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出張珍道中

まめの木

通訳・翻訳者リレーブログ

今週の水曜日、ドイツ勤労青年の企業研修に同行するツアーから帰ってきた。2週間、朝から晩まで、レセプションあり、講義あり、ディスカッションあり、地元の日本人青年との交流ありで、最初のうちは体力がもつか心配だったが、ドイツの『勤労青年』はとても真面目で礼儀正しく、行動を共にしているうちにだんだんと弟や妹のような感覚を持つようになってきて、あっという間の2週間だった。
このツアー中、ドイツ青年達のホームステイ体験があったため、一日だけオフの日があった。場所は映画『眉山』のロケ地、阿波踊りで有名な徳島市である。青年らをホストファミリーに送り出した後、夜遅くまでドイツ人派遣団長と地元担当者の方々とお疲れ様会で盛り上がっていたため、オフの日は文字通り、一日ホテルで寝ていようかと思ったが、あまりに天気が良かったため、せっかくなので一緒に同行していた通訳さんと午後から遊びに行くことにした。まずは、軽くお昼を済ませた後、事前に調べておいた岩盤浴へ。『石の癒』というとても清潔なお店で、関東近郊に比べてお値段もリーズナブルだった。ヒノキの香とヒーリング音楽の漂う優雅な空間で汗を流し、入浴後のハーブティーをいただきながら二人でセレブな気分を満喫。これまでの疲れがすっかり癒されて気を良くした私たち、ドイツ人派遣団長との食事の約束までにまだ時間があったため、『せっかくだから眉山に登ってみよう』ということになったのである。地元担当者の一人が『歩いてもすぐに登れますよ』と言っていたし、ロープウェイの距離も短いように見えたので、帰りはロープウェイを使うことにして行きだけでも歩いてみることにした。神社の脇から伸びた道が階段だったので二人とも高を括っていたのだが、途中からけもの道のようなうっそうとした道になるし、人はいないしで、本当にこの道でよいのだろうか…という不安が胸によぎる。最初は『マイナスイオン!』と喜んでいた私たちだが、勾配は思っていた以上で、せっかく岩盤浴できれいさっぱりしたのに汗がどんどん出てきて、次第に言葉少なくなってきた。でも、『帰りはロープウェイだからね!』を合言葉に、ハァハァ言いながら頂上についてみると…
ガガーン!!!なんとロープウェイの運行時間が終わっていたのである。一瞬、二人とも呆然と立ち尽くす。約束の時間までもうあまり時間もないし、とにかく四の五の言っていないでもと来た道を下ろうとした、その時、『かんぽの宿、800m先』という看板が目に入った。そこまで行けば、タクシーを呼べるかもしれない。でも、ロープウェイに裏切られた私たちにとっては(事前に調べなかったのが悪いんですけど…)、『かんぽの宿』が廃業していたらどうしよう…という不安が頭から離れなかった。疲れた体には800mといえどもかなりの距離だし、もしやっていなかったらもう一度、頂上まで戻らなければならない。ありがたいことに、白い建物と客室の光が見えたときには、二人で手を取り合って歓声を上げてしまった。人間とはなんと都合のよい生き物だろう、タクシーを呼んでくれたフロントの女性やタクシーのドライバーさんが神様に見えた。タクシーの中では、人のいる市内に戻ってきた興奮で、二人でわけのわからない会話をし、冗談を言っては笑い転げていた。声の大きい通訳者二人にワッハッハとしゃべりまくられては、ドライバーさんもさぞご迷惑だっただろうな…。運転手さん、ごめんなさい…。
しかし、『笑う』という行為は素晴らしい。この日、ゆっくり休もうと思っていたのに予定外の体力を使ってしまったにもかかわらず、午後からずっと笑い続けてかえって疲れが吹き飛んだためか、ツアーの残りの期間を楽しく乗り切ることができたのであった。

眉山頂上から

阿波踊りを楽しむドイツ青年

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記事を書いた人

まめの木

ドイツ留学後、紆余曲折を経て通翻訳者に。仕事はエンターテインメント・芸術分野から自動車・機械系までと幅広い。色々なものになりたかった、という幼少期の夢を通訳者という仕事を通じてひそかに果たしている。取柄は元気と笑顔。

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