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空から天使が舞い降りて来ました

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通訳・翻訳者リレーブログ

先週このブログで触れた“待ち人”のひとりが、数日前にやっと御到着いたしました。随分と待たせられ、気がついたらリリース日を1カ月切り、予定どおりに出せるのだろうか…と胃もキリキリし始めていた頃に…です。

待っていたのはニュー・アルバムの歌詞。そうしてこちらの任務は対訳。
音の方は、その数日前に、バイク便で到着していました。が、肝心の歌詞が、何処でどうなっているのやら、うんともすんとも言ってこない状態でした。
それがこの日の午後、いきなりメールで“パッコーン!”。
そうして直後に、レコード会社担当ディレクターからの電話。

ディレクター: (いきなり)…と言うことです。
ぺこたん: はぁ〜。で、〆切りは?
ディレクター: あのぉ…それなんですが…実は…出来れば…あのぉ…明日午後早い内に貰えたら…そうしたら…とってもステキかなぁ…と……。
ぺこたん: ゲーッ!
ディレクター: アッハッハッハッハァ〜!(←壊れている)
ぺこたん: ギャッハッハッハッハァ〜〜!!(←壊れている)

つまり、有余は24時間。それがギリギリのライン。何たって、リリース日1カ月を切り、アマゾン等でも、既に予約注文可能な段階。
しかしです……。
ご存じの通り、アルバム1枚=13曲前後。そうして対訳作業に費やす時間は、通常4日。それが理想。
従って、今回の日数は、どう考えても“あり得ない”ケース。なんとも、まぁ、スリリングな話。

で、あり得ないような話を、どうするか?
もちろん、やるしかありません。

可能なのか?
はい、それが、出来るんです。

どうやって?
空から天使が舞い降りて来るんです!!

あやややややぁ〜、ち…ち…ちょっと待ってくださいな、そこのあなた! チャンネル変えずに、もう少し私の話にお付き合いください。

話は、こうです。

先にも書いたとおり、歌詞が届いたのは、その日の午後。
でも、だからと言って、すぐに取り掛かれるわけではありません、言うまでもなく。直前まで取り組んでいた原稿を仕上げたり、夕食をとったり…と、人間をやっているからには、あれこれ諸事情がありますので…。
それらが終わったら、お茶を飲むなり、ストレッチ&瞑想するなり、好きな音楽を聴くなりしながら、こころ落ち着かせ、充電タイム。
そう、エネルギーを蓄えるのです。自分を満タンにする作業から、始めるわけです。

で、ようやく歌詞を読み始めたのは、夜10時過ぎ。と同時に、ヘッドフォンで音を聴き、その表現者の世界にこころ委ねます。
そうしている内に、言葉では説明し難いのですが、その世界に、こう、スーッと入り込める“瞬間”があるのです。
それまで聞こえていた周囲の雑音が、スーッと聞こえなくなり、気になっていた周囲の“空気”も、一気に感じられなくなる瞬間。
そのアーティストと自分だけの世界に、一気に引き込まれていきます。

そんな時です、天使が舞い降りて来るのは……。

そうして、歌詞にぴったり寄り添うような、美しく流れる日本語が、スラスラと出て来るのです。

そう、天使は、その音世界に全神経を集中させている、私の味方してくれるのです。

ですから例えば、“ちょっと疲れたな。この辺で休憩しよう”…と思ったら、もうそこまで。天使は何処へ消えてしまいます。
でも、こうした“休憩”や“中断”も必要なのです。集中力は、そうそう長続きするものではありませんから。天使も疲れてきます。

と言うわけで、お勝手へ行き、お茶を飲んだりテレビを観たり、本を読んだり写真集を眺めたり。今回は、1時間ほど仮眠もとりました。
と、まぁ、そんなことをやった後に、再び仕事場へ戻り、パソコンに向かい、さぁ作業再開。
ところが、そのまますぐにまた、日本語が浮かんでくるかと言うと、そう上手くはいきません。

この天使、お勝手には付いて来ないのです。仕事場で待っていてもくれません。私同様、何処かでお茶したりと、休憩しているのかも知れません。ですから、またしばらく集中力を高めながら、彼等が戻って来るのを待ちます。

そうこうしながら、オールナイト・ロング、約15時間。翌日午後1時頃、約束通り、無事入稿。
天使も、いつの間にか、いなくなっています。

直後に担当ディレクターに電話を入れ、“何とか間に合った! よかったよかった〜!”…と、涙交じりの声で、互いの健闘を称え合ったのであります。
直接会っていたら、あの時きっと、ギュッと抱き合っていたことでしょう。
“ゴールした瞬間に似ているなぁ”…と、元陸上選手の私は、入稿の瞬間、よく思うのですが、こうしてレコード会社との“連携チームプレイ”により、ひとつのものが完成していくので、そう、“リレー”に似ていますね。

とにかく、言葉には表現できないような、本当に充実した、最高の気分味わえる瞬間です。この気持ちを味わう為に、日々やっていると言っても過言ではないほど。

こうして今回の任務、無事終了!
直後、ベッドへ直行。そうして10時間ほど、石のように寝続けたのであります。

余談ですが、
この天使、普段の生活で舞い降りて来ることは、一切ありません。
普段の私は、ボーッとした生活を送っているからです。いいえ、ボーッとした生活を送っているからこそ、肝心な時に、天使に巡り合えるのです。
ですから、マウンテンバイクで近所をフラフラしたり、コーヒー屋でボーッと周囲を眺めたり、本を読んだり、映画を観たりすることは、私にとり、とても大切なひと時なのです。そういうことを日頃から行なっていないと、肝心な時に、彼等はやって来てはくれません。

そう、天使はそう簡単には、舞い降りては来ないのです。

さぁ、あとはリリース日に、近くのレコード店に行き、店頭にアルバムが並んでいるところを、眺めに行くのみ。これまた楽しみのひとつです。

では天使たち、次回もよろしく!

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記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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