TRANSLATION

翻訳とポストエディットの違い

ハイキャリア編集部

ポストエディット座談会

皆さんこんにちは。

前回は「ポストエディット座談会」の概要についてお話ししました。今回は、1つ目のトピック「翻訳とポストエディットの違い」をご紹介します。

テンナイン:翻訳とポストエディットの違いは何だと思いますか?

Aさん:
ポストエディットは機械翻訳で訳されたものが上がっているので、自分の言葉で訳すことはできません。機械翻訳はたまに凄く良い訳出しをしてくれます。訳文の質が良ければ、翻訳チェックのような感覚になります。なので、翻訳チェックと翻訳の中間のような感じかと思います。

Bさん:
翻訳では、「読者にとってどこまで読みやすくするか」が重視されます。例えば、マーケティング分野では「読者に興味を持ってもらうような美しい文章にどこまでするか」が求められます。一方、ポストエディットでは、そこまで文章を練ることが要求されていないんじゃないかと思います。それに対して、手翻訳では、練り上げて、あわよくば読者に興味を持ってもらえるような文章にする、そこに違いがあるような気がします。

Cさん:
翻訳とポストエディットには違いがなければいけないと思っています。違いがなければ、翻訳で依頼されているお客様に対して失礼にあたると思っているので、ポストエディットにどの程度のレベルが求められているかを気にしながらやっています。あくまでも「意味的に正しい」という点を目指して、直訳調になっている部分や日本語的に少しおかしい部分も目をつむって、翻訳とポストエディットの違いを出していかなければいけないと思っています。

テンナイン:
皆さま翻訳もやられていますが、翻訳とポストエディットの作業フローの違いはいかがでしょうか。

Cさん:
ポストエディットの場合は、機械翻訳が提供される一方、翻訳は何もないので、入りが変わります。ポストエディットの場合は、機械翻訳を一通り読んで内容を頭に入れながら、明らかにおかしい部分は直していきます。訳漏れや誤訳に注意しながら、文章全体を把握した後に、Webなどで内容を調査して、調査した結果を少しずつ反映させていき、用語統一しながら全体を整えます。その後に、文章全体をもう一度読んでいき、あくまでも機械翻訳を活かしながら、意味的に正しいかを意識して、意味的に正しければそのまま行くっていうような形で一通り行って、最後に抜け漏れなどを最終的なチェックするというやり方でポストエディットは進めています。

Bさん:
作業フローのお話をしますと、1回目に横方向、つまり訳文と原文を比較し突き詰めてつぶさに見ます。その作業を一通りした後、2回目は横方向をあまり見ないで、訳文の統一性、用語や表現の統一性を主に見る、つまり、訳文の中の縦方向を見るという作業をしています。ポストエディットの場合は、この2回で済ませるようにしています。翻訳の場合、自分の1回目の訳だけだと訳抜けが出てきてしまうので、2回目は細かく見るようにしています。PEの場合は細かく見る作業が1回で済むという点で時間をかけずに済んでいるのかなと思います。

テンナイン:
日本語に訳すときに、原文の文章の順番を入れ替えないといい訳にならない場合もあるかと思いますが、その場合はいかがでしょうか。

Aさん:
基本的に、文を入れ替えることは最初からは考えないですね。機械翻訳されたものを活かして進め、どうしてもおかしいところや、意味が変わるところは直しますが、時間との関係もありますので、多少目をつむることもあります。

Bさん:
契約書の場合、機械翻訳の語順はほぼ使えます。契約書では、読者を魅了するような文章を作らなくてもいいので、正確であればだいたい構いません。したがって、語順を変えることによって読みやすさ追求することがあまりありません。特に契約書は、「甲は~、乙は~」のように、主語が最初に来るので、語順の入れ替えをすることがあまりないですね。

テンナイン:
契約書は、非常に機械翻訳との相性がいいということですよね。実際に、ポストエディットの依頼が多い分野は契約書になります。あるクライアントさんから契約書の依頼があって、翻訳とポストエディットで品質を見比べて決めたいということで、ポストエディットの訳文と手翻訳の訳文を納品したことがありました。やはり、品質は手翻訳の方が明らかに良いという結果で、難しい契約書の内容をより分かりやすく感じたのは手翻訳でした。ですが、ご予算の関係と、誤解なく契約を締結するという契約書の本質的な点を考え、ポストエディットで発注になったというもケースもありました。最終的にはクライアントが何を望んでいるのかが重要ということになるかと思います。

今回は、「翻訳とポストエディットの違い」についてご紹介しました。次回のトピックは、「ポストエディット作業のポイント」です。

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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