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緑のかぼちゃ

仙人

通訳・翻訳者リレーブログ

ハロウィーンも結構日本に定着してきたのか、最近はオレンジ色のパンプキンたちがディスプレイ用に売られているのをよく見ます。地域的なものかもしれませんが、日本でも昔かぼちゃ(というか、うちでは「南瓜」と呼ばれていたもの)にはもう少しいろんな色があった気がするのですが、今、日本でかぼちゃとして売られているのは緑の表面にだいだい色の中身のアレですよね。ところが、アレを見るとアメリカ人はほぼ100%、squashであると言い、さらに彼らがpumpkinとsquashの違いを単に外側の色で認識しているような気もして(pumpkinの正確な定義はさておき)、アレが「かぼちゃ」=pumpkinであると言ってしまうことに少しばかりひっかかるものを感じたりします。英語で説明するときは、料理に出てくるのはpumpkin、生で緑の皮の見えるのはsquashと、私は便宜的に使い分けることにしています。いや、単にめんどくさくないから。
植物や動物の名前は文化と密接にかかわるので、日本語で細かく定義してある語が英語では漠然としていてちゃんとした訳にならなかったり、またその逆に日本語にすると同じ語しかなくて、訳に困ったりすることがあります。いちばん違いを感じるのはお魚の名前かな、やはり。最近はお寿司がglobalなrecognitionを得てきたので、ましになってはいるものの、基本的にアメリカ内陸部出身の人は、魚の種類はtunaとsalmonとmackerelとpikeしかないと思っているのではと思いたくなることはまだ多くあります。ハマチはyellowtailでしょ、どうして名前が変わるの、という質問には理解を示す私も、鰹と鮪の違いがどうしても理解できない、そんなのどーでもいーじゃん、という人と食事をしていて、目の前に最高の鰹のお刺身が出たときは悲しいです。
けれど、文芸翻訳のときに「セイヨウ○○」「アメリカ○○」みたいに正式な植物名称を表記するのは、避けています。植物学が鍵になるような内容ならともかく、cedarはわざわざヒマラヤスギと言わなくても杉でいいんじゃないかと思うし、cypressとあればイトスギとしないで、桧とかあすなろとかにしたほうが、フィクション世界の雰囲気をよく伝えられるような気がすることが多いので。

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記事を書いた人

仙人

大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」

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