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クライストチャーチの地震について

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 日本にいる方が詳しい内容をご存じではないかと思うぐらいですが、クライストチャーチで2月22日午後12時51分、マグニチュード6.3の地震が発生しました。夫から携帯メールに「クライストチャーチで地震があった」と入った時には、昨年9月にマグニチュード7を超える地震があり、奇跡的に死者がゼロだっただけに、「へー。またなんだー」と思っていただけでした。ところが、今回の震源地は市の中心部に近く、時間も昼だったため、被害は甚大となりました。
 日本人の学生の方々がたくさん被害にあったため、インターネットで見る限り、日本での報道はすさまじく、まるで、ニュージーランド全土が焦土と化したかのような印象まで与えた感じがします。でも、もちろんそんなことはありません。阪神大震災のときに、東京はまったく通常どおりだったように、私が住むオークランドはごくごく普通の生活を送っています。

 ニュージーランドは、今、国を挙げて、被害にあった人々の救出に取り組んでいます。阪神大震災のときに、自分が日々を過ごすことだけでせいいっぱいで、ほかの人を助けようなんて思いつきもしなかった私としては、感心するばかりです。夫の会社のブログから、引用します。

***引用始まり***

これはとある留学カウンセラーさまがたまたまクライストチャーチに出張で来られていた際、被災し、その時の心境を綴った文章です。

注意:途中からです。

ライフラインが確保できずにクライストチャーチ市内で夜を明かした人は1000人以上いると思います。

私たち、ホテルの滞在者10人あまりは朝8時ころに召集され、シビル・ディフェンス(CD:人民保護団体)によりウェリントンに移送されるとホテルのマネージャーから告げられました。訪問者がそのままクライストチャーチに居残ることはできないとのことでした。たくさんの人が罹災したなかで、「何かできないか」と考えたのですが、何もできませんでした。すみません。 被災者登録のため、バーンサイド高校にゆきました。パスポート、お金、貴重品などすべてをホテルに置いたまま、ロックアウトされるといった状況が当たり前のなかで、私たちは恵まれていました。 被災者登録をすませ、空港に向かい、軍用機C130ハーキュリーズでウェリントンに移動、NZAirの特別便で午前1時ころにオークランドに到着しました。 只今、午前4時40分、成田行きのNZ便を待っています。 地震直後の恐怖心はおさまりました。そして、この国ではなんと善意のシステムが合理的に機能するのだろうと感心しています。

クライストチャーチでの被災者登録は下記の項目がありました。
・accommodation(住居に困っている人)
・flight(航空機を利用したい人)
・missing people(行方不明者を探している人)
・money(お金のない人)
・food(食べ物)

何で困っているかを明確にし、それぞれの目的に合わせたアドバイスをし、それを書面に落とします。「この書類を大切にね。どこでも必ず見せるのよ。」CDスタッフはみな親切であり、親身です。「ホテルに戻ることはできないし、これからどうしよう」という被災した人のこころを理解して、アクションを起こしてくれます。黄色の蛍光色、CD(civil defense:人民保護)の腕章、チョッキをつけた人は高校生から老人までいますが、それぞれが頼もしく、良く機能していました。 「善意」という言葉が浮かんできます。これがすべてだと思いました。身の回りのすべてを失くしてしまった人たちにあげられるもの、善意以外のなんでしょうか。この国ではそれが、当たり前に、合理的かつシステマティックに、表現されることに私は大変感動し、感謝しています。 クライストチャーチ、ウェリントン、そしてオークランド、行く先々で赤十字が待ち構えていて、それぞれ新たに登録書を記入するのは、それぞれの被災者をトラックして、安否確認をフォローするためのようです。赤の十字のある書類は、「水戸黄門の印籠」でした。オークランドでは、日本語の話せるCDが丁寧に私たちの世話を真夜中にもかかわらず、やいてくれました。食品会社の職員さんだそうです。 普段、普通に生活している人が、CDの腕章やチョッキをつけたとたんに人助けモードに即切り換えられるNZの人々に感涙の念を持って感謝しています。 現地にいながら、罹災した人達の現状をあまり正確にお伝えできず、すみません。しかし、私はおそらく人生で二度とない経験をして、自分が行っている仕事の意義を再確認しました。 人の良心や善意という意識は、グローバルであり、それを信じて生きたいという勇気と自信、私たちがやっていることはそれゆえに価値があるのだと思います。

***引用終わり***

 今、クライストチャーチでは人々が必死になって、でもキウイらしくユーモアは忘れずに、助け合いながら復興に取り組んでいます。もちろん、被災地以外の人々も、何か自分でできることを、と考えています。

 以下は、オークランドに住むキウイの友人から来たメールの一部です。彼女はこれまで、何人もの日本人をホームステイとして受け入れています。

***引用始まり***

For the first few hours I thought of volunteering to take any students from the language school if they wanted to stay in nz but get out of Christchurch.We have come to love our own students as part of our family,and feel helpless watching what is unfolding there. Now it is my concern for their psychological /emotional needs, and that any surviving students may want to stay close until they have news of their friends – dead or otherwise. Any help we can offer still stands, but perhaps it is too soon. We are praying and not giving up hope that more survivors will be found.I am pleased we have the Japanese team of experts in nz and the wonderful rescue dogs. I am also pleased also they have resumed work on the CTV building – we must all continue praying for everyone, including the rescue workers who risk their lives every minute. The International response has been overwhelming and we are most grateful to all the specialist people.

***引用終わり***

 夫は日本からの留学生や旅行者の手配をする仕事をしています。今は、クライストチャーチからオークランドに移動してきた学生たちの手配でおおわらわです。クライストチャーチのエージェントは、どこもオフィスが崩れ、働いている方々の自宅も崩壊しています。それでも、担当している学生たちの家を必死で回り、安全な地へ送り出しています。夫は「あの人たちが自分の生活を犠牲にして、がんばっているんだから、こっちも助けるのは当たり前だ」と、休日返上で、もちろん手数料などは一切無料で走り回っています。
 娘の通う

校では、この金曜日の食堂の売上げをすべて寄付に回すことを食堂経営者が決めたそうです。学生たちはもちろん協力し、寄付金は2000ドルに達したと娘が教えてくれました。
 日本が救助に参加してくれていることは、NZの人々はみな、心から感謝しています。でも、マスコミの方々には一言いいたい。日本の報道陣がクライストチャーチに押し寄せて、逮捕騒ぎにまでなっているようです→http://gigazine.net/news/20110224_christchurch_quake_japanese_journalist_arrested/。また、ついさっき、最新の日本の報道を見ておこうとYouTubeで見たテレビニュースでは、現地入りしたご家族のバスをずっと追跡していました。哀しみに打ちひしがれている人々を追い回して、どうなるというのだろう。昨日も、知り合いを通じて、日本のテレビ局から夫に、「被害にあった人を紹介してほしい」という依頼がありましたが、「必死になっている人々を興味本位で紹介できない」と、断ったそうです。もちろんご自分の仕事の使命感に燃えておられると思います。でも、「大変さ」「被害の甚大さ」だけをアピールするのではなくて、どうか、ニュージーランドの人々の取り組みを前向きに紹介していただけたら、そして、ニュージーランドの人々の気持ちをふみじにるようなことはしないでほしい、と切に願います。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

END