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脱線話ほど面白いものはない

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通訳・翻訳者リレーブログ

ミュージシャンへの取材は、例えば通常の30分枠インタビューなら、デビュー用、ニュー・アルバム用、来日コンサート用などと、その時々のプロモーションの内容・用途に合わせ、事前に質問事項を15問ほど考え、当日それを元にしながら、その時々の話の盛り上がり方や、進行具合により、質問を臨機応変に、飛ばしたり膨らませたり、前後させたりしながら、インタビューを進めていきます。
その為にまず行なうのが、自分の持ち時間の再確認。で、後に何も入っていない場合や、相手が疲れていない場合は、“脱線話”も大歓迎…で、ゆったりやります。
もちろん先に記したとおり、その時々の用途を頭に入れつつ、聞かなければならない、基本となるような質問は、必ず押さえつつ…ですが。

でもとにかく、この“脱線話”、一見“無駄”“余計”とも思われますが、そこから“話す予定はなかったのに思わずポロッと言ってしまった!”と言うノリの、ミュージシャンの本音や、面白い裏話が聞けることが多々あるんです。

インタビューは、言うまでもなく、まずは挨拶から始まります。どんな場合でも、私はこれをとても大事にしています。この“導入部分”が上手くいき、相手と息が合えば、もう間違いなく良いインタビューが出来るわけですから。でもここからいきなり“脱線”する場合も多々あります。
イギリス人とは、何故か、天気の話で盛り上がることが多いですね。昨日電話インタビューした相手とも、“こっちはどんより曇り空。いつものことだが、もうウンザリだ”…と。来日公演が決定している彼に“こちらはずっと晴天。1月にしては温かいですし”と伝えると、“そのままずっと晴れの日が続くと良いなぁ”…と言いながら、イギリスの“どんより天候”について、しばらく話が続きました。
そうそう、華氏で温度を言われ、“そっちは?”と良く訊ねられることがあるのですが、何せ私は計算が大の苦手。なので、自宅電話インタビューの場合は、“摂氏・華氏表”を片手に話しています。あぁ、情けない余談。
逆にいきなり、“この間、日本では地震があったみたいだけど、大丈夫だったか?”と聞かれることもありますねぇ。
アメリカ・ミネアポリス在住のギタリストは、挨拶もそこそこに、突然、真っ二つに崩壊した橋について話し始めまして。現場の目の前に住んでいて、いつも通っている道なのに、当時たまたまツアーで留守していた…とのこと。こちらもCNNで生中継を観ていたので、驚きました。

Fスコット・フィッツジェラルドの曾孫娘との話も、興味深かったですね。彼女、とても素敵なシンガー・ソ¥¥¥¥ングライターなのですが、高校の授業でフィッツジェラルドを読んだことや、英米文学科の出身という、共通点があった為、“日米の授業の進め方の違い”などにも話が及び、とても楽しい取材が出来ました。
ある著名なゴスペル・シンガーとは、南北戦争やキング牧師など、さながらアメリカ史の授業…。また、ある大統領候補者が、同じ教会に通っているとのことで、その人物の幼い頃の話など、本当に興味深かったです。まぁ、記事には出来ませんでしたが。

ある陽気なイタリア人ハードロッカーは、国内の観光地から、地元にあるフェラーリ工場まで、色々と教えてくれましたし、昨年取材したオーストリラ人は、近くのスワロフスキー工房について話してくれ、同社のクリスタル置物&アクセサリーが大好きな私は、興奮しまくりました。
また、スウェーデン人の、北欧独特のクリスマスの祝い方や、地元の料理であるミートボールやニシン話には、もうウットリしましたし、フィンランド人が語る、別荘から毎夜眺めている、オーロラの描写は、本当に美しくて感動しました。
先月取材したドイツ人とは、第二次世界大戦後の両国について、シビアな語らいを、ポルトガル人とは、ファドVS.演歌の話で盛り上がりました。
またカナダ人とは、必ずカナダ(私の第二の故郷!)の話になりますし、アメリカ人とは最近、グラミー賞、アカデミー賞、そうして大統領選のことが、良く話題になります。

初来日直前電話取材の場合は、東京の美味しい店や、お勧めの洋服屋のことを、たびたび訊ねられるので、常に新しい情報を提供出来るようにしています。
逆に“あぁ困った!”と感じたのは、先日取材したイギリス人。コンピューター・ゲームの話続きでして…。実は、バンド名もアルバム・タイトルも、ファミコン絡みだったんですよね。ですから話を膨らませることが、思うように出来ず。あぁ、勉強不足。

まぁ、インタビュー相手はミュージシャンゆえ、音楽に対する愛情や情熱、そうして“自分の作品を売りたい”“相手の作品を売りたい”と言う共通の“想い”の上に成立している会話なので、スムーズに運ばなかったり、退屈だったりすることは、まずありません。ただし、こちらの“音楽関連以外の”引き出しが、多ければ多いほど、内容の濃い、充実したインタビューが出来るのだと、常日頃感じています。
つまり、面白いインタビュー記事を書くには、日々あらゆることに興味を持ち、観て、経験して、聞くことが、本当に大切さなのですよね。まぁこれは別に、インタビューに限らず、どんな仕事にも言えることだと思いますが。

それにつけても、脱線話ほど面白いものはない!

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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