勤務。2年の米国勤務を経験。1994年渡英、現地出版社とライター契約、取材・記事執筆・翻訳に携わる。1997 年帰国、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は翻訳者として活動する傍ら、出版翻訳オーディション選定業務、翻訳チェックも手がける。