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Commonwealth Games

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 今、NZで話題になっていて、日本ではおそらく、いや間違いなく、まったく無視されているイベント、それは、Commonwealth Gamesです。いったい何かというと、「イギリス連邦に属する国や地域が参加して4年ごとに開催される総合競技大会」(Wikipediaより)。ようするに、イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4チーム)とその元植民地が集まるスポーツ大会です。今年は10月3日〜14日に、インド・デリーで開催されています。公式サイトはこちら→http://www.cwgdelhi2010.org/
 初めてCommonwealth Gamesを知ったのは、NZに移住した翌年、2002年のことでした。それまでは、こういう競技大会があることすら知りませんでした。
 もちろん規模はオリンピックほどではありませんが、レベルも、発展途上国が多いため、オリンピックよりかなり低いようです。ただ、オリンピック競技に加えて、イギリス文化圏独特のローンボウルズ、7人制ラグビー、ネットボールなどもあって、NZがメダルをいくつ取れるか、非常に盛り上がります。
 とはいえ、今年、話題になっているのはスポーツそのものではありません。開催前に、大会への参加を控えた方がいいのではないか、という意見が持ち上がったからです。
 その理由は、まず、選手村が予定どおりに完成せず、しかも非常に劣悪な環境であること。インド側の代表が「インドと西側諸国では、衛生に対する概念が違う」と開き直っていましたが、未完成の部屋の中に人糞が山積みになっている(なぜだ!?)など、選手たちの健康が案じられました。また、競技施設も、開催までの完成があやぶまれ、開催直前に建設中の競技場の階段がくずれ、何十人もの現場労働者が負傷する、という事件まで起きていました。
 さらに、テロの懸念や天狗熱の流行など、悪条件が重なり、開催ギリギリまでNZの参加をどうするか、もめていたのです。
 これでもしNZやほかの先進諸国が参加を取りやめていたら、インドのメンツが丸つぶれでしたが、結果的には、個人的に参加を辞退した選手は何人かいますが、どの国も参加を決定。オリンピックの中国と同じように、国としての威信とさらなる発展を目指したインドの取り組みだっただけに、やれやれ、といったところです。
 今のところ、表だった問題もなく、競技は順調に行われています。ただ、「よかった、よかった」で済まされない問題が残っています。この大会の競技場や道路の建設のために、カーストの最下層が住む地域から有無を言わさず立ち退かされ、彼らは住む所もなく、しかも物乞いも法律によって禁じられ、生きていく道を完全に閉ざされてしまっているのです。また、この大会のために巨額の税金が使用されたわけですが、インドに住む多くの人々にとって、この大会は見ることができない無関係なイベントに過ぎません。果たして今のインドにとって、Commonwealth Gamesを開催することが正しい施策であったのか、疑問が残ります。

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みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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