BLOG&NEWS

アースの皆既日食旅行記(3)

アース

通訳・翻訳者リレーブログ

日食情報だけで2回分を費やしてしまった。旅行記らしいところがぜんぜんないとお怒りの方のために、今回の日程を書いておく。

2017年8月16日
成田→サンノゼ(ジョンとサラに再会)
サンノゼ→ポートランド

2017年8月17~19日
ポートランド観光

2017年8月20日
レンタカーにてオレゴン州レドモンドに移動

2017年8月21日
皆既日食!

2017年8月22日
カリフォルニア州サンノゼに向けて車で約650kmを移動
(実際にはサクラメントまでで降参)

2017年8月23~27日
サンノゼ滞在

2017年8月28日
帰国

日食観測地に近いオレゴン州ポートランドでなく、カリフォルニア州サンノゼから入国したのは、日食後にジョンとサラの家でしばらく過ごし、そこから帰国するため。よって成田←→サンノゼの往復チケットをとった。

翻訳を専業にしている人はみな同じだと思うが、外国語を商売道具にしているくせに、滅多に外国には行かない(行けない)。わたしも、前回、日本を出たのはいつだったかすら、自力では思い出せない状態だった。調べてみたら、ほぼ15年ぶりの海外で、パスポートもとっくに切れていた。

今回は久しぶりに個人旅行の手配を自分で行い、「こんなに簡単だったっけ?」と拍子抜けした。家を一歩も出ることなく、パスポート以外のすべての手配が完了。また今回は携帯端末を持っていくため、最悪でも公衆WiFiでネット通信が可能であり、情報不足への不安があまりない。

15年前というと、アメリカでもまだまだアナログな活動をしていたように思う。この期間は、スマホとタブレット、つまり携帯端末の爆発的な普及期とちょうど重なるからだろう。以前は、未知の土地に行くとなればワクワクと不安のアンビバレンスな感じが楽しかったし、なにより緊張感というものがもう少しあったように思う(単にトシを経てずぶとくなっただけという話もあるが)。

海外に行き慣れている人からすれば、いまごろなに言ってんの、てなもんだろうか。ともあれ、国家間の垣根が低くなるのは喜ばしい。素直に技術の進歩を歓迎しよう。

さて。

もともと旅行の荷物が極端に少ないタイプなので、荷造りはあっと言う間に終わる。ただ、現金をどうするかという問題があった。家にあるのは、前回、使いきれなかった大量の硬貨のみ。

ご大層な意匠のトラベラーズチェックも残っていたが、ほぼ四半世紀前のものということもあり、まるで古代文書のように見える。お店で差し出そうものなら、若いにーちゃんねーちゃんに「なんじゃこれ」とか言われそうなので、持っていくのはやめた。銀行や空港なら、間違いなく通用するのだろうが(だがペンで字を書くことが極端に少なくなっている今日この頃、25年前と同じサインができるかどうか、心もとない)。

結局、アメリカ入国後すぐに友人に会えるという安心感もあり、必要ならサンノゼ空港のATMで出せば良いと結論。しめて7ドルの硬貨のみをカバンに詰めて、出発となった。(もちろん各種カードは持参したので、安心されたい)

国際線の飛行機もほぼ15年ぶりである。

わたしが飛行機の中で何をするか。本を読んだり、寝たりするのは普通の人と同じはずだが、違うのはおそらく、「飽きずに外を眺める」ことだろう。

そう話すと、「雲、きれいですもんね」と言われる。ちがう。

いや、もちろん雲も興味深い。「十種雲形」の中でも最も高いところに発生する「巻雲(けんうん)」の上を飛行機が飛んでいると、無意味に「おおお~~~」と思ったりする、わたしは変なヤツである。特に国際線の場合は飛行高度が非常に高いので、いろいろと楽しい。

※雲は、国際気象機関によって10種類に類別されている。高い方から、巻雲、巻層雲、巻積雲、高層雲、高積雲、積雲、乱層雲、層積雲、層雲、そして低層から上層までぐ~んと伸び上がる積乱雲(入道雲)である。

こほん。わたしが飛行機の中で特に注目するのは、下ではなく上。国際線は上空10,000メートル以上の空気の薄い層を飛ぶため、星や月がくっきりと見えるのだ。

今回も、行きの飛行機では北斗七星が驚くほど近く見えた。ストレッチをかねて機体最後方に行き、窓にかぶりつきで外を見ていると、CAさんが気になったのか、話しかけてくる。

CA氏「何か見えますか?」
わたし「北斗七星がきれいですよ」
CA氏「えっ、そんなの見えるんですか!?」
わたし「見えますよ~。飛行機からは特にきれいに。ほら」
CA氏「わあ~ほんと! 長い間乗ってますけど、ぜんぜん気がつきませんでした。感謝しなきゃいけませんね~」

いや、そんなことで感謝しなくてよろしい。

星もきれいだが、わたしが特に好きなのは、地上から見る青空よりもずっと深みのある「濃紺」の空の色だ。あれを見ると、少し宇宙に近づいた気になって、ゾワゾワする。(実際には高度100kmまで空気があるそうなので、宇宙との境目はもっと上なのだろうが)

飛行機に乗って皆既日食を見るツアーもある。天候はもちろん、大気汚染とも無縁なので、おそらく信じられないほどきれいだろう。ただわたしは、月が太陽を隠す様子だけでなく、それに伴う周囲(大気)の変化を体感するのが何よりも好きなので、おそらく飛行機に乗って日食を見ることはないだろうと思う。

いよいよアメリカ大陸が見えてきた。

Written by

記事を書いた人

アース

金沢在住の翻訳者(数年前にド田舎から脱出)。外国留学・在留経験ナシ。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。

END