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ぼんやりする時間、夢見る時間、睡眠時間

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通訳・翻訳者リレーブログ

どんなに忙しく、どんなにスケジュールがタイトな時でも、絶対に端折りたくない、疎かにはしたくないもの、大切にしている瞬間があります。

原稿書きの場合、一番大事なのは集中力です。
そのアーティスト、その音世界に身を委ねていると、周囲の音が聞こえなくなる瞬間、その中へと、スーッと入り込める瞬間があります。存在するのは、その世界と私だけ。そうして初めて、すべてがうまく走り出すのです。
上空からは、いつもの天使たちが舞い降りて来て、文章を紡ぎ出す手伝いを、あれこれしてくれます。

しかし哀しいかな、この集中力には限界があります。その時々に依りますが、2-3時間もすると、周囲の音が再び耳に入るようになります。“冷蔵庫にチョコレート入っていたかなぁ”…などと、あれこれ気になり出します。
天使たちも、いつの間にか姿を消してしまっています。そう、彼らは余計なことを考えている私が嫌いなのです。

そんな場合は、我慢せずに、はい、まずはチョコレートでこころ満たします。そうしてその後には、これまたその時々の気分に依りますが、例えば、読みかけの本を開いては、少しだけその世界をフラフラします。あるいは、窓の外に映るその時々の季節、その時々の空色を、ただただぼんやり眺めてみたり…。
要するに、音世界とは別のところへ、ちょっと足を踏み入れてみるわけです。

そんなことをしている内に、しばらくすると、先程まで居た世界がまた、無性に恋しくなってきます。そうしたら再び、帰るべき場所、そのアーティスト、その音世界へと戻っていくわけです。
天使たちも、ニコニコしながら、私を迎えてくれます。

そうして夜は、必ず寝ます。
そう、充実した睡眠時間もまた、とても大事です。

〆切が迫っていて、原稿を書き終えられなくて、徹夜作業に突入した時でも、その後に必ず(…外出の予定がない限り)、必ずゆったり寝ます。
そうして、どうしても書けない時には、1時間だけでも、とにかく横になります。
そう、どんな“危機的状況”にあっても、睡眠時間は、しっかりとるようにしています。これを軽んじていると、どんなに頑張っても集中力は湧かず、天使たちも会いに来てはくれません。

20-30代の頃は、2晩寝ずにライヴやら呑み会やらと、平気でやっていました。それもまた、編集部員…音楽業界の仕事の一部、日々の延長線上にあったようなもの。それが元気の元であったほど。
しかし、それもいまは昔。いまや私は40代、それを忘れてはなるまい。おまけに、こうしてフリーで仕事している身。オールナイトなど、もうやっていられません。

そう、休息は大事です。

そうそう、睡眠の“ちょうど良い長さ”は、ひとそれぞれらしいですね。それは、長ければ良いと言うわけでもなく、短ければ良くないと言うわけでもない…のだとか。因みに私は毎夜、7時間は必ず寝るようにしています。このくらいの長さが、私にとっては一番心地良い。
入稿後、徹夜明けには、ホッとしながら、10時間くらい寝続けることも…。

あっ、寝ていると、色々な夢を見ます。
可笑しな夢、忘れられない夢、不可解な夢。
最近では、例えば……

1)“どうしてこんなことになってしまったの?”…と、“堕ちたアイドル”とやらと話し込んでいるぺこたん。
⇒⇒いつの間にか、テレビのワイドショーをつけたまま、寝込んでしまっていた。
2)ポルトガルの田園地帯をのんびり散策するぺこたん。
⇒⇒その前日に、同国在住のアーティストに90分インタビューし、その生活ぶりにウットリしたばかりであった。
3)駅へ着いたものの、自分がどの電車に乗り、何処を目指せば良いのか分からず、途方に暮れるぺこたん。
⇒⇒〆切迫っている原稿を放り出し、いつの間にか寝込んでしまっていた。
4)既に満員のエレベーターに、太った象が無理矢理入り込もうとし、身体を押し潰され、息苦しくなりバタバタ泡吹くぺこたん。
⇒⇒いつの間にか、猫のねね(7.3KG)が、私の身体の上に巨体を投げ出し、グーグー寝ていた。

閑話休題—。

これがでも例えば、旅の前夜などは、なかなかそう上手くはとれないもの。出発はたいがい朝早く、かつ家を数日間空けるわけで、ノートブックを持ち歩く習慣のない私は、従って猛スピードで、原稿を何本か順番に突っ込んでから、出発しなければなりません。すると必然的に、ギリギリまで起きて、パソコン前で冷や汗掻くことに。哀しいかな、大概そう。
旅に出るのは、前々から分かっているわけですから、それを踏まえてスケジュールを立てている…つもり…なのですが、でもそう上手くはいかないのが世の常、ぺこたんの常でして…。

そういう場合は、道中、バスの中や汽車の中、目の前に広がる自然風景を、ボーッと眺めては和んでいます。はい、美しい景色を見過ごすのは、もったいないので、どんなことがあっても、けっして寝入ることだけはしません。
そうして旅先でも、ひたすらボーッとします。例えば景色の美しい場所、芝の上でベンチの上で、ぼんやり文庫本を開いたり、一眼レフを無意味にいじったり…。

びっくりするのは、そんな旅から戻り、再び原稿の前に座った瞬間。
音を聴きたくて、文章を書きたくて、ウズウズ・ワクワクしている自分に気づくのです。嬉しいことに、いつもそう。そうして驚くほど集中力が湧き、その世界へと、すんなり入り込めるのです。
天使たちとの再会、至福の瞬間です。

つまり、そう、はっきり言って、天使たちに会っていない時の私は、テンションが低いです。とってもユルいです。
元々、“ポジティヴ・シンキング! 前を向き上を目指し、頑張りましょう!”…というタイプとは程遠く、時間割を作って、計画を立てて、目標を定めて…ということは、得意ではありません。

だいたい、何もしていない時、いっけん無駄に見えるような瞬間に、思いがけない発見をしたり、予定していなかった時間の中にこそ、予想していなかったことや、素敵な出会いがあるもの。だからこそ、人生って面白いんだわなぁ…と思っています。

ぼんやりする時間、夢見る時間、睡眠時間……。
私には欠かせない、とても貴重な瞬間なのです。

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記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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