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大学生気分

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 先週の木曜日に、オークランド大学に講義を聞きに行ってきました。
 知り合いの翻訳者が翻訳の授業を持っており、この日は特別講義として、NZ人の特許翻訳(日英)者が話をするからと誘ってくれたのです。
 なんでも今年は大学側の手違いで、この講座は新規募集をしないことになってしまっていて、学生が去年からの継続の3人のみだそうで、要はにぎやかし、ということです。「部外者がいいの?」と聞いたところ、「ぼくの授業だから、問題なし」とのことで、お言葉に甘えて参加することにしました。
 講義の内容は非常に具体的に、どのツールを使って、どんなふうに特許翻訳(日英)をしていくかというものでした。私は特許翻訳はまったくの門外漢だし、これからもすることはないと思いますが、ほかの翻訳者の作業ぶりを知ることができて、大変興味深かったです。
 なかでも、非常に「へえー」と思ったのは、講演をしてくれた特許翻訳者が自ら、「私は日本語が読めない」ときっぱりと言ったことです。読めなくてもまったく問題がなく、日本語をコピーペーストして、PCの辞書で意味を調べていくそうです。その説明を聞いていると、まるで日本語というパズルを解いていくかのようでした。
 確かに私も、単語の意味はもっぱらPCに入っている辞書で調べますが、「翻訳者たるもの、調べた単語は読めなければ」という義務感にかられていました。そっか、こんな割り切り方もあるのね、となんだか目からうろこでした。
 また、人口でいうと中国が圧倒的に多いが、中国では英語ができる人も多いので、特許翻訳は日本語が「おいしい」とのことでした。
 さらに、さらに、興味深かったのは、今どきの大学生の様子です。通路をはさんで前方に、とってもきれいなお姉さんがいました。この講義はほかの言語をターゲットにしている人もいたので、日本人かどうかは分かりませんが、アジア系のすらっとした黒髪美人でした。
 講義はコンピューターが一人一台あるコンピューター室で行われ、そのお姉さんはずっとキーボードをカタカタと言わせていました。私はてっきり、講義の内容を入力しているのかと思って、何気なく、彼女の画面を見たら、なんと、ホットメールをやりとりしているのです。
 とっても姿勢よく、きっちりと座っていたので、前から見たらさぞかし真面目に講義を聞いているように見えたことでしょう。そのあとも彼女は、1時間30分ほどの講義の間、SNS(顔写真がいっぱいの画面だったので)とホットメールを行ったり来たり、していました。
 私が大学生だった20年前には存在しなかった講義の過ごし方(さぼり方)がとっても新鮮でした。ということで、ほんの一瞬だけ、大学生気分を味わってきました。
 ちなみにオークランド大学の翻訳コースにはThe Postgraduate Diploma in Translation Studiesという、学位取得者を対象にした1年コース(パートタイムも可能)があります。このコースである程度の成績を取得すると、NZで翻訳者として公式文書(戸籍謄本、職歴証明書、卒業証明書など)を翻訳する資格が得られます。
 もちろん、私のようにフリー翻訳者として働くには資格は不要ですが、翻訳者としてNZで就職するためには、こういった資格を求められることが多いようです。
 また、日本と違って、私立の英語学校(星の数ほどあります)で翻訳コースを開講しているところは、私の知る限りありません。もっぱら、大学か、ポリテクニックという公立の専門学校で学ぶことになります。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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