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Postgraduate Diploma in Translation Studiesを修了して

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 大学での成績が「Confirmed」となり、これで1年間の大学生活は正式に修了。あとは来年5月の卒業式だけです(日本と違って、卒業式は半年遅れ)。今のところ、この卒業式には出席するつもりです。なにしろ、私の人生において最初で最後のNZでの卒業式でしょうから。
 ここで、オークランド大学で私が取ったPostgraduate Diploma in Translation Studiesについてまとめて振り返ってみたいと思います。ひと言でいうと、「不満足」。
 NZの大学は、前期・後期それぞれ12週間ずつ。私が取ったコースでは、各期に4ペーパーずつ取ります。1ペーパーは1週間に2時間(ぶっ続けですが、間に休憩を取る先生もいました)の授業があります。
 私が取ったのは、選択言語に関係なく、全員が取る必修科目として、Translation Theoriesが前後期それぞれ1ペーパー。さらに言語ごとに分かれて、実践的な翻訳の練習をしていくTranslation Practiceが各1ペーパー。
 残りの選択ペーパーは、前期・後期それぞれ、翻訳ツール関係が各1ペーパー、英語が第二言語の学生向けのWritingやSpeakingの授業が各1ペーパーでした。
 Assignmentの提出が重なる時はもちろん必死でしたが、実は終わってみると、「思っていたほどには大変ではなかった」というのが正直なところです。だからこそ、後期には追加して、学部生向けのESOLのペーパーで、Advanced Academic Spoken Englishを取りました。これは、プレゼンテーションやディスカッションの仕方を学べて、これまでSpoken Englishについてきちんと学んだことがなかった私にとって、非常に有益でした。
 ちなみに成績は、全科目平均で「A」(最高がA+、最低がA−だった)。でもこれは、私が優秀、というわけではなく、このコース自体のレベルがそんなに高くないから、だと思います。
 私が特に不満だったのは、授業の選択肢が少なすぎること。前期は訳がわからず、指導教員に言われるがままペーパーを選びましたが、TRADOSは自分で日本の通信コースを受けて、ひととおりはマスターしていたので、後期はTranslation Toolではなく、「Essay」というペーパーで英語力、リサーチ力を向上させたい、と考えました。ところが、学部教授のFrankに、「EssayはMaster専攻しかだめ」と言われてしまいました(Postgraduate Diplomaは、Dissertationを書かなくてもいい、という違いがある)。それでも、「TRADOSは知っているので、この授業は避けたい」と粘ったのですが、答えは「NO」。しぶしぶ受けた授業は案の定、知っていることばかりで退屈でした。貴重な時間を使い、高いお金を払って、知っていることしかない、というのは非常に残念です。お陰でAssignmentは満点でしたが、こんなのうれしくない!
 さらに、せんえつながら、先生のレベルが低い。Frankは前期の前半、6週間しか授業をもたず、あとは博士課程の学生が授業を担当します。もちろん、博士課程を目指すほどですから、各人の能力は高いのでしょうが、はっきりいって、Teachingレベルも知識レベルも今一つ。後期最後の6週間のTranslation Theoriesを担当したのは、なんと、翻訳経験がまったくない、Applied Linguisticsのチューター。このため、テキストの要約をするだけで、Theoristとしての独自の視点はまったくありませんでした。
 だんだん分かってきたのは、Frankの関心はあくまでも、Academicな面で自分(またはTranslationコース)に貢献できる学生を見つけることにある、ということ。私のような実務翻訳者のレベルアップのための授業というものには興味がないのです(いや、こんなこと面と向かって言うはずはありませんが、態度や学生への対応を見ると、そう感じられたのです)。
 また、Translation Practiceは、翻訳未経験者に翻訳の基礎を教える授業なので、私のような経験者はA+を取ってしかるべき基本的な内容。日本語の場合、キウイと日本人のペアで英語・日本語両面から実践的な内容を提供してもらえて、私としては満足しています。前後期ともA+をもらって、今までやってきたことでとりあえず良かったんだ、という自信にはつながりました(でも取れて当たり前)。
 ただ、韓国語の担当は翻訳未経験(!)の政治学の韓国人教授で、韓国人のクラスメイトは「採点基準が不明瞭で公平でない」とかんかんでしたし、ドイツ語のクラスメイトは、「実践的な翻訳を全然やらせてもらえない」と不満を言っていました。特に言語共通の授業内容に関するガイドラインがないため、やっていることがばらばらなのです。
 中国人のクラスメイトは、来年からの学生のための改善につながればと、このコースの問題点について、2500語のクレームレターを学部長に送ったそうですが、特に具体的な改善の回答を得られなかったとのことでした。
 ということで、日本から翻訳のために留学を検討している人には、オークランド大学はお勧めできません。NZで唯一、大学が提供する翻訳コースということで、NZ全国から、さらには様々な国籍の優秀な人が集まっていましたが、残念ながら、まだまだ、改良の余地がある発展途上コースです。

それでもあえて、こういう人にお勧め。
1.¥t私にように、NZで証明書や戸籍の翻訳ができる資格が欲しい、という人。
(Translation PracticeでB+以上、合計平均でB以上であれば、翻訳者協会(NZSTI)に正式会員として登録ができ、これによって移民局への提出書類の翻訳ができるようになる。)
2.¥tとにかく、NZで大学生活を味わってみたい、という人。
(いろいろな国籍の人といろいろな出会いがあって、私にとっては非常に貴重な体験でした。ただ、留学、となると、コストパフォーマンスの点で疑問。永住権があると、NZ国籍保持者と同じ学費なので6200ドルほどでしたが、留学生は3倍だ、と聞きました。ちなみに現在のレートは、1ドル=65円程度)
3.¥tとにかく、英語を向上させたい、という人。
(第二言語であっても、流暢に英語を使いこなす人ばかりなので、非常に刺激になりました。退屈な授業でも、英語のListeningの勉強だ、と思ってちゃんと聞くようにしていました!) 

 ということで、コース自体に対しては非常にネガティブですが、でも、受けたこと自体についてはとても満足しています。なにより、ニュージーランドの大学というものを体験できたこと。日本の大学生活(それも20年近く前)とは違うことばかりで、新鮮で、楽しかったです。
 最後になりましたが、こうやって無事にコースを修了することができたのは、ひとえに夫と娘のお陰です。バスのストでは夫に仕事を抜け出して学校に迎えに行ってもらい、スクールホリデイ中には夫のオフィスで娘に本を読んで待っていてもらうなど、2人にはいろいろと迷惑をかけてしまいました。

心から感謝です。
 この文章が公開されるころには、私は機上の人となり、5週間の日本帰省となります。8年ぶりに日本で迎えるお正月です!

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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