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首のねんざ

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 突然、首がものすごい激痛に見舞われた。
 兆しは前の晩からあった。しかし翌朝、ここまでひどくなるとは思ってもいなかったのである。
 ここ数週間、夫が激務で、私も仕事や原稿の締め切り、そして授業準備と綱渡り状態が続いていた。せめて子どもたちだけは病気になりませんようにと、祈りながら暮らす日々だった。そんな日々が一段落する日曜日にホームパーティーを計画しており、それを励みに毎日をこなしていたのである。
 お客様をお招きするのは大好きなので、パーティーをそれはそれは楽しみにしていた。友人や仕事仲間、教え子などいろいろな方に声をかけて、その日を迎えることとなった。
 しかし当日朝、まずノドに異変を感じる。その時一番に思ったのは、パーティーを終えるまで、声を出し続けられるかどうかということだった。幸い翌日には通訳の仕事が入っていない。とりあえず、お客様のおもてなしに支障がなければ少し無理をしてでも夜まで乗り切ろうと思った。
 不思議なことにノドの痛みは夕方になるにつれ、引いていった。ところがその代わり、首がものすごく硬くなり、最後のお客様を送り出したときには頭も重く、もう何もしたくない状態になっていたのである。
 とりあえず、最低限の後片付けをすませて、その日は床に就いた。ところが翌朝、目が覚めてみると、完全に首が動かない。毎朝やっている柔軟体操と腹筋・腕立ても、大変辛かった。今日はオフだからスポーツクラブでスタジオレッスンを2本こなそうと計画していたのだが、それどころではなさそうだ。あわてて整体へ出かけることにする。
 先生は触ってみるや、「相当、熱を持っていますね」という。つまり、肉体疲労と精神疲労により、耳の後ろから首、そして肩甲骨あたりまで完全に凝り固まってしまったというのだ。「今、駐車場にバックで入れようとしたら、首が回らなかったんです」という私に、「そうだったと思いますよ。これはいわば、首のねんざですからね」と答えていた。
 1時間、徹底的にほぐしてテーピングもしてもらい、今日は体を温めるような動作は禁止と言われる。つまり、予定していたスポーツクラブもお預け。入浴もシャワーか、あるいはいっそのこと入らないぐらいでちょうどいいという。普段の私なら自己診断で「ん?でも気分はスッキリしたから、レッスンに行っちゃおう!」となるのだが、施術後も完治したわけではないので、さすがにおとなしく帰宅した。
 先生の話によれば、たとえば「寝相が悪い」というのも決して悪いことではなく、むしろ寝ている間も体を動かすことで筋肉がほぐれるのだそうだ。私の場合、今も子どもたちの添い寝をしている状態。しかも寒い冬は子どもたちが私の掛け布団にギュウギュウ入り込もうとするので、私はできるだけ身を細くするか、横向きになりマッチ棒のように固まることで、子どもたちが布団からはみ出さないよう細心の注意を払う。「それも母心ですよねえ」と先生はマッサージしながらおっしゃった。
 仕事に家事、そして育児をしている人は、多かれ少なかれ何らかの不調と共存しながら生きていると思う。「疲れたから今日は仕事帰りにマッサージに行こう」という時間的余裕も残念ながらない。 今回の『首のねんざ』は、「むしろ精神的な疲れによるもの」と先生。張り詰めた日々がずっと続いていれば、どこかに必ずしわ寄せが来てしまう。それをどう防げるかを私自身、考えなければならない。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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