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多様化するSUSHI。でもこれは…。

昼顔

通訳・翻訳者リレーブログ

日本の料理で外国人から最も好かれているものといえば、鮨(寿司)が筆頭格の1つであることは誰もが認めるところです。

ここニューヨークでも看板にSUSHIを掲げている店やデリは本当に多い。外食事情はさほど詳しくないですが、どうやら日本人の鮨職人を抱えての本格派よりも、韓国人や中国人などのアジア系経営者が他国の料理と共にSUSHIを提供して、アメリカ人から幅広く受け入れらている様子です。

ただ、江戸前の鮨が何よりも好きな私からすると、こちらの人たちの目を楽しませ、舌を満足させるためとはいえ、SUSHIのすっかり変わり果てた姿を見るのは、うーん、なんともいえない哀しい気持になってしまいます。

そうは言いつつ、意外な組み合わせが成功し有名になったケースもあります。例えば、カリフォルニア・ロール。最初はさすがに驚きでした。「酢飯を外に巻いちゃうんだ〜っ」と思いつつ、実際に食べてみると、アボガドの熟成具合とトロが口の中で相まって「うん、鮨じゃないけど、悪くない」と思った次第でした。

こちらの友人によると、同じノリで「フィラデルフィア・ロール」なるものも存在します。これはサーモンとクリーム・チーズを一緒にした巻きモノとのこと。案外イケルと太鼓判を押されましたが、まだ勇気が出なくて…。

し、しかし「これはないだろう??」と怒りを爆発させてしまったSUSHIが先日TVで紹介されていました。それは少し前のアカデミー賞式典前の特別番組。色々な趣向が凝らされたこの番組で、受賞後パーティでスターが愛するメニューを実際に作ってみよう!というコーナーがありました。

進行役が笑顔で「あなたでも簡単に作れるオシャレで美味しいパーティ用SUSHI!!Anne Hathaway (今年の主演女優賞候補者の一人)が大好きなメニューです」と自慢げには紹介しています。

「あんた、シャリ握らせてもらうまでに何年かかると思っているのよ」と不審に思いつつ、そのレシピに期待せずにはいられない矛盾する心。

そのときの様子ですが、怒りを抑えてざっと再現します。
「ご飯は固めに炊いてくださいね。少し砂糖を溶かした米酢をご飯と混ぜ合わせます。一口大にするためにスプーンでこの酢飯をすくって、両手でボールを作るみたいにコネコネしてください。うーん、この段階で香りが既に美味しそうですね。ここからがミソですよ。ハチミツを上からたらーんと垂らします。量はお好みですから、甘いものが好きな人はたっぷりとどうぞ♪最後に視覚的にもバランスを持たせるために、バナナ、キウィ、苺のスライスをネタに見立てて酢飯にのせたら出来上がりです。どうです!とても簡単でしょ。お宅の食卓にもどうぞ!」

コネコネの辺りから眉間に皺が寄ってきて、ハチミツの登場で「うきゃー」と叫んでしましました。そして最後にはあまりの興奮のため瞳孔が開き、呼吸は浅くなる始末。唖然という表現はこういうときのためにあるのねと実感しました。

何度考え直してもこのメニューが私の口に入ることはないと言い切れます。ただ自分の寛容度の低さを認めたくないものだから、日本人の知り合いや友人に会う度にこの話題をし、その都度、性懲りもなく怒り、SUSHIの多様化の行末を憂う私でした。

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記事を書いた人

昼顔

外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。

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