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国際デザイン首都

トナカイ

通訳・翻訳者リレーブログ

今週は、仕事の関係でヘルシンキ市観光局主催のレクチャーを聞きました。ヘルシンキを中心とした首都圏エリアの今後数年の目玉の一つに、2012年に控えた「国際デザイン首都」(World Design Capital、http://www.worlddesigncapital.com/)の開催があります。
この国際デザイン首都は、2008年、イタリアのトリノをモデル都市として開催されたのを皮切りに2年おきに選出されており、今年2010年は公式コンペで選出された初の都市、韓国のソウルで開催中。昨年、並みいるライバル都市を抑えてヘルシンキが2012年開催都市に選ばれたことはビッグニュースとなりました。観光都市としてのヘルシンキは、以前から「デザイン」と「建築」に重点が置かれていましたし、実際にも優れた工業デザインを多数生み出してきたフィンランドではありますが、ヘルシンキが名実ともに世界のデザイン首都になれるということで、本当の栄誉として迎えられています。折りしも、この2012年はヘルシンキの遷都200周年にもあたり、国と地域をあげての大イベントとなることが予想されます。

今回ヘルシンキが開催都市に選ばれた理由は、第一に長い応用美術の伝統を持ち、デザインがアイデンティティの一部とさえいえる信頼性の高いバックグラウンド、第二に成熟したヨーロッパの都市の中で現在もまだ成長と変化の途上にあるダイナミズム、第三に大胆な未来へのビジョン・・・ということです。
これから、「Embedding Design in Life」というテーマでさまざまな企画が練られていくそうですが、IT関係でよく使われる「Embedding(埋め込み)」というちょっと旬なキーワードが使われているのがミソでしょうか。生活にデザインを埋め込む、ということで、上の方から示されるものではない、個人、団体、企業など全方向からあらゆるアクションを求めていくとのことです。また、2012年以降も、真の世界デザイン首都としての実践を継続していくとのこと。
「デザインは、すべてを少しだけハッピーにするもの」「本当によいデザインは、デザインされていることさえ気づかないもの」といった、フィンランドのデザイナーたちの理念とも結びついたテーマのようです。

そんなわけで、2012年のヘルシンキは熱くなること必至。昨年の今ごろ、同じ実行委員の方が、選考に提出する厚さ数センチの企画書を振りかざして「不況でも、私たちは負けません!」と熱くビジョンを語っていたのが思い出されます。夢見る自由というのか、ポジティブなビジョンを持つことは、時代を問わずすべてに開かれた可能性なのだなと改めて思わされます。

年末年始に日本に帰国した際、この国際デザイン首都のことを知っている方はどなたもおられなかったのですが、日本の某都市が次回開催に名乗りを挙げている?という話もこの日聞かれました。そちらの動向も楽しみ??

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記事を書いた人

トナカイ

フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。

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