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みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 ESOLのAdvanced Academic Speaking Skillsの今回の課題は、ペアになって決めたトピックに基づき、アンケートを作成し、最低20人は集めて、集計・分析をし、パワーポイントで作成した資料を使ってプレゼンテーションをする、というもの。パワーポイントは若い世代にはどうってことのないツールで、みんな、すいすい使いこなしています。一方、80年代に大学生だった私は、パワーポイントで作成されたデータを翻訳するのは慣れていますが、自分でグラフを作ったりしたことがありません。というか、根本的にパワーポイントを使ったプレゼンテーション、というものをしたことがないのです。これはかなりの難題です。
 とはいえ、ちょっと若者より有利なのは、アンケート自体は会社員時代に担当していた社内報やPR誌でやっていたので、構成や集計のコツなどは体で覚えている、という点です。
 大変なのは、ペアになってやらなければならないので、自分の考えだけで進めていけない、という点です。私とペアの台湾人のEdward(中国・韓国の人は英語名を用いることが多い)は、20代後半か30代前半で、私より年下なのは間違いありません。非常に勤勉で、やることはきっちりやるタイプ。しかし、どうも、なんというか、視野が狭いというか、偏っているというか、思考が表面的、というか、議論がうまくかみ合わないのです。
 Edwardの希望で決めたトピックは、「Quality and Cost」(私はもっと別のテーマにしたかったのですが、ま、若い者に譲る、という感じです)。Edwardいわく、メーカーが高品質の製品ばかり作るようになったら、物が長持ちするから売れなくなる、ということを調べたい。いきなりその前提に疑問を持った私が「あなたにとって例えば、洋服の高品質って何?」とたずねると、「洗っても丈夫ということ。品質なんか、ノーブランドでもブランドでも変わらない。ブランド品が高いのは、宣伝費を上乗せしているからだ」との答え。「だから、これから絶対、物は売れなくなるはずだ」と、自信満々なのです。「え、じゃあ、そうねえ、例えば家具は? イタリア製の高級品と中国製の安物で同じ?」と聞くと、「そう。見かけで区別は付かないでしょ」と言う。区別は付くでしょー。品質って、丈夫ということだけではないでしょう、もっとほかの価値を求める人もいるでしょうー。と言っても、まったくかみ合わない。
 で、様子を見ていた先生が、「じゃあ、電球についての品質について聞いてみたら」と助言してくれたのですが、これって私たちのかみあわなさをからかっていたからに違いない。
 しかし、とっても勤勉な彼は、ちゃんと次の授業の時にたたき台のアンケートを作ってきてくれたのです。でもこの内容がやっぱり、「あなたは洋服を買うときに、品質と値段とどちらを優先させますか」といった、単刀直入、直球、まったくひねりなし、という内容。これで値段と選んだ人が多ければ、「品質より値段が優先される」という結論が引き出せる、と考えたのだと思うけれど、そういうのって、私には物足りなさすぎる。
 ということで、あれこれと何度もやりとりして、大学生にターゲットを絞り、彼らにとって親しみのある食品、洋服、電気製品という3カテゴリーにおける品質について、どんな要素を重視しているか、さらに満足度について、なんとか納得のいくアンケートを作り上げました(あんまりこちらの意見を押しつけるのも良くないので、そのあたりのバランスをとるのが難しい)。
 そしてBreak中に大学に2人で赴き、アンケートをして回りました。休暇中とはいえ、大勢の学生がいるので、依頼する分には困りません。ただ、ここでも問題発生。このアンケートは相手のコメントをこちらで書き留める、ということが前提なのですが、彼は、アンケート用紙を相手に渡して、書き込んでもらっている間、自分はぼーっと待っているだけなのです。これでは、相手は選択する箇所だけ選び、記入式の部分は面倒だから飛ばしてしまうことが多いし、なにより、相手からの意見を引き出すことができません。
 なのに、「みんな、ほとんど書き込んでくれないよー」と愚痴を言うので、「そりゃそうだよ、だから、自分で聞いたことを書き込むように先生が言ってたでしょう。意見を引き出すことが大事なんだよ」と言うと、「そうなんだけどねー」というだけで、相変わらず、相手に書いてもらっています。ちなみに英語の会話力に問題があるわけではありません。相手の意見を引き出すことの重要性について認識していないので、書いてもらったって同じなのに、なにを面倒なことを言っているのだろう、と思っていただけなのでしょう。
 何回か注意したのですが、もういいや、たかが授業のためのアンケートだし、とあきらめてしまった私。これが仕事上のパートナーだったら、絶対にきつく言って、やり直しをさせていたと思いますが。
 そうして、なんとか必要分のアンケートを終わらせ、今週が集計・資料作り、来週はいよいよ発表です。金曜日にはお互いの分析結果を持ち寄って検討し合う予定。
 なんだか愚痴っぽくなりましたが、決していやいややっているのではなくて、考え方の違う人とペアになる、ということがすごく久しぶりだったので、とっても新鮮に楽しんでおります。Edwardは本当にまじめで、いい子で、パートナーとしては最高だと思うのです。Edowardの方は、あれこれごちゃごちゃと小難しいことをいうおばちゃんだなあ、と思っているかもしれないのですが。
 あ、あと、アンケートを取るために初めて訪れたBusiness Schoolには、若くて、Coolで、でも、アンケートには笑顔で答えてくれる素敵な若者がたくさんいて、くらくらしてしまいました。やっぱり文学部とは違う−(え、どう違うか? その辺はご想像におまかせします…)。

Written by

記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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