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天使たちのいたずら

ぺこたん

通訳・翻訳者リレーブログ

此の地球上で暮らすようになってから、まだ日も浅い頃、カナダという国へと、いきなり導かれた。その地で春夏秋冬、それぞれ5回ほど楽しんだ。山と湖に恵まれた、それはそれは美しい北国。離れがたかった。

その後、南米の某国へ連行された。とてもいい加減な国だった。何度も日本へ帰りたくなった。日本の高校を卒業しなければ、間違いなく駄目になる。ひどく焦った。

3年後に希望叶い、無事逃げ帰って来た。ひと息つく間もなく、学校訪問を始めた。入れてくれそうな高校を、順に見て廻ったのだ。しかし、1校目も2校目も3校目も4校目も、まるでピンとこなかった。“明日からおいで”と、温かな言葉投げかけてくれる学校も、幾つかあったが、“ここは違う”“ここも違う”と、その場で断ってばかりいた。
そうして5校目。“わたしはここに通うのだ!”。なぜか、針がビュビュビュ〜ンと大きく振れた。
試験を受けさせて貰った。そうして、“来てもいいよ”という許可証を頂いた。出来る科目&出来ない科目、好きか興味ないか。そんな極端な人間でも、門前払いしない高校だということを、あとで知った。救われた。ありがたや。

担任は、生徒と分け隔てなく接してくれる、とてもアツく素敵な青年…もとい…先生だった。

で、ここでいったん、月日を一気に早送りさせて…。
高校卒業後、この素敵な青年先生は、校長先生になられた。そうしてその後、京都へと移られて、長年の夢を叶えられた。

そうして、現在に至るのだ。
いや、まだ至ってはいけないのだった。

話はまだまだ高校時代だ。
大学受験勉強中、週末の深夜に、必ず聴くラジオ番組があった。そこに時々ゲスト出演する、アメリカ在住の音楽業界関係者がいた。ハスキーヴォイスの彼女の語る、業界裏話はキラキラ別世界。ひどく面白くて、彼女はわたしの憧れの女性だった。

さてと…
編入学を果たした翌年、日本で迎える久々の冬。
そのラジオ番組を聞きながら、大学に無事合格した。しかしそれは、わたしの入りたい学校ではなかった。それどころか、予想以上に刺激がなく、クラクラするほどつまらなかった。あまりのつまらなさに、キャンパス内でも、ひたすら音楽を聴いては、気を紛らせていた。当時盛り上がっていたLAメタルの、あのバンドやら、このバンドやらをだ。

しつこいようだか、その大学は実に退屈だった。だからある日、キャンパス内の公衆電話に吸い寄せられ、なにも考えずに、まるで軽い気持ちで、当時一番好きだった音楽雑誌の編集部に、ちょっくら電話した。してみた。してしまった。
“もしもし、読者ですが、編集長いますか?”
するとその時、編集長がたまたま居た。もとい、いらっしゃった。そうして、もれなく電話口に出てくれた。もとい、出てくださった。
ひえ〜っ!
その上、その編集長の翌日の予定は、真っ白だったのだ。

それで、“明日ヒマだから、遊びにおいでよ”。初めて言葉交わしたその編集長に、いきなりナンパされた。
ひぇ〜っ!
退屈な日々を送っていた学生は、その棚ボタ話に興奮し、電話口で奇声をあげてしまった。

で、さっさとその翌日。
喜び勇んで、編集部へ遊びに行った。当日の、退屈な授業の方は? うーん、覚えていないな。でも恐らくは、終わってから行ったのだろう。そういうことにしとこう。いずれにせよ、もう時効よ。

とにかくその日、棚から落ちてきた餅を、しっかり受け取るべく、編集部にお邪魔した。そうしたら編集長自らが、編集部を案内してくれた。もとい、くださった。その後、近くの茶店で、アイスティーを奢って貰った。
緊張していて、その時なに話したかは、まるで覚えてはいないが、なぜかその場で、簡単な翻訳の仕事を貰った。予想外の展開に次ぐ、予想外の展開だった。
ほどなくして、現場でバイトするようになった。たまたま遊びに行っただけの、ボタ餅編集部でだ。

2年後、社会人になるその年。
めったに辞めない編集部員が、たまたまひとり辞めた。その時、“代わりに入らないか?”と編集長にまたナンパされた。
ひえ〜っ!
しかし音楽業界ってのは、オオカミがワンサカいる、恐ろしい世界なんでねーか? ちと不安になった。でもまあ、就職活動ってヤツもやっていないし、オオカミに喰われそうになったら、逃げればいいだけの話だし…。だから、“ではお言葉に甘えましょう”…と、ほんの軽い気持ちで、そのまま正社員になってみた。単なる流れでバイトを始めた、その音楽出版社へだ。

棚ボタ棚ボタ。あたしの大好物。

で、初出勤数週間後。記念すべき初単独インタビューが決定した。
ひえ〜っ!
インタビュー相手を聞いて、仰け反った。退屈な日々に、一番よく聴いていた、当時人気NO.1のあのバンドだったから。
ひえ〜っ!
同行する人の名を聞いて、再び奇声をあげてしまった。ラジオにゲスト出演していた、憧れのあの女性だったから。
憧れの彼女が、大好きだったバンドの事務所に、たまたま出入りしていて、一緒に日本へ一時帰国していたのだった。そうして、たまたま編集長と知り合いだったのだ…ということをあとで知った。

とにかくそんなわけで、当日こちらは、ダブル緊張しまくった。でも、バンド・メンバーもラジオの彼女も、もの凄くいい人たちだった。

その初インタビュー初御対面から、気がついたら、あと少しで30年よ。驚きモモの木とは、まさにこのこと。
因みにあの時のバンドは、今でも活躍中。今年もインタビューしている。そうして憧れの彼女とは、あの日以来、国内外あちらこちら旅もする仲に。つい先日も、きりたんぽ鍋を囲んだばかり。

因みにその夜、一緒にきりたんぽ鍋を突っついたのは、退屈しのぎに電話し、そのままズルズル入社してしまった、あの棚ボタ会社の元同僚たち。彼らとは、ヨダレ垂らし横で引っくり返っていても、放っておいてくれるような(間違いなく)、鼻血吹き出し横で倒れていたら、助けてくれるような(たぶん)、そんな関係がいまでも続いている。
因みにあの例の編集長、いまでもドスこい生きている。いや、生きているどころか、自分の会社を興し、いまや業界内のドン…らしい…が…しかし、みんなの前では、単なる酔っ払い(^_^;)

血気盛んだったあの頃、華やかし時代の音楽業界で出逢い、楽しい瞬間の数々を、共有してきた者たち。それがこうして、同じような速度で、年を重ねてきている。そんな当たり前なことが、なんだか不思議で、無性に嬉しくて、愛おしい。

して結局、怖いオオカミは、何処にもいなかった。

さて、話を戻して…。
その初インタビューから、またまた歳月がどっと流れた、ある晴れ渡った日。とある場所でいきなり、カナダの美しい写真が、目に飛び込んできた。なぜか妙に気になって仕方がなかった。カナダの写真なんて、そこら中に転がっているのにさ。

それから半年ほど経った頃。
その写真を撮る人気写真家と、カナダ繋がりで、ひょんなことで、とある場所で、初御対面を果たした。とてもヘンテコにステキな人だった。
しばらくすると、その写真家の作品集の翻訳など、お手伝いするようになった。

その翻訳作業を通して、ある編集者と知り合った。ある日なんとはなしに、某国の料理が好きだという話を、その人にした。するとたまたま少し前に、その某国の料理本を、担当&出版したと言うではあーりませんか。結局、その本を頂いてしまった。す…すんません。

話はまたまた飛ぶけれど。

大好きな前衛画家がいた。
作品を観に行ったり、テレビ特集を録画したり、新聞連載を保存しては、ニタニタしていた。なぜかこころ惹かれてならなかった。

そんな時、先の編集者から、本の翻訳のお話を頂いた。
ひえ〜っ!
そのアーティスト名を聞いて、気絶しそうになった。この前衛画家だったから。

引き続き、話が行ったり来たりするけれど…。
京都へ移られた、先の元担任元校長に、翻訳などで携わった、先の写真家の作品集を、時折お贈りしていた。“魅力的な写真だね。いいねえ。京都で個展があったら、観に行くから”。そう言ってくださっていた。嬉しかった。

そうして先週。
念願のその京都展が、開催される運びとなった。“そのギャラリー、ウチから数分のところだよ”。元担任元校長から、そう聞かされて、意味なく感動した。

そうして数日前…。
30年以上も前に、“わたしの通うべきトコはここだ”と、勝手に思い込み、押しかけて行った高校の、元担任元校長その後京都の恩師と、40年以上も前に住んでいた、第二の故郷カナダ繋がりで、その20数年後に、ひょんなことから知り合った、人気風景写真家とが、東京から遠く離れた京都で、初御対面した。

そうして…
ふたり肩並べ微笑む、その時の写真が、いまわたしの目の前にある。

ああ、人生って、いいなあ。
なんだかワクワクしてくる。

“人生はチョコレートいっぱいの箱。開けてみるまでは、なにが入っているか分からない”。フォレスト・ガンプくんチのサリー・フィールドさんが、そんなようなこと言っていたけれど、あれ、本当に本当だわなあ。

何かが何かと繋がる。遠い昔の出逢いと、ついこの間の出逢いとが、ひょんな瞬間に繋がり、新たな出逢いへと、導かれてゆく。過去の画面が現在に蘇り、セピア色の世界が、鮮やかな色へと、塗り替えられてゆく。

そういえば、辺りでなにかが、翼パタパタさせながら、ヒソヒソ話している気配が、時々しているけれど…。

すべてはきっと、彼らのしわざ。彼らのいたずら。そうに違いない。
あっちのリボンと、こっちのリボンとを結んだり、道に迷わないようにと、足元に花びら撒いたり、ところどころの木の枝に、きれいな色の毛糸を、巻きつけておいてくれたり。そうして時には、ボタ餅を落としてみたり。
そうやって、こちらの反応を眺めては、キャッキャッ楽しんでいるような…。

そうして…
それぞれの出逢いやタイミングには、ちゃんと意味があることを、だから大切にしなければならないんだよと、そっと教えてくれる。

さて、もう幾つ寝ると2013年。
天使たちは、どんなことを企んでいるのだろう。今度どのリボンとどのリボンを、結びつけてくれるのだろう。考えるだけで、ワクワクしてくるo(^▽^)o

Written by

記事を書いた人

ぺこたん

高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

END