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年年歳歳花相似 歳歳年年人不同

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

高校の先生方を対象にしたメールマガジンの原稿から、転載いたします。

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年度はじめに湿っぽい話で恐縮ですが、今読んでいる”A Big Little Life”という本の165ページから166ページにかけて、現代人の「死」に対する感覚について、こんな記述がありました。

Death is given a place in their thoughts similar to that occupied by a childhood friends not seen in twenty years, known to be still out there in the old hometown, a thousand miles away, but not currently relevant.

「今も故郷に居るということは知っているものの、普段は思い出しもしない、古い友人のようなもの」というわけです。そんなことを思ったのも、現在指導している大学の通訳翻訳課程が、今年で開設4年目を迎えまして、ようやく1年生から4年生までがそろったからなのです。3年前の入学直後に右往左往していた1期生は、頼もしい4年生になって後輩を指導しています。

卒業は「死」とは違いますが、彼らがあと1年足らずで私の前からいなくなってしまう、そばにいて指導することができなくなってしまうという意味で、別れが迫っていることに違いはありません。「ようやくいろんなことが分かってきました。あと2年ぐらい大学にいられれば!」と、4年生も口をそろえます。

“dog year”、つまり犬にとっての1年間というものは、人間にとっての7年間に相当するのだそうですが、あえて大学生を同列に論じるとすれば、1年間は20年分ぐらいに相当するのだと思います。その中で、学生たちは必死に成長し、次のステージへと羽ばたいて行くわけです。

教員である私にとっては、やって来ては去っていく学生の一部に過ぎなくても、学生側からすれば、(通常は)一度しかない大学生活です。何とか実り多いものにしてやりたいと思います。昨日、研究室で空を眺めながら、20倍速で進んで行く人生について思いを馳せていました。

高校の場合は通常3年間ですから、大学生と比べてもさらに3割増しの速さで時が流れることになります。教壇に立つ先生方の背負うものも3割増しになるということですね。

その一方で、「昔の人と比べると今の人の精神年齢は、実年齢の7掛け」とも聞きます。例えば私は今年で43歳になりますが、7掛けをすると30歳ちょっと。深く納得ですね。

“dog year”とまでは申しませんが、私自身も少しでも早く成長して、教え子たちに少しでも多くを伝えられればと思っているところです。

本年度もどうぞよろしくお願いいたします。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

END