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人間、変われる!

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 子どもが生まれて一番変わったこと。それは「料理をするようになったこと」である。何しろ私の実母は食べることに超無頓着。食が細いので食べるという行為そのものに関心がない。それで料理もあまりせず、私も「母秘伝の味」など全く受け継がずに結婚してしまったのである。
 とりあえず栄養のバランスが取れていれば良いかなというのが結婚以前の私の考え。婚約中に暮らしたイギリスで、夕食用にサラダとポークパイを買う私を見た夫は目を丸くしていた。ちなみに夫は料理が上手である。
 「料理=時間ばかりかかる」という考えに凝り固まっていた私は、結婚後もあまり台所に立つ気がせず、「一緒に作ろうよ」と言う夫になかなか重い腰が上がらなかった。ところが子どもが生まれ、やがて離乳食が始まるといつまでも市販のベビーフードに頼るわけにはいかない。しかもイギリスの保育園の連絡帳を見ると「今日の昼食はフライドポテトとスパゲッティミートソースでした。おやつはポテトチップスで、よく食べていました」というコメントがある。いくら料理オンチの私でも、この炭水化物オンパレードには参ってしまい、せめて残り二食はまともなものをと必然的に作らざるを得なくなったのである。
 最初のうちはレシピがないと何も作れず、一つでも調味料が不足していると調理そのものがアウト。帰国後は生協に入り、カタログのレシピを一週間分切り抜いてその通りに作っていた。ものすごく時間と手間がかかり、せっかちな私は何度挫折しそうになったか知れない。ところがその下積みがあったおかげが、「材料が一つぐらい足りなくても大丈夫なのか」と安心し、「なーんだ、要は醤油、みりん、お酒があれば和食っぽくなるのね」とある程度の勘がつかめるようになってきた。
 以来、料理そのものが楽しくなり、新しいレシピに挑戦したり、季節のメニューを取り入れたりと工夫するにつれ、どんどん面白くなってきた。しかも野菜をひたすら切るというリピート作業はストレス解消にもなるし、出来上がった料理を家族が「おいしい!」と言ってくれると俄然、次も頑張ろうと思えてくる。ちなみに1月中旬の小正月には伝統にのっとり小豆粥をつくった。乾燥小豆をコトコト煮るところから始めたので半日以上かかったが、自分でも作れたというのがとても嬉しかった。
 きっかけさえあれば、人間、変われると思う。フォローして、褒めて(褒めまくって?)くれた家族に感謝である。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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